OKStars インタビュー

Vol.205 脚本家・小説家

和田竜

OKStars Vol.205には、いよいよ11月2日公開の映画『のぼうの城』のオリジナル脚本と小説がベストセラーになった和田竜さんへのインタビューをお送りします。

この忍城攻防戦を題材にしたきっかけは何だったでしょう。

繊維業界の新聞社に勤めていた時に、忍城址のある埼玉県行田市から通っている同僚がいて、彼に教えてもらったのが最初ですね。それまでは知らなかったです。 興味を持ったのは石田三成や大谷吉継のような関ヶ原のビッグネームが今の埼玉県のこの地に来ていたことが驚きだったんです。僕にとって石田三成というと中央、滋賀県から京都のイメージが強かったので。それと水攻めというファクターがあったところですね。秀吉の水攻めは有名ですが、ここで三成がやったことに何か意味があるなと思いました。

“のぼう様”という人物像は史実なのでしょうか。どのように描いたのでしょう。

成田家側から描いた「成田記」や秀吉側から書かれたものに出てくる忍城攻め、北条家側から書かれたもの、この三方向の資料を読んで、当時の情勢や人物を考えていきました。のぼう様については、成田長親は「成田記」によると織田信長や上杉謙信のような部下をグイグイ引っ張っていく猛将型ではないんです。軍議でも配下の武将たちが侃々諤々やっている中、彼が調整役を務める感じだったので、いわゆる戦国武将とは違うタイプなんだろうなと。また、これまでの歴史物は、たとえば織田信長を描くと信長しか目立たなくて配下の人が目立たないとか、知識を持っている人以外は見なくていいようなものになっているのではと思っていたんです。僕は敵はもちろん見せますけど、配下の武将たちもちゃんと見せる構成にしたかったんです。それで、史実通り、猛将型ではないキャラクターにすると、その配下の武将たちのこともお客さんが観る気になるんじゃないかと考えました。この配下の武将ですが、正木丹波守は資料から想起できるんですね。正木丹波守は本人も戦うし、武将としても戦が巧いんですね。その一方で戦が終わったら高源寺を建てて、敵の死者も弔うという、一種理想的な男性ですね。そこから人物像をつくりました。一方、柴崎和泉守なんてのは長野口で戦った武将ということしか記述に無いので、他の資料から戦国時代の典型的な人物を元に考えました。
また、僕は忍城にこもった百姓たちが能動的に戦ったという、そんな時代の気分を見せたかったので、彼らがそう思えるような城代はどういう人なのかなとも考えました。そういう物語上の都合と史実とを組み合わせて、のぼう様のキャラクターは生まれてきました。

のぼう様という名前は和田さんのオリジナルなんですよね?

そうです。資料に当っていくうちに「うどの大木」のようなイメージがあって、一方で、歴史物の人物は名前がカタイのであだ名を付けたいとも思っていました。それでうどの大木から考えたものの、ウド鈴木さんもいるし、西郷隆盛が目が大きいところから、うど目サアと呼ばれているということもあって、同じような意味の「でくのぼう」が浮かんだんですね。とはいうものの、でく様というのも語感が悪いと思って、切るところを変なところにしてみたら新たな語感が生まれるだろうと、そこで「のぼう」という名前に思い至りました。

オリジナル脚本「忍ぶの城」で第29回城戸賞を受賞された時はどう感じたのでしょう。その時点で映画化の話はあったのでしょうか。

城戸賞を獲った時はすごく嬉しかったですけど、一方ですごくいいものが書けたという気でもいたので「やっぱり獲れた」という気持ちにもなりました(笑)。獲った時点では映画化の話はなく、しばらく経ってからですね。

では小説になった経緯は?

プロデューサーの久保田修さんに映画化したいというお話をいただいて、それで久保田さんが映画化に向けて動き始めたんです。その時点では賞を獲ったとはいえ脚本だけですし、昨今の映画界の主流である漫画原作でもないわけで、それなら小説を出そう、という久保田さんの考えで僕が書くことになったんです。

小説「のぼうの城」もまた臨場感にあふれていましたが、脚本と小説ということでの違いはありましたか?

書く上での苦労はなかったですね。脚本を書く際に資料を調べていますが、一方で脚本はほぼセリフなんです。アクションシーンや役者さんの動きもあまり書き込まないし、その人物がなぜそんなセリフを言うのかという歴史的な背景にも踏み込むと逆に映画の魅力が半減してしまうので、そういったことは書かなかったんです。でも脚本には書いていないイメージがすでにあるので、自分が元々持っていた映像と歴史的背景と、細かな感情を書き加えていって小説ができあがりました。 僕としては、現代人とまるで違うその時代の気分というものを脚本の中で表したいんです。映画の場合は映像の中から感じてもらえばいいですけど、小説の場合はそれをきちんと言葉にして、歴史的な背景を述べて「だから違うんです」ということを証明できるところが面白いところだと思いますね。

キャスティングについてのご感想などをお聞かせください。

この脚本を書いた時に、この作品は老若男女に見てもらいたいと夢見ていました。それで、いかにも物語らしい史実を再構成して書いていった大作になったので、大作にふさわしいキャスティングが実現して嬉しいです。

完成した映画『のぼうの城』、どのようにご覧になりましたか?

脚本を書く時に、僕はセリフの言い方を自分で口の中で言いながら書いていくんですけど、野村萬斎さんは僕のと全然抑揚が違うんですよ。それがかえって、なるほど感がありました。映画を観る方は多分、田楽踊りのシーンがあるから萬斎さんがキャスティングされたと思うでしょうけど、実はそうではなくて久保田プロデューサーが言うには萬斎さんが持っている雰囲気を重視したそうです。実際、萬斎さんが持っている独特の雰囲気が映画の中で生きているし、そこがありがたかったなと思います。萬斎さんではなかったらもしかしたら凡作になっていたんじゃないかとさえ思いますので。人それぞれ個性がありますけど、本当にこんな人はいないという方ですので、この時代にのぼう様が演じられる年齢でいてくれてよかったと思います(笑)。

>水攻めや合戦などについてはいかがでしたか?

合戦の再現性もすごかったですけど、何といっても城ですね。中世城郭の忍城が再現されているというのが感動的でした。作っている最中の写真も見せてもらいましたけど、土塁を作ったり、数ヶ月かけて芝みたいなのを生やしたり、僕が文字で書いたばっかりにそんなことになっているのかと思うと申し訳ない気にもなりました(笑)。 映画冒頭の正木丹波守が馬で城内を走り回る、ああいう忍城が現実のものとして出てきて人間が走っている再現感にも感動しました。

脚本から映画ならではの変更点などはありましたか?

いろいろありますが、印象的なのは、元々の脚本では長親の田楽踊りは昼なんです。これを犬童監督が夜にしてはどうかと仰ったんですよね。それって盲点だったなというか、何で思いつかなかったんだろうって愕然としました。そこは映画ならではの変更点ですね。

和田竜さんから映画『のぼうの城』見どころをお聞かせください。

老若男女楽しめるシンプルなエンターテインメントとして書いているので、そこをただ楽しんでもらいたいです。そこがこの脚本を書いた狙いなので、面白かったら手を叩いて喝采してもらいたいです。より深く楽しむためにはこの人物たちが400年前に本当にいた人物なんだということを念頭に観ると、歴史の荘重さも分かると思います。

和田竜さんからOKWaveユーザーに質問!

僕はこの作品では山口智充さん演じる柴崎和泉守という、
実在の人物ですけどほぼ僕が作ったような人物が一番好きで、
僕の作品には必ずこういう豪傑タイプの人物が出てきます。
質問ですが、みなさんは佐藤浩市さん演じた正木丹波守、成宮寛貴さん演じた酒巻靱負、
そしてこのぐっさん演じる柴崎和泉守の中では誰が好きですか?

Information

『のぼうの城』
2012年11月2日(金)全国超拡大ロードショー

本能寺の変から8年、1590年。戦国末期。天下統一を目前に控えた豊臣秀吉は、関東の雄・北条家に大軍を投じた。そのなかで最後まで落ちなかった支城があった。武州・忍城(おし・じょう)。周囲を湖で囲まれた「浮き城」の異名をもつ難攻不落の城である。城代は成田長親。領民からでくのぼうを揶揄した「のぼう様」と呼ばれても意に介さず、将に求められる智も仁も勇もない、文字通りでくのぼうのような男。しかし外見からは窺い知れない誇りを持ち、底知れないスケールの大きさで人心を掌握していた。
2万の軍勢を従えた石田三成は忍城を包囲する。物量にモノを言わせ問答無用の戦略をとる三成軍2万もの大軍を前に、領民も一体となった<忍城>の猛者たちは一歩もひかず迎え撃とうとしていた。その数わずか500騎!この絶体絶命の状況下、一丸となって立ち向かうのぼう軍に対し、石田三成は、秀吉が得意とする“水攻め”という驚天動地の戦術を発令! その勝敗が誰の目にも明らかに見えたとき…戦は、意外な進展を見せていく。

野村萬斎 榮倉奈々 成宮寛貴 山口智充・上地雄輔 山田孝之 平岳大
西村雅彦 平泉成 夏八木勲 中原丈雄 鈴木保奈美・前田吟 中尾明慶
尾野真千子 芦田愛菜/市村正親/佐藤浩市
監督:犬童一心 樋口真嗣
脚本:和田竜(小学館「のぼうの城」)
配給:東宝、アスミック・エース
公式サイト:http://nobou-movie.jp/
Facebook:http://www.facebook.com/nobousama
Twitter:https://twitter.com/nobou_movie

(C)2011『のぼうの城』フィルムパートナーズ

Profile

和田竜

1969年生まれ、大阪府出身。
2003年に映画脚本「忍ぶの城」で第29回城戸賞を受賞。07年、その脚本を小説化した「のぼうの城」(小学館刊)で作家デビュー。同作はベストセラーとなり、第139回直木賞にノミネート、09年本屋大賞2位を受賞。第2作「忍びの国」(新潮社刊)で第30回吉川英治文学新人賞候補、第3作「小太郎の左腕」(小学館刊)で第23回山本周五郎賞候補、現在は週刊新潮で「村上海賊の娘」を連載中。

のぼうの城 特別試写会に50組100名様ご招待!
OK LABEL

回答投稿にあたっての注意とお願い

OKStarsからの質問は、OKWave事務局(ID:10q-OK)が質問投稿とベストアンサー選定を代行しています。
当企画は、OKWaveの他のカテゴリーと異なる主旨での運営となっています。原則的に回答への個別のお礼はつきません。あらかじめご了承ください。
ご回答の際には利用規約禁止事項ガイドラインに沿った投稿をお願いいたします。