OKStars インタビュー

Vol.225 アニメ監督

長峯達也

OKStars Vol.225は、『ONE PIECE』映画最新作『ONE PIECE FILM Z(ワンピース フィルム ゼット)』の監督、長峯達也さんのインタビューをお送りします!

まず『ONE PIECE FILM Z』(以後、『FILM Z』)に関わることになった経緯を教えてください。

2011年の8月くらいに柴田宏明プロデューサーから「やらないか」と声がかかったのが最初です。僕はこれまで『ONE PIECE』のアニメ作品に関わったことはないのですが、柴田プロデューサー(以後、柴P)とは別の作品で何度か組んでいたので「柴Pだったら、一緒にやらせてください」と二つ返事で了解しました。アニメーションは機械的に作るものではないので、信頼できる人とじゃないとなかなか「うん」とは言いづらい。特に『ONE PIECE』という大きな作品を扱うには、信頼関係のある人としっかり体制を組まないとちゃんとしたものは作れない。だから柴Pから声がかかったのは本当にラッキーでした。とにかくみんなが仕事をしやすいように「やりがい」を準備するのが監督の最大の仕事だと思っているので、『FILM Z』に関わる全員が「やりがい」を持って作品に取り組める現場作りからスタートしました。

『FILM Z』を担当されることになって、まず取りかかったことはなんですか?

『ONE PIECE』の漫画は以前から好きで読んでいたのですが、映画の依頼がきてから改めて読み直して、細部に宿る設定を解析していきました。表面的に設定が書かれてなくても、尾田栄一郎先生が描いているパーツのひとつひとつには全部理由がある。演出するためには、まずそこを掘り下げる必要があったので、何度も読み込んで研究を重ねました。また、僕がよく仕事をしているTVアニメ『プリキュア』のスタッフルームの隣が、TVアニメ『ONE PIECE』のスタッフルームなので、そこでスタッフに話を聞いたりもしました。さらに前作の映画『ONE PIECE FILM STRONG WORLD』を手がけた境宗久監督(TVアニメ『ONE PIECE』では2005年10月~2008年9月までシリーズディレクターを担当)には、これまで『ONE PIECE』でどんなことをやってきたのかを教えてもらいました。僕が『FILM Z』に参加したのは、鈴木おさむさんのシナリオ第1稿が上がっている段階で、漫画では魚人島編を連載しているころでした。まだ新世界編に突入して間もなかったので、新世界がどんなものなのかつかめない。尾田先生も多忙な時期だったので、鈴木さんの第1稿を読みながら、みんなで足したい要素を提案しながら調整していったのを覚えています。どうすれば新世界が表現できるのか、尾田先生の監修を反映しながら、はじめは手探りで組み立てていきました。

脚本を担当されている鈴木おさむさんの印象を教えてください。

放送作家として日本で一番人気のある人だけあって「きらびやかな世界の人だなぁ」と思ったのが最初の印象です。実際やり取りをはじめたら、人当たりがすごくよくて人間力の高さに圧倒されました。原作者側の想いをきちんと汲んでくれる。しかもアニメの事情も考慮しながらまとめてくれるので、進行もスムーズでしたね。あまりにもきちんとされている方だったので、僕自身は「やべー、すげえ負けている」と若干コンプレックスを抱きました(笑)。

原作者・尾田栄一郎先生の印象を教えてください。

僕たちは深夜などの時間帯に、尾田先生のご自宅に打ち合わせに行っていたのですが、漫画を描き終わってヘトヘトの状態でもファンのためにガッツリ関わる姿勢を見て、すごい人だなと思いました。自分のやりたいことを表現して実行する力がある。それを編集者やアシスタントという仲間が支える。そんなところはルフィにそっくりです。たまにいきなり無茶なことを言うのもルフィっぽい(笑)。その無茶なことを実現するのは大変ですが、それをやってみると上手くいかなかった物事が解決したり、新しいパワーが生まれたりする。本当のパワーを出すためには、全員の力のベクトルをあわせる必要があって、それを先生は身をもって知っているのだなと思いました。

今回の映画作りの上でキモとなった部分はどこですか?

専門的な話になりますが、多くのアニメ映画はまず原作があり、原作を元にしたTVアニメがあり、それのスピンオフとしての劇場版があります。この劇場版というのが少々やっかいで、ドラマチックに描くのが意外に大変。原作は、主人公の成長や、主人公をとりまく環境の変化をドラマチックに描けますが、劇場版は原作の流れを変えないように作らなくてはならないからです。そのジレンマを抱えながら尾田先生とお話していていたら、『ONE PIECE』の世界って、ルフィの成長や、ルフィの心境を叙述しなくても、ルフィの活躍をとにかく描けばいいとおっしゃってくれて、一気にもやもやが吹っ切れました。ルフィと麦わらの一味の活躍が生き生きと描写できれば、観ている人たちのそれぞれがドラマを感じてくれる。『ONE PIECE』には、それで成立する部分があるということが分かったので、ルフィの活躍を中心とした物語をしっかり描くことに集中できました。

「ゼット」という敵をどのように描こうと思われたのでしょうか?

主人公側にゲストキャラを用意してドラマを展開させるということが、劇場版を作る際の王道パターン。でもそれをするとルフィを描く物語になりづらいという問題がある。そこで今回はゲストキャラに、ルフィと真正面からぶつかり合ってくれる「ゼット」という敵キャラを設定してみました。大ボスが悪魔の実の能力者じゃないという設定は、わりと珍しいと思います。一般人から見れば悪魔の実の能力者ってきっと憎しみの対象ですよね。その圧倒的な力を持つ能力者に、普通の人がヒーローとして立ち向かったとき、どう対抗して能力者をぶっ飛ばすのか……。それが「ゼット」というキャラが生まれた最初のネタでしたね。構想段階ではゼット側のドラマをもうちょっと描こうと思っていました。でも尾田先生からゼット側のドラマはルフィを引き立てるくらいにしたほうがいいという意見があり、「なるほどな」と思ったので、ゼット側のドラマは抑えて描きました。

今回「青雉」が登場しますが、その理由を教えてください。

「青雉」が登場するシーンは、鈴木さんの書かれた脚本の中に当初からちょっと入っていました。人気のキャラクターなので、みんなに喜んでもらおうと思って鈴木さんが入れていたのだと思います。青雉はキャラが立っているから一見使いやすそうですが、原作では「ロングリングロングランド編」でちょっとしゃべって、あとは戦闘シーンだったので、実際は何を考えているのかよく分からないキャラクターなんです。赤犬と戦ったというのも噂でしか聞いていないですし。よってどう今回の物語に絡ませたらよいものかと悩みました。いると迷惑なんだよな……くらいに(笑)。人物像がわからないキャラクターを、それっぽく描いたとしても、原作のキャラクター像と違ってしまったら……。ファンも、尾田先生も嫌だと思うんですよ。でも、尾田先生がちゃんと監修してくれたおかげで、結果的にはこの映画の重要な役割を担うキャラクターになりました。はじめはゼットの部下であるアインに歌わせようかと思っていた挿入歌「海導」を、青雉に歌わせたのも尾田先生と話していくなかで決めたものです。また、作画の加々美高浩さんが青雉のおっさんくさくてカッコイイ「あぁ」という表情を全部担当してくれたおかげで、青雉のキャラクターがさらに立ちました。「青雉」のお風呂シーンで意外なことが分かるので、そこにも注目してください。

監督としては、どのキャラクターが動かしやすかったですか?

チョッパー、ブルック、フランキーが特に動かしやすかったです。バトルでもシリアスでも、仲間が硬直しているときにコメディリリーフで出すのに丁度いい。困ったときに「カメラ、ブルックに行こうか」みたいな(笑)。特にフランキーとブルックの大人コンビがいい味を出してくれました。ブルックは1回海賊団の船長代理をやっているし、フランキーもフランキー一家の棟梁をやっている。一度はボスになっている人が、ルフィのことを盛り上げていることが純粋にすてきだなって思います。なぜこの二人はルフィの海賊団と一緒にいるのかっていうバックボーンを、自分の妄想の中でめちゃくちゃ考えながら演出しました。また、子供が見る作品だからこそ、大人のキャラクターたちをちゃんと描きたいという思いもありました。ゼットでも海軍でも、悪だったら悪を、正義だったら正義を貫く大人の背中を子供に見せたい。子供は小さい大人なので、キャラクターの芯の部分がぶれているとそれに気づいてしまう。「これぞ大人」というぶれないイメージが出せるように、大人のキャラクターたちの描き方には特にこだわりました。

長峰監督が食べてみたい「悪魔の実」があったら教えてください。

ここはあえて“食べない”という選択をしたいと思います。ゼットも「悪魔の実」を食べずに能力者と戦っていて、そこがカッコイイと思うので。

最後にファンに向けてひとことお願いします。

スタッフとキャストが全員仲間となって『ONE PIECE』漬けになって生み出した作品です。『ONE PIECE』の醍醐味(だいごみ)であるバトルシーンも全面に出していますし、僕としては『FILM Z』は、『ONE PIECE』の原点・マスターピースだという解釈で作っています。これを観れば、これまで『ONE PIECE』を知らなかった人も、好きになるキッカケになるはず。このような大きな作品にふさわしい映画になっていると思うので、ぜひみなさん劇場で楽しんでください!

長峯監督からみんなへの質問

『ONE PIECE』に登場したら面白いと思う、「島」のアイディアがあれば教えてください。

Information

『ONE PIECE FILM Z(ワンピース フィルム ゼット)』 大ヒット公開中

“新世界”を快調に突き進むルフィたち“麦わらの一味”。そこへ突如として現れたのは、傷だらけで海に漂っていた元海軍大将で“NEO海軍”船長・ゼットであった。右腕の大型武器を警戒しつつもルフィたちはサニー号でゼットを介抱するが、目覚めた彼が麦わらの一味を海賊だと認識したとたん状況は一変。ゼットは否応無しに一味に襲いかかり…。 古代兵器に匹敵すると伝わるエネルギーを含む鉱石・ダイナ岩。その鉱石を盗み出し、“全海賊抹殺”という壮大な計画を企むNEO海軍と、ルフィたちは全力衝突。そこに参入する海軍本部、さらに海軍を離れ一味の動向を追う青キジ。今、“新世界”の運命を賭けた史上かつてない死闘が繰り広げられる。

配給:東映
公式サイト:http://www.onepiece-film.com/

(c)尾田栄一郎 / 2012「ワンピース」製作委員会

Profile

長峯達也

1995年東映アニメーションに入社。TVアニメ『ハートキャッチプリキュア!』(2010年~2011年)の監督を務めるほか、同作品のアニメ映画『Yes!プリキュア5 鏡の国のミラクル大冒険!』(2007年)、『映画 Yes! プリキュア5 Go Go! お菓子の国のハッピーバースディ♪』(2008年)などの監督を務めている。

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