OKStars インタビュー

Vol.229 プロデューサー

深澤宏

OKStars Vol.229は山田洋次監督50周年記念作品となる『東京家族』の深澤宏プロデューサーへのインタビューをお送りします!

『東京家族』の企画意図をお聞かせください。

小津安二郎監督の『東京物語』をモチーフに、今の日本の家族のあり方を描く、ということです。小津さんの60年前の家族と、現代の家族では全然違います。今の方が人間関係で言えばより厳しいとも思います。『東京物語』と比較して観るというよりも、『東京家族』というひとつの作品を観て、ご自分の家族を振り返る上で何かを感じていただければと思います。

深澤プロデューサーは「男はつらいよ」シリーズをはじめ、山田洋次監督の作品をプロデュースされてこられましたが、今回は監督とどのような話を最初にされたのでしょう。

4年ほど前に、山田監督から『東京物語』をモチーフにした映画を作りたい、という話を聞きました。小津さんの描かれた『東京物語』は、主人公のお父さんの次男が戦死しているなど、戦争というものが作品の重要な要素のひとつとなっています。今回それをどうするのかということが疑問だったので、後日、山田監督にそこをどうするかお聞きして、それならばできるだろうと確信しました。

>それはどの点なのでしょうか。

『東京家族』では妻夫木聡さんが演じる次男・昌次を存在させて、この次男を今の若者の象徴のようなものにして、家族を描いていくというところですね。

妻夫木さんの名前も出ましたが、キャスティングにおけるねらいは?どのようにキャスティングしていったのでしょうか。

脚本を読んだ上での役柄のイメージをもとに、プロデューサー側で今回は、今まで山田監督と今まで仕事をしていない方をキャスティングしようと思いました。ですので、8人の主要キャストの中で蒼井優さん以外は全員初めてですね。蒼井優さんの演じる紀子役は、山田監督の『おとうと』で印象がとても良かったこともあって、一番最初に即決でした。

3.11を経て、製作を中断する決断がありましたが、プロデューサーとしてはその決断についてはいかがだったでしょう。

山田監督は常に今の時代を取り入れて映画を作っていますので、震災の1ヶ月後に何も無かったかのようにクランクインすることは違うのではないかと思っていました。とはいえ、撮影時期をずらすことで予定していたキャストの方のスケジュールをはじめ、同じようにはいかないので、監督は相当悩んだと思いますし、僕とも何回も話し合いました。ただやはり震災に伴う原発事故の被害がどのくらいに広がるか想像できない状況もありましたし、最後は英断した訳です。

>震災、という要素は作品の内容にも及んだのでしょうか。

昌次と紀子が出会ったのが福島でのボランティアというように部分的には出てきますが、震災によって作品の骨格自体が大きく変わったわけではありません。大事なのは気持ちですね。震災が起こった直後に、それが無かったように撮影するのと、震災を受け止めて、それを踏まえて撮影する気分というものはやはり映画の中にも出ていると思います。

製作にあたって、この『東京家族』で一番重要な幹の部分は何だと考えていましたか。

家族は素敵なものである反面、近しいだけに厄介だったり、遠慮しなくていいのに遠慮したり、大人になっていくにつれ、自分たちの生活もあるので、親のことをついぞんざいに扱ってしまったりする。親の方も分かっていても寂しくなってしまうような、人間関係の当たり前のところに改めて気付かされるところですね。

小津安二郎監督の『東京物語』をモチーフにされましたが、描く対象としてのモチーフだったのか、映画としての挑戦だったのか、どちらでしょう。

小津さんの『東京物語』は世界でもトップ1に選ばれているし(※)、山田監督本人も仰っていますが、若い頃は小津作品の良さが分からなかったが、年を重ねて良さが分かるようになったと。実際、製作が始まる前から『東京物語』を何回も観てはいましたよ。ですので、最初のうちはカット割りも似た感じでした。そうは言っても同じ映画を作るわけではないので最終的には完全に山田洋次作品になりましたね。

※英国映画協会発行の「サイト・アンド・サウンド」誌の2012年8月2日発表した映画50選

山田洋次監督の演出全般などについては、プロデューサーはどう捉えていらっしゃいますか。

まず、演出が丁寧ですね。俳優への説明も分かりやすいし、伝わるまで何回もリハーサルやテストを繰り返して、細かくやっていきます。今はTVも映画も時間の制約がありますけれども、山田監督だけは「そこは自分たちは守らないと」と考えているでしょうし、僕らも山田監督に対して演出できる時間や環境を確保しようと思っています。山田監督もそれを理解した上で時間を有効に使って、細かく演出されています。また、コミュニケーションを大事にしています。最近、モニターを見て演出する方もいらっしゃいますが、山田監督はいつも俳優の側にいて、顔を見て、動きを見て気になるところを話し合っています。僕が山田監督とお仕事をさせていただいて27年くらいが経ちますけれども、そこは昔から一切変わっていないところがすごいです。

>作り方としてはいかがでしょうか。

地方ロケのようなものを除くと台本のシーンの順番通りでやっていますし、本読みやリハーサルも時間を取って納得行くまでやっていますね。撮影前にそれらをやることでコミュニケーションもとれますし、俳優のキャラクターを掴んでいきますので、良い形でクランクインしていけますね。

深澤宏プロデューサーの映画作りの“モットー”をお聞かせください。

僕らの世界は「人」がすべてなので、いつも真摯に向き合うようにしようと心がけています。真摯に向き合って自分の言葉で話していこうとは若い頃から思ってやってきました。
何より、嘘や無理はどこかで綻びが出てきますし、僕の経験上、無理をするとやはりどこかでへばってしまうんですよね。そうすると上手くいかないので、必要な無理はしても、必要ではない無理はしないようにしています。

『東京家族』の見どころとOKWaveユーザーへのメッセージをお聞かせください。

『東京家族』では特別な家族を描いているわけではありませんので、映画を見ると必ずどこかに自分がいると思います。どの人物でも、どこかに自分を投影させてみて、映画を見終わったらご自分の家族と話をしてほしいですね。そして、せめて観た日くらいはちょっといつもと違う家族の関係をつくっていただけると作り手としては嬉しいです。

深澤宏プロデューサーがいま気になっていることを「質問」してください。OKWaveユーザーが「回答」します。

若い方は小津安二郎監督の『東京物語』をご覧になっていない方も多いと思います。
この『東京家族』を観て、その後で『東京物語』を観て、
あらためて『東京家族』をどう思ったか、が気になります。
ぜひそのような感想をお聞かせください。

Information

『東京家族』
2013年1月19日(土)全国ロードショー

2012年5月、瀬戸内海の小島で暮らす平山周吉(橋爪功)と妻のとみこ(吉行和子)は、子供たちに会うために東京へやってきた。郊外で開業医を営む長男の幸一(西村雅彦)の家に、美容院を経営する長女の滋子(中嶋朋子)、舞台美術の仕事をしている次男の昌次(妻夫木聡)も集まり、家族は久しぶりに顔を合わせる。最初は互いを思いやるが、のんびりした生活を送ってきた両親と、都会で生きる子供たちとでは生活のリズムが違いすぎて、少しずつ溝ができていく。そんななか周吉は同郷の友人を訪ね、断っていた酒を飲み過ぎて周囲に迷惑をかけてしまう。一方、とみこは将来が心配な昌次のアパートを訪ね、結婚を約束した紀子(蒼井優)を紹介される。翌朝、とみこは上機嫌で幸一の家に戻って来るが、突然倒れてしまう。

監督:山田洋次、脚本:山田洋次、平松恵美子
出演:橋爪功、吉行和子、西村雅彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優 ほか
配給:松竹

公式サイト
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(C)2013「東京家族」製作委員会

Profile

深澤宏

松竹株式会社映像本部 映像企画部 映画企画室長。
山田洋次監督の作品をはじめ、数多くの映画にプロデューサーとして携わる。

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