OKStars インタビュー

Vol.141 女優兼プロデューサー

杉野希妃

OKStars Vol.141は、先日の第24回東京国際映画祭・アジアの風部門「女優=プロデューサー杉野希妃〜アジア・インディーズのミューズ」特集上映もされた女優兼プロデューサーの杉野希妃さんが登場!2011年11月5日公開の『マジック&ロス』のことを中心としたインタビューをお届けします!

『マジック&ロス』という作品はどんな風に生まれたのでしょうか。

監督のリム・カーワイとは2008年の釜山国際映画祭で知り合っていて、たまに連絡する仲だったんです。それでカーワイの『それから』という作品を観させてもらって、センスのある作品と感じていました。彼は自分でもDrifter(漂流者)と呼んでいるくらいですが、いろんな国に住んだ経験が作品にも反映されていて、彼と何かやったら面白いだろうなと感じていました。その後、たまたまジャック・ロジエという監督の特集をユーロ・スペースに一緒に観に行って、その帰り道に「『ヴァカンス』映画を作っちゃおうよ!あれのアジア版を作ろうよ!」みたいな(笑)ノリになって企画が立ち上がりました。

>その時には『マジック&ロス』の完成形みたいなものは見えていたのでしょうか。

その時はジャック・ロジエみたいな感じで、女の子2、3人に男が1人出てくるような話だったら面白いのではないかなって私が勝手に思っていたんですけど、監督もそういう感じのアジア版でいろんな国の子を出すといいんじゃないかという話になって、進めていきました。

共演のヤン・イクチュン、キム・コッピについて、どんな風に撮影の臨まれたのでしょうか。

ヤン・イクチュンとは私の2005年のデビュー作『まぶしい一日』で共演して以来の友人でした。キム・コッピとは会う前からお互いの存在を知っている間柄で、2009年の釜山国際映画祭で初めて会ったのですが、その後、香港の映画祭でも再会して、それでだんだんと友達になりました。『マジック&ロス』の企画が立ち上がった時に、私の相手役を誰にしようかと考えて一番に思い浮かんだのがコッピの顔で、オファーしたら快く承諾してくれました。その後に男役はどうするかという話になって、女の子2人の距離感がだんだんと近づいていくような話だったので、この2人を乱していくというか、関係を崩す役となると、実生活でも2人の仲をつないだイクチュンが一番適役なんじゃないかなと思いました。彼は『息もできない』がヒットして売れっ子になっていたのでオファーに応じてくれるかなと思いながら「香港にバカンスに来ない?」というノリで連絡したら「行く行く!」って返事してもらえて。それでキャスティングが決まりました。

リム・カーワイ監督についてはいかがだったでしょうか。

カーワイとは…かなり喧嘩しました(笑)。『歓待』という作品の深田晃司監督と私はお互いに尊重し合って全く喧嘩しなかったんですけど、なぜかカーワイとは感情的になってしまうことが多くて、現場でも編集の時もよく喧嘩しました。喧嘩といっても親しくないと喧嘩もできないですし、そうすることでもっと仲良くなった感じで、不思議な絆が今でもあるなと思っています。

ムイウォという地名は耳慣れないですが、どんなところなのでしょうか。

ムイウォは香港のランタオ島というところにあるリゾート地で、かなり不思議な場所です。海外のアーティストが沢山住んでいて、観光客も西洋人が多かったです。バカンスの地である一方で自殺の名所とも言われてまして。私もムイウォに初めて足を踏み入れた時「重い」と感じて…。変な空気が背中に乗ってくる、それが気圧なのか人の魂なのかは分かりませんが、そのくらい異様な空気感でした。それに、外に出た瞬間に汗が吹き出るくらいすごく暑かったのに、撮影した画面は寒々しく見えると言うか、本当に暑かったのかなって疑わしくなる、妙な空気感が出ていると思います。それと、東京で遭ったらびっくりするようなことがムイウォでは場の空気の影響か、すんなり受け入れられている自分にもびっくりしました。

『マジック&ロス』一度観ただけでは全てを理解できない難しさがあると思いますが、鑑賞のポイントなどをぜひお願いします。

観た方にいろんな捉え方をしていただけると思います。こちらとしては、1人の人間から派生して陰と陽が生まれたというようなイメージで、見方によってはここは自虐的になっているなとか、自己嫌悪の表れかなとか、想像を膨らませる事ができますし、見れば見るほどいろんな捉え方ができる作り方になっています。

多国籍な作品になりましたが、苦労した点などを。

苦労ばかりでした(笑)。7ヶ国のスタッフということで、現場では中国人、香港人、マレーシア人、韓国人、日本人、フランス人と、全員の共通する言語がないので、細かいことを伝える時は人から人への伝達でやってました。イクチュンは英語ができないから監督が私に伝えて、私が韓国語で伝えるとか、私が伝えたい事を監督が広東語で香港人に伝えるとか、フランス人のライターと監督は英語と中国語ごちゃ混ぜみたいな、カオスな現場でした。スケジュールも元々詰まっていて、しかも最初の5日間くらいはずっと雨で撮る予定のものが撮れなくなったり、そんなこともあって実際には大変さを感じる暇もなかったです。

>逆にその中で良かったことは?

そういう苦労があるからこそ、言語を超えるエネルギーのようなものをみんなで共有できた気がします。合作映画を作る時って、言葉や生活習慣や文化を理解したり、共有し合えずにストレスを抱えることもあります。でも、ストレスを抱えるのではなく、理解できないことを大前提にして、それ以上のエネルギーを生み出すことが重要なのではないかと学べました。作品に育てられた気がします。

女優とプロデューサーを兼任されて、国際的な作品を生み出していますが、そのような活動を行う原動力についてお聞かせください。

自分から苦労を買って出ているところもありますけど、私自身、自分が日本人なのか韓国人なのかというアイデンティティだったり、どこに住めばいいのかということも含めて悩んでいた時期もありました。でも、韓国に留学していた時に吹っ切れて、自分がその時に必要とされていたり、自分が居たいと思える場所にいればいい、と思えるようになったんです。私は日本人であり、韓国人であり、アジア人であり、世界の1人なんだと思うようになり、ボーダーレスに国を超えるような活動をしていきたいという思いに変わりました。日本とか韓国とかひとつの国だけに向けて作品を作るより、いろんな国の人に観てもらえるような作品を作った方が幅も広がるし、世界と交流しているという感覚があります。

杉野希妃さんの今後の夢や取り組みたい事など教えてください。

自分が出る作品を自分で監督したいというのが夢で、何年後になるか分かりませんが、シナリオを書いては悶々としています(笑)。それとやはり国と国をつなげるような仕事が理想なので、自分の表現を通して交流したいです。映画はどんなジャンルも好きなので何でも挑戦できたらと思っています。

>監督はやっぱり大変ですか?

でもプロデューサーの方がもっと大変かもしれません(笑)。自分が役者だけやっていた時は監督が一番大変なのかなと思っていましたが、自分がプロデューサーをやってみてなんでここまでしなければいけないの!?ってことまでしているので、インディーズ系プロデューサーのみなさんがご苦労されていることを知り、より敬意を示せるようになりました。

杉野希妃さんの“モットー”をお聞かせください。

父に幼い頃から言われていることでもありますが、誠実である、ということです。基本的なことですけど、役者や映画人である前に人間なので、人に対して誠実に接するということは常に忘れないでいたいです。それと、集中し出すとガーッと行っちゃうので、芯を持ちつつたおやかにいたいなとも思っています。

最後にこのインタビューを読んできるOKWaveユーザーにメッセージをお願いたします。

『マジック&ロス』は何も考えずにバカンス映画として観ても面白いですし、私が思い切ったことをやっているところも見どころです。また、『息もできない』の2人が『息もできない』とは全然違う姿を見せているところも見応えがあります。作品自体が生と死の境目や、存在の曖昧さを描いているので、大きいスクリーンでぜひ、美しい景色と不思議な世界感を体感していただけたらと思います。

杉野希妃さんがいま気になっていることを「質問」してください。この質問にOKWaveユーザーが「回答」します。

私は今後も合作映画を作って出演していきたいのですが、
みなさんが観てみたいのは、どの国との、どんな映画ですか?
それを参考に映画を作る、かもしれません(笑)。

Information

「マジック&ロス」
2011年11月5日(土)池袋シネマ・ロサ、12月3日(土)大阪シネ・ヌーヴォほか、全国順次ロードショー!

香港のリゾート地、ムイウォの東に位置する深い森。その先には、岩肌を流れる白糸が神秘的な美しさをたたえる滝があった。その妖しくむせ返るような樹々と滝音に導かれるようにして、2人の女性が出会う。日本人のキキ(杉野希妃)と韓国人のコッピ(キム・コッピ)、2人の滞在する森の傍らのホテルにはベルボーイ(ヤン・イクチュン)ただひとり。満室の貼り紙はあるが、他に客は見当たらない。世の中から完全に孤立した場所で、キキとコッピは徐々に時間の感覚をなくし、現実と幻想が入り混じる。やがて2人は、共鳴と反発を繰り返しながら互いを求め合うのだが…。

出演:杉野希妃、キム・コッピ、ヤン・イクチュン
監督・編集・構成&プロット:リム・カーワイ
プロデューサー:杉野希妃
配給:和エンタテインメント
製作:「マジック&ロス」製作委員会(S・D・P、シネグリーオ、和エンタテインメント)
(C)2010 「マジック&ロス」製作委員会

映画『マジック&ロス』公式サイト

「デジタル写真集 杉野希妃」
2011年11月4日より配信開始

TSUTAYA.com eBOOKs

Profile

杉野希妃

1984年生まれ、広島県出身。
慶應義塾大学経済学部卒。2006年、韓国映画『まぶしい一日』“宝島”編主演で映画デビューし、キム・キドク監督の『絶対の愛』にも出演。2008年篠原哲雄監督の『クリアネス』で日本映画初主演。2010年、エドモンド・ヨウ監督の短編『避けられる事』(ドバイ国際映画祭、ロッテルダム国際映画祭、上海国際映画祭)、リム・カーワイ監督の『マジック&ロス』、深田晃司監督の『歓待』(東京国際映画祭日本映画ある視点部門作品賞、プチョン国際ファンタスティック映画祭最優秀アジア映画賞受賞)の三作品を主演兼プロデュースした。2011年に撮影したイム・テヒョン監督の『大阪のうさぎたち』が公開待機中。さらに、東京国際映画祭アジアの風部門で「杉野希妃~アジア・インディーズのミューズ」という特集が組まれる。国際派女優兼プロデューサーとしても各国で期待されており、既存の枠にとらわれないボーダーレスな表現者を目指している。

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