OKStars インタビュー

Vol.266 映画監督

中田秀夫

OKStars Vol.266には中田秀夫監督が登場!前田敦子さん主演の最新作『クロユリ団地』についてのインタビューをお送りします!

『クロユリ団地』製作の発端についてお聞かせください。

2011年の秋に、僕が自主映画で『3.11後を生きる』を岩手県宮古市で撮影した時にプロデューサーから直接連絡があって、オリジナルホラー映画を作ってくれないか、というお話をいただきました。その後、脚本家の三宅隆太さん、加藤淳也さんと物語を作っていく上で、心に傷を負う主人公に前田敦子さん、成宮寛貴さんを指名したという流れです。

団地という独特の環境を舞台にしたことについての監督の思うところは?

世界共通の面と日本独特の面があると思います。その日本独特な面ということでは、今から50年くらい前の昭和30~40年代に高度成長期が来て、日本にもミドルクラスが生まれてきたわけです。ニューファミリーと呼ばれるような、お父さん、お母さんに子どもがいる同じような所帯が、新しくできた団地に入るのが夢でもあり現実でもあったという時代がかつてあったわけです。それが50年の時を経て、今では住む人も一様ではなく、一人暮らしの方もいれば家族で住んでいる方もいるけれども、皆そんなには知り合いではない。昔は似たような世帯が住んでいたので子どもたちは一緒に遊ぶし、コミュニティとして人間的なつながりがあったはずですけれど、今は当時よりは孤立化した状態で暮らしている。そして老人介護や孤独死のような問題が起きているんですね。
一方で、これが日本独自の現象かというとそうでもないんですね。僕が仕事をしたアメリカや、イギリスにも公共のアパートに住んでいる人はたくさんいて、お互いに交流はない、という現象はあるんです。それと、この『クロユリ団地』をオリジナル作品として発案するにあたってヒントになっている映画が『ぼくのエリ 200歳の少女(原題:Let The Right One In)』というヴァンパイア映画で、小学校でいじめられている少年が主役という、観ていて日本的だと思うところもある作品です。この作品は永遠に生き続ける宿命のヴァンパイアの少女と少年の孤独な魂が寄り添おうとする話で、そのエッセンスはこの『クロユリ団地』にも受け継がれているのですが、『ぼくのエリ 200歳の少女』にも団地という空間が出てくるので、そういうものを横目で見ながらスクリプトを作っていきました。

前田敦子さん、成宮寛貴さんらキャストに演じる上で求めたことは?

過去の出来事がきっかけで深いトラウマを持つようになった孤独な人物を前田敦子さんには演じてもらったので、決してアイドルのホラー映画にはしたくないと思いました。彼女は国民的アイドルグループにいましたけど、僕が何となく感じている前田敦子という人物についての、繊細であったりふっと見せる寂しそうな表情が印象にあったので、彼女にはアイドルの殻を自分でむいてもらって、20歳の一人の人間に戻ってもらって、アイドル然としたところではなく、なるべく自分の生の感情を出して演じてもらえるようにしました。 また、成宮さんには物語を進める上で「お助けマン」となる人物を演じていただきましたが、彼は自ら役の堀下げをして、演じる「笹原」という人物の動機を観客に伝えるべく色々な提案をしてくれました。

撮影中のエピソードなどありましたらお聞かせください。

クランクインする前には、前田さん・成宮さんには「ホラー映画の現場は意外と笑いが絶えないんだよ」ということを伝えさせていただきました。さらに、そこから発展して、ホラーと一発ギャグのようなものは似ていることもあるんです。例えば「貞子がテレビから出てくる」というのは、実際に芸人さんがパロディにしていたり、確かにすれすれなところはあるんですね。そこをどう怖く見せていくのかがホラーの醍醐味だと思っています。
あとは僕がミノル役の田中奏生くんと一緒に、COWCOWさんの「あたりまえ体操」をセットの隅で照明等の待ち時間によくやっていたということくらいですね(笑)。
撮影自体は、僕の経験の中ではしっかり準備もできてスムーズにできました。前田さんが当時はまだAKB48のメンバーということもあって、飛び飛びの撮影にもなったので、その分、準備を十分にして撮影日を迎えられた、ということでもありますね。

監督は「ホラー」という題材そのものの何を一番描こうと考えているでしょうか。

20年前にTV番組の「本当にあった怖い話」で初めて撮ったので、僕自身はホラーというジャンル自体には偶然巡りあったもので、率先してやってきたわけではないんです。ただ、あえて言えば、歌舞伎や落語など日本の伝統芸能の中に夏になると怪談があるように、日本の怪談文化のどこかに人間の本能として怖さへの想像力があるというところですね。岩穴に住む原始人が岩穴の奥の暗闇の中からいつ猛獣が襲ってくるかという恐怖を感じながら火を焚くという、闇に対する恐怖や、死者の魂がどこに行くんだろうという想像力で、ここにいないものをイメージして怖がったりするところはあると思います。人間の根源的な感覚を刺激するものとしてのホラーはお客さんをエンターテインメントに誘うという意味で忠実なジャンルだと思いますし、面白いところだとも思います。

『クロユリ団地』を作り終えて得たことや新しい発見はありましたか?

『クロユリ団地』は暗い過去を持つ主人公と、そこに寄り添う隣人たちの中にはこの世のものではない存在もいる、という話です。その中に孤独や引っ越して来も口も聞かないような人間関係とか、それこそ『ALWAYS 三丁目の夕日』とは対極の世界ですが、それは今や都会だけではない話です。『仄暗い水の底から』でもやりましたが、現代人全体が抱えている、とくに団地のような無機質な同じような空間に住みながらバラバラの生活を送っていて、心の底では結びつこうとしているけれども結び付けない、というリアリティのあるホラーがやりたかったので、そこは成果が出せたと思いますね。

今後の展望は?

僕はホラーだけをやってきたわけではないので、またホラーをやるか分かりませんが、また面白い題材が出てくればホラーもやるかもしれませんね。決まっているものとしては次の作品はアクションものを作る予定ですね。

中田監督の“モットー”をお聞かせください。

撮影の時に俳優の演技を見て聞くということですね。監督として意見は言うわけですが、俳優はロボットではないし、意のままにならないところが面白いので、自分のイメージと異なる演技をされた時には、それを直すこともあれば活かすこともあるし、いいとこ取りするためにもよく見てよく聞くということです。それと、自分は監督であると同時に、一番最初のお客さんでもあると思っていて、生でパフォーマンスを見ている時に素晴らしいものが見られた時に喜びを感じます。世界で最初にこのパフォーマンスを見させてもらっているという、虚心坦懐に俳優の演技を見るところがモットーです。

中田監督から映画を楽しみにしている人たちへメッセージをお願いします。

前田さん、成宮さんのファン、あるいは団地マニアの方、そういう方はぜひお見逃しなく。オリジナル作品としてはドラマを充実させて、基本はエンターテインメントですけど、現実的な親近感が乗ったホラー映画になっているので、若い世代からずっと上の世代までぜひ観ていただきたいですね。

中田秀夫監督からOKWaveユーザーに質問!

仮に『クロユリ団地』パート2があるとすれば、
誰が出てどのような話があればよいですか?
参考にさせていただきます(笑)

Information

『クロユリ団地』
2013年5月18日公開

13年前から謎の死が続く老朽化した集合住宅・『クロユリ団地』。
その事実を知らずに越してきた明日香(前田敦子)は、引っ越した夜から隣の部屋から届く「ガリガリガリ……」という不気味な音に悩まされていた。
そしてある日、連日鳴り続ける目覚ましをきっかけに隣室で孤独死した老人を発見してしまう。その日を境に明日香の周囲で恐ろしい出来事が次々と起こるように。
老人の死を防ぐことができなかったという罪悪感と度重なる恐怖で精神的に追い詰められた明日香は、隣室の遺品を整理するために来ていた特殊清掃員の笹原(成宮寛貴)の助けを借り、老人が伝えたがっていることを探ろうとするが…。

監督: 中田秀夫
脚本: 加藤淳也、三宅隆太
主演: 前田敦子、成宮寛貴
配給: 松竹
企画・製作: 日活(日活100周年記念作品)

公式サイト
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(C)2013「クロユリ団地」製作委員会

Profile

中田秀夫

1961年生まれ、岡山県出身。
東京大学卒業後、にっかつ撮影所に入社。小沼勝監督や澤井信一郎監督らの元で撮影所助監督として経験を積み、92年、TVドラマ「本当にあった怖い話」シリーズの「幽霊の棲む旅館」「呪われた人形」「死霊の滝」で監督デビュー。96年に『女優霊』で映画監督デビューを果たし、その後『リング』(98)、『リング2』(99)で日本映画界に稀代のホラーブームを巻き起こす。05年にはハリウッド・リメイクされた『リング』の続編、『ザ・リング2』を自身が監督、ハリウッド進出も果たし、その後も国内外で活躍している。その他の監督作に『カオス』(00)、『ラストシーン』(02)、『仄暗い水の底から』(02)、『怪談』(07)、『L change the World』(08)、『インシテミル 7日間のデス・ゲーム』(10)、『Chatroom/チャットルーム』(10)、『3・11後を生きる』(13)、『四苦八苦/Words with Gods』(13)など。

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