OKStars インタビュー

Vol.185 アニメ監督

エンリコ・カサロサ

OKStars Vol.185はピクサースタジオのエンリコ・カサロサ監督が登場!2012年7月21日『メリダとおそろしの森』と同時公開される初監督作『月と少年』についておうかがいしました。

『月と少年』にて監督初挑戦ということですが、制作のキッカケはどんなことだったのでしょうか?

監督の前で「アイディアがあるので聞いてもらえますか?」と手を挙げたのがきっかけでした。
ピクサースタジオでは、ストーリーボードや絵コンテ担当のアーティストが長編製作中の監督に直接アイディアを出しながら作業を進める文化があり、「ちょっといいですか?」と監督に声をかけ、「よし、それでいこう!」となって進めていくことができるんです。

素敵な文化ですね。具体的にはどんな風にアイディアを聞いてもらったのでしょう。

通常、ピクサーの短編はエグゼクティブプロデューサーにアイディアを3つ出さなくてはなりません。僕の場合、1つは未熟なアイディアだったので2つ半持って行きました(笑)。未熟ではない方の2つは水彩画をスキャンしたものを用意。スティーブ・ジョブズではないですが(笑)、パワーポイントでエグゼクティブプロデューサーのジョン・ラセターに説明したところ、この『月と少年』をすぐに気に入ってくれて、「これをやろう!」と言って貰えたんです。この時は、本当にハッピーな日でした。
そして、その数ヶ月後にどのチームでやるのかを決めなければなりませんでした。ピクサーの短編製作は長編が同時進行で動いている繁忙期に行います。色々な人の力を借りなければ短編を作れないため、物凄く忙しい時間の合間になんとかスケジュールを組んで作りました。

『月と少年』は第84回アカデミー賞・短編アニメーション部門にノミネートされました。あらためて感想をお聞かせください。

実はノミネートの発表時間が午前5時のため、家族を起こしたくなかったので、電気も点けない暗いキッチンで一人でコーヒーを飲んでいました。残念ながらアニメーションのカテゴリはTVでアナウンスされないので(笑)、パソコンからインターネットを見て公式WEBサイトの情報を探していました。でも、その情報を自分で確認する前に、友達からのメールやツイートが携帯電話にたくさん届いて知ることになりました。
本当に長らく会っていない友人からも連絡が来たりして、非常に静かで暗いキッチンと、どんどんメッセージが入ってくる携帯電話のコントラストが面白かったですね。
ピクサーの短編では「当然今回もノミネートされるよね?」という雰囲気がいつもあるのですが、実際にノミネートされると感慨深く、ガツンと胸にくるものがありましたね。皆からメッセージを頂いて温かい気持ちになりました。

今回ピクサー25周年記念ということで長編『メリダとおそろしの森』と同時上映されますが、『月と少年』の短編ならではの楽しみ方を一言お願いします。

皆さんには執拗にネタバレをしないように言ってきました。監督としては、事前情報なしに見てもらうことがベストですね。「色々と驚きがある」という感想が、楽しみ方としては一番正しいと思います。少しずつ色々なことが明かされて知るという「発見」と「ファンタスティックさ」を体験してもらいたいからです。

監督は、日本の宮崎駿監督のファンとお聞きしました。宮崎駿監督のどのようなところに惹かれますか?

もうずっとファンであるので説明するのはなかなか難しいのですが、小さい頃、イタリアで「未来少年コナン」をテレビで観ていた頃から大好きですね。
宮崎監督の作るファンタジーとリアリズムが素晴らしいと思います。何か予想もしていなかったファンタジックなものを凄くリアルなものとして信じさせる力を宮崎監督は持っているところも大好きです。作品を通して「メッセージを伝えたい」という強い気持ちも感じます。それは子供たちに向けているのかもしれませんが、何かを伝えようとしているということはとても重要で、僕もインスピレーションを受け、自分もそのような監督になりたいと思わせてくれます。もちろん、エンターテイメント性の強い作品が悪いわけでは全くなく、笑う以上にその人の役に立つようなメッセージをはらんでいたら、より良いのではないか、ということに気づかせてくれたのが宮崎監督の作品です。

アメリカと日本の文化的な背景以外でピクサーの作品とは違うな、というところはありますか?

宮崎監督の、特に、童心に戻った好奇心と世界の見方、驚きや喜びなどの感覚を捉える力が非常にユニークで素晴らしいです。ピクサーの作品とは違うな、というのはそういった部分ですね。ピクサーでは自分たちが経験しているような、よりパーソナルな物語を描くことが多いですが、宮崎監督は本当に子供に戻ったような視点で世界を作り上げるところが素晴らしいと思います。

今回、製作過程にも宮崎監督の影響を受けられているとか?

宮崎監督がユニークなのは映画をある意味、ひとりで作っている点だと思います。ピクサーでも監督主導ではあるけれど、彼ほどの仕事量をあれほどの才能とスピードでこなせる人はいないです。彼は全てをコントロールできる唯一無二の存在です。また、彼がすごいのは全ての絵コンテを自分で描いているということ。ピクサーではチームで担当するんです。実は『月と少年』の場合、短編という事もあり、宮崎監督の真似をして僕が一人で描いたんです。『崖の上のポニョ』の絵コンテを水彩画で描いたというのを知って、僕も全部水彩画でやったり(笑)。みんなには「時間がかかりすぎる」とか「クレイジーだ」とか言われて、実際にものすごく大変でした(笑)。

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Information

『メリダとおそろしの森』
2012年7月21日(金)ロードショー 2D・3D同時公開

スコットランドのある王国の王女メリダは自由を愛するあまり、王家の伝統を重んじ、結婚をめぐって母とけんかになってしまう。
そんなある日、不思議な“鬼火”に導かれて森の魔女に出会ったメリダは、「魔法で自分の運命を変えて欲しい」と魔女に依頼する。だが太古の昔より人間が森の魔法を使うことは禁じられており、メリダの願いは恐ろしい災い…そう、森の魔法によって母は王国で最も恐れられている存在である熊に変えられてしまったのだ!さらに三つ子の弟たちまでも…。しかも2日目の夜明けを迎えると母は姿だけではなく、心まで熊になってしまうというのだ。
王国と愛する家族を救うため森に立ち向かう決意をしたメリダは、森の魔法を解くことができるのか?

監督:マーク・アンドリュース、ブレンダ・チャップマン
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
公式サイト:Disney.jp/merida

同時上映短編: 『ニセものバズがやってきた』、『月と少年』

(C) Disney/Pixar.All Rights Reserves.

Profile

エンリコ・カサロサ

2002年からピクサーのストーリー・アーティストとして活躍し、『カーズ』(06)や『カールじいさんの空飛ぶ家』(09)等に参加。初監督短編『月と少年』が第84回アカデミー賞・短編アニメーション部門にノミネートされた。

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