OKStars インタビュー

Vol.252 作・演出家

蓬莱竜太

OKStars Vol.252は、2010年に他界した劇作家の井上ひさしさんが最後まで書こうとした「木の上の軍隊」。この幻の作品の公演に向けて新たな戯曲を書き下ろした作・演出家の蓬莱竜太さんへのインタビューをお送りします。

『木の上の軍隊』を手がけることになったきっかけとご感想をお聞かせください。

こまつ座さんからお話をいただいたのですが、井上ひさしさんの遺されたものを他の作家に書いてほしいということで、とんでもない企画だと感じました。これを引き受けて本当に得なことがあるのか(苦笑)というくらい大変なことだと思いました。それ故に逆にやりがいがあるとも感じました。

井上ひさしさんの遺した原案は、タイトルと題材のみだったとのことですが、どこから取り組もうと考えましたか。

まずは沖縄に行くことから始めました。作品の背景に沖縄戦争がありますが、僕の世代では普通には選ばない題材だったので、自分の中で書きたい欲求がどこに湧くのかを確かめるためにもまずは実際の場所を見てみようと思いました。ただ、実際に行ってみても、間口の広い話ですし、資料を読んでも、いろんな考え方と捉え方があるので、どうやるかは悩みました。

台本を読ませていただいて、一人は沖縄の志願兵、上官は本土出身という史実も含めて、“本土と沖縄”の構図の抱える問題、といったものも感じました。蓬莱さんご自身は脚本執筆の中でどこまで踏み込もうと考えましたか。

登場人物は非常に限られていますし、むしろそこに絞り込んだ方が良いだろうと決めました。沖縄と日本という部分については、社会的な背景はいろいろあるし、日本と沖縄と言ってもひとつには括れません。ただ、人物がその時に何を感じて2年間頑張って生きてきたのかを、この2人の会話で描こうとしました。ここでもひとつの戦争があるんですね。この2人の中でも戦争があるということを描くことで、その問題というものが最終的に立ち上がってくる話にしたいと思いました。ですので、社会的な問題を抱えている作品としてこちらの考えを押し付けるのではなく、その2人の2年間に集中することで自ずとその問題が浮かび上がってくるような作品にしたいな、という考えでした。

では、2人の物語という部分では、どんな話にしようとしましたか?

2人は同じ日本軍でありながら背負っている背景が全く違うわけです。全く異なる隣人というのか、この2人が木の上にいながら信頼や友情を培っていく話ではなく、ズレをどんどん知っていく話にしたいという考え方でした。むしろ、隣りにいる人のことが分からなくて苦しむ2年間、という構造にすることで、2人の抱えている背景と問題の差が出てくるのかなと。“分からない苦しさ”を描こうとしました。それがそもそもの現代の沖縄と日本なのではないかなと思います。

>いつの間にか立場が変わっているところも面白いですよね。

パワーバランスが微妙なところで変わっていく、そういうところは考えました。戦争教育というものが上官には踏襲されていて、そこから離れたところにいる新兵がいて、どちらがより人間的な考え方をしているかということの戦いでもあるので。そういう2人が舞台上で2時間、駆け引きや戦いを織りなせば、スリリングな話になると思いました。

蓬莱さんはご自身でも演出をされますが、今回は脚本を書く時に舞台のイメージはどこまで感じながら執筆されたのでしょう。

この作品は木というものが主役で、僕のイメージでは舞台の上にガジュマルという化物のような木がある。その木の下には戦争で亡くなった死体がある。骸の上から生えている木と、その木の上でお互いを理解できない2人が戦っている。それは実は敵国と戦っているのではなく、お互いの相手と戦っている、というイメージを共通のイメージとして演出の栗山民也さんとも話しました。

最初に書き上げた時にはどう感じましたか?

もうこれ以上書きようがないというくらいのところまではいきましたので、最初に台本を書き終えた時は、これでようやく自分も木から降りられるような感じでした。半年くらいかけて書いていましたけど、自分もずっと木の上でシンクロして書いている気がしていました。

藤原竜也さん、山西惇さん、片平なぎささんが本作を演じることについて、キャストの方への印象や感じていることをお聞かせください。

藤原さんは最初の本読みを聞いた時に、ものすごい集中力だと感じました。その集中力と、それを聞いて返す山西さんのエネルギーもすごかったです。本読みの1回目で全力の本読みが聞けるのはなかなか無いですし、とくに人数が多い時の芝居はみんな出方を探りますけど、とにかくぶつかっていくんだと感じてくださったようで、すごく勇気のいることですし、そういう経験をされてきた役者さんなのかなと頼もしく思えました。片平なぎささんは「分からない、分からない」と言いながら(笑)、その分からないことを隠さず恥じずにさらけ出していました。正直でチャーミングな方でしたね。

>今の稽古の状況は?

本読みの3日間は立ち会って、立ち稽古になってからはほとんど立ち会っていないので、今は楽しみな状況です。大変難しいセットの中での芝居なので、それも楽しみですね。

本作に限らず、脚本を書く時に一番重視していることは何でしょうか。

何を書こうとしているのかが、ちゃんと自分の体を通っているかを確認します。分かったふりで書いているのか、感じたことを書いているのか、正直に書くということですね。それは本当に難しいところです。技術がついてくるとそれらしいことになってしまう可能性があるので、自分の体を通っているかを重視しています。

では蓬莱竜太さんの“モットー”をお聞かせください。

人の話をよく聞くということですね。それは難しいことだと思っているので、大事にしています。自分の価値観から出なかったり、出ることを恐れることが多いので、他の人の価値観を理解できないまでもまず知る、聞くことを大事にしています。

では最後にOKWaveユーザーに見どころをお願いします。

実は僕はすごく簡単な話だと思っています。簡単であり、スリリングな話だと思っています。エンターテインメントの基本でもあるような話でもあります。戦争やいろんな問題が背景には横たわっているのですが、この3人の心理戦、それだけを見ても娯楽として楽しめると思います。暗転もなく、2時間役者だけで芝居を織り成していく密室劇でもあるので、面白く観られるのではないかと思います。

蓬莱竜太さんからOKWaveユーザーに質問!

暗証番号って、生年月日などは避けてくださいと言われていますが、
みんなはどうやって決めているのか気になっています。
ぜひその決め方をお聞かせください(笑)

Information

こまつ座&ホリプロ公演『木の上の軍隊』

井上ひさしが最後まで書こうとした幻の作品「木の上の軍隊」
2010年4月に他界した日本を代表する劇作家、井上ひさしは、亡くなる直前まで、ある一本の作品を執筆しようとしていた。その作品が、「木の上の軍隊」である。
戦争時、沖縄県・伊江島で、戦争が終わったのを知らぬまま、2年もの間、ガジュマルの木の上で生活をした2人の日本兵の物語が描かれるはずであったが、井上氏の急逝により、この舞台はその初日を迎えることはなかった。
本企画は、この実在のエピソードをもとに、才能溢れる若手作家の蓬莱竜太が新たな戯曲を書き下ろし、井上ひさしがもっとも信頼を寄せた栗山民也が演出を手掛ける、井上ひさしに捧げるオマージュ企画である。

藤原竜也
山西 惇
片平なぎさ
ヴィオラ奏者 徳高真奈美

原案:井上ひさし
作:蓬莱竜太
演出:栗山民也
企画制作:こまつ座/ホリプロ

【東京公演 第一弾】
2013年4月5日(金)~29日(月・祝)Bunkamura シアターコクーン(全29回)
S席:10,000円、A席:8,500円、コクーンシート:5,000円(全席指定・税込)

【東京公演 第二弾】
2013年5月3日(金・祝)~6日(月・祝)天王洲 銀河劇場(全5回)
S席:10,000円、銀河シート:5,000円(全席指定・税込)

その他、地方公演あり

こまつ座:http://www.komatsuza.co.jp/
ホリプロ オンライン チケット:http://hpot.jp(PC&携帯)

Profile

蓬莱竜太

兵庫県出身。石川県立羽咋工業高等学校デザイン科卒業。高校時代に担任教師から半ば強制的に演劇部入りを命じられて芝居作りの楽しさに目覚め、上京後の1996年3月舞台芸術学院演劇科本科卒業。舞台芸術学院の同期生と劇団モダンスイマーズを1999年に旗揚げ。以降、モダンスイマーズ全公演の作・演出を手がけながら舞台版『世界の中心で、愛をさけぶ』や舞台版『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』などの話題作を担当し、骨太な筆致から若手劇作家として各方面から注目を浴びる。2009年、「まほろば」で第53回岸田國士戯曲賞受賞。主な劇団外部への書き下ろし作品は『時には父のない子のように』『ユタカの月』『第32 進海丸』『Triangle』『罪』『淋しいのはお前だけじゃない』 『パレード』がある。

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