OKStars インタビュー

Vol.161 映画監督

本木克英

OKStars Vol.161には映画監督の本木克英さんが登場!大迫力の3D映像と家族の物語として3月10日公開される映画『おかえり、はやぶさ』に関するインタビューをお送りします!

「はやぶさ」のミッションや、帰還で日本中が湧いていた時に、監督はどのように感じていましたか?

2010年当時は一般の方と同じような知識と興味しかありませんでした。日本人も捨てたもんじゃないんだなということと、正直、やっと成功したんだなと(笑)、宇宙関係ではやっと良いニュースが出てきたなと思いました。

映画化ということで監督が携わることになったきっかけは?

プロデューサーからJAXAの許可も得ているという事で2010年末にお話をいただいたのがスタートでしたが、当時は8社が映画化を希望している状況でした。そして、この『おかえり、はやぶさ』を含め3本ある、ということで、最初は躊躇しながらも(苦笑)、資料を調べていくと面白くてどんどんとのめり込んでいきましたので、最後は監督としてしっかり取り組もうと決めました。

「はやぶさ」を題材とした映画が3本ということでも注目を集めていますが、監督が意識されたことは?

映画化の素材としては面白いけれども、実話を元にしていくとストーリーの軸は似通ってしまうし、どういう切り口で、どう新鮮味を出すかには苦労しました。その結果の1つは3D映像です。シナリオでは2ヶ月くらい悩みました(苦笑)。突破口となったのはJAXA広報の阪本成一さんにお話をお伺いした際の「はやぶさを取り上げていただくのは大変嬉しいけれども、その前には歴史的に抹殺されていった研究が多々あります。それに携わった方たちの無念の気持ちを考えると複雑です」と仰っていたことでした。そこで、「はやぶさ」のプロジェクト開始と同時期に運用を停止した「のぞみ」プロジェクトに携わった人たちの人生も描こうとしました。ただ、取材依頼はしたものの全て断られてしまいましたので、資料を当たっていきました。「のぞみ」のテクニカルマネージャーの方のインタビューに「のぞみが火星の軌道から外れた時は我が子を失ったようだった」という言葉があって、探査機を我が子と呼ぶことや、「はやぶさ」に対しても日本国中が擬人化して感動していたので、そういったところにドラマがあるのかなと考えて、シナリオの軸を決めていきました。

親子の物語、家族の物語の側面を打ち出した狙いは?

松竹の映画の伝統にも全てのメッセージは家族を通して描くということがあったので、そこを押さえました。ただ3Dで宇宙空間を描こうとか、「はやぶさ」の奇跡を描くということだけではなく、「のぞみ」の絶望からこの物語ははじまって、絶望から奇跡に至る関わった人間のドラマとしてストーリーを描きました。

宇宙空間の「はやぶさ」航行を3Dで描かれた映像表現のこだわりや制作上のエピソードをお聞かせください。

3Dの映像表現では、星と星の距離を立体的に描こうとすると実際には何光年も離れているものなので、宇宙の奥行きを出すということは難しいんです。そこで対象物として「はやぶさ」の機体を置いて描くことで「はやぶさ」の孤立感、孤独感を出しました。日本人が実際のニュースを見て「はやぶさ」に感情移入したように、映画の中でも「はやぶさ」を人間のように思えるようになればいいなと考えていましたので、その点はうまくいったと思います。そのためには3D技術は効果的でした。

>冨田勲さんのBGMが宇宙空間にマッチしていてすごく良かったです。

そこに気付いてくれると嬉しいです。冨田勲さんのBGMで映画の格調が数段上がったと思います。冨田さんのことは「新日本紀行」の頃から知っていますけど、本来スペイシーな音楽をやられていて、冨田さんが仰られたのは、「はやぶさが大気圏に突入するところは壮絶な叙事詩でいきたい」と。そんなつもりで撮っていなかったので(笑)「この映像でそうなりますか?」と聞いたら「大丈夫」ということでワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」を使った“壮絶な叙事詩”になりました。冨田さんが普通の劇伴とは違う作り方をされたラスト8分間の“冨田ワールド”には感動するんじゃないかと思います。それと冨田さんからは「この仕事は久々にのびのびとできて良かったです」と言ってもらえて嬉しかったです。冨田さん自身、この作品には思い入れが強くて、小惑星イトカワの名前の由来である糸川英夫さん(※日本のロケット開発の第一人者)とも交流があったそうです。糸川さんは宇宙開発から退いた後、60歳になってからバレリーナになって、帝国劇場で公演する時に冨田勲さんに音楽を依頼されたということです。冨田さんは「イトカワとはやぶさ」という曲も作られているので、監督としては一番うまくいったところでもあると思います。

藤原竜也さんや杏さんらキャストに求めたことや、撮影中のエピソードなどお願いします。

JAXAから膨大な「はやぶさ」運用風景の映像をいただいて観たところ、みんな感情の起伏が少なくて、淡々と仕事をされているんです。タッチダウンが成功した時もぱらぱら拍手が起きて的川泰宣先生がピースサインをするくらいで皆落ち着いている雰囲気でした。でも技術者の方々にとってはそれが普通なんだろうなと思いました。それを藤原さんや杏さん達にも、それこそJAXAに人間観察に行ってもらってから、演技について話しました。みんな普通なんだということで、やりすぎなくても困るけど過剰な演技はしないことを求めました。藤原さんは同世代のJAXAのエンジニアの方と話をして「内に秘めた野心は感じました。NASAとは手を組んで進めていくけど、中国や韓国に宇宙開発分野で絶対負けてはならない、という気概を感じました。なので内にそういうもの秘めながら演じます」と言っていました。杏さんも特殊なキャラクター作りをせずに普通の研究者として演じていただきました。
エピソードとしては3Dカメラは非常に重くて、大人3人でないと持ち運びができないのが機動性の面で大変だったのと、豊原功補さんは3D撮影していたことに2週間後になってようやく気付いたことですね(笑)。役者さんは機材には関心をあまり持たずに演じていたので、そこは逆に助かりました。

『おかえり、はやぶさ』を撮り終えて、実際の「はやぶさ」プロジェクトに携わった方々について監督は今どうお思いでしょうか。

当初は、一つのプロジェクトに対して自己犠牲と献身を持って取り組んでいくということは、僕ら映画人と似ているので親近感がありました。ですが、作り終えて思ったのは、とても映画クルーではかなわないレベルのことをされているという敬意でした。10年、20年のサイクルで研究をし、成果を求めるということは、映画の活動ではまずないからです。「20年いても成果が上がらない場合は何もないまま時間が過ぎた虚しさを感じる」とJAXAの方々は話していましたが、そんなことはなく、そういった取り組みがあったから「はやぶさ」の奇跡に何らか繋がっているんだ、ということは映画を通じて伝えたかったところです。

『おかえり、はやぶさ』を通して、監督が得た・発見した気付きなどありましたらお願いいたします。

宇宙は大変面白い、ということですね。取材で、模型で太陽と地球の距離や大きさを見せていただいた時には驚きましたし、太陽系が1,500億個もある銀河系の一つのシミみたいなものにすぎず、宇宙は壮大で、我々は日常の些事に悩んでいますけど、宇宙を考えたらそういうことを忘れられると思います。藤原さんの「人間は星屑にすぎない」、杏さんの「見えない力によって自分たちは生かされている」というセリフがありますけど、96%の物質がまだ解明されていないダークマター、ダークエネルギーと呼ばれているものなんだと思うと謙虚な気持ちになりますよね。

本木監督からの『おかえり、はやぶさ』の見どころをお願いします。

『おかえり、はやぶさ』は宇宙を体感できるように作ったので、まずそこを入口として、登場人物も身近に感じる方を散りばめて出していますので、宇宙を体感しながら身近に感じられる映画だと思います。

>「No.2ではダメなんです」というセリフが出てきましたが…?

『おかえり、はやぶさ』にはたくさんメッセージを込めましたが、僕には科学者や技術者の人柄が魅力的でした。最先端の研究をしながら謙虚で、しかも政治家たちにいろいろ言われながらも、日夜研究しています。科学者、研究者たちが伝えたい事をこの映画を通して、代わりに伝えたかったので、中村梅雀さんにはそのようなセリフを言っていただきました。

>「はやぶさ2」などの、今後のプロジェクトを監督はどう見ていますか?

映画にも少し出てきますけど、太陽光を使った日本オリジナルの技術の「イカロス」が木星に行くプロジェクトがあって、それには期待しています。イオンエンジンと組み合わせてどう応用されるのか、これからも追いかけたいなと思います。

本木監督からOKWaveユーザーにメッセージをお願いします。

映画館でしか味わえない3D映像と音楽の作り方をしているので、ぜひそれを映画館で体感して欲しいです。

本木克英監督から質問!

映画は作ったものの、果たして「はやぶさ2」の予算は増えるんでしょうか?(苦笑)
予算が大幅削減されているということで、「はやぶさ2」は無事飛べるのでしょうか。
ぜひ皆さんの考えを聞かせてください。

Information

『おかえり、はやぶさ』
2012年3月10日全国ロードショー 3D・2D同時公開

太陽より遠い宇宙の彼方にある、小惑星イトカワのサンプルを採取して、地球に帰還する…。
人類初のプロジェクトへの期待と、人々の想いをのせて、2003年5月9日、小惑星探査機<はやぶさ>が打ち上げられた。
失敗に終わった火星探査機<のぞみ>のプロジェクト責任者の父・伊佐夫への複雑な思いをかかえる<はやぶさ>のエンジニア助手・大橋健人は、エンジンからの燃料漏れ、宇宙の闇に消えてしまったと思われた通信断絶、4基のメインエンジンの全停止など様々な<はやぶさ>の困難を乗り越える中で、プロジェクトチームの一員として成長していく。
そして、いつしか<はやぶさ>は、その帰還に懸けた関係者だけでなく、日本中に勇気を与えていくのだった。
迫力の全編3Dで描く、7年・60億キロにおよぶ、機械と人間の冒険の旅。

藤原竜也: 大橋健人
杏: 野村奈緒子
三浦友和: 大橋伊佐夫

監督: 本木克英
脚本: 金子ありさ
音楽: 冨田勲
協力: JAXA 宇宙航空研究開発機構
配給: 松竹
公式サイト: http://hayabusa3d.jp/
(C)2012「おかえり、はやぶさ」製作委員会

Profile

本木克英

1963年、富山県出身。
森﨑東、木下惠介、勅使河原宏などの監督に師事し、『てなもんや商社』(98)で監督デビュー。第18回藤本賞新人賞を受賞。以後、『釣りバカ日誌イレブン』(00)、『釣りバカ日誌12 史上最大の有給休暇』(01)、『釣りバカ日誌13 ハマちゃん危機一髪!』(02)、『ドラッグストア・ガール』(04)、『ゲゲゲの鬼太郎』(07)、『犬と私の10の約束』(08)、『ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌』(08)、『鴨川ホルモー』(09)など話題作を次々と手がける。

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