OKStars インタビュー

Vol.269 映画監督

三木聡

OKStars Vol.269には映画監督の三木聡さんが登場!亀梨和也さんが33人の自分を演じる話題作『俺俺』についてのインタビューをお送りします!

『俺俺』についてオファーがあった時の最初の印象はいかがだったでしょうか。

ちょうど「熱海の捜査官」という謎のドラマをやっていて、それこそ質問サイトに「あの内容はどうなっているんだ!?」という質問が入って、それぞれの解釈の回答が詳しく載るという現象が起きてました。その「熱海の捜査官」を観ていたプロデューサーから、「そういう志向があるならこういう原作はどうですか?」と言ってきたのが「俺俺」でした。映画としてはかなりトライアルだなとは思ったけど、やる気もあったというのが最初の印象ですね。

どんな風に作ろうと考えましたか?

ひとつの答えが出ている面白さもありますけれど、答えが出ていない暗示というのが、質問サイトのやり取りを見ていても感じますね。正解があるとそういう質問は生まれないし、回答を見ていると、それぞれの物語の捉え方の背景も見えてくるから、「答えを持たない」ということもエンターテインメントになりうると思いました。星野智幸さんの原作にはもちろんテーマの提示はあるけれど、ある意味、答えを求めなくても、ひとつの答えに向かわなくてもいい作品なので、いま僕がやりたい気分に合っている作品でした。意味のないものへの恐怖があると思いますけど、意味が分からなかったり、意味がずれた時には、自分なりの答えで意味を埋めようとする本能がみんな備わっていると思うので、そのことを刺激するのもエンターテインメントになると思いました。だから、あえて辻褄が合わないことを気にしないようにもしました。アニメーションだとそういう世界観も受け入れやすいようですけど、実写はまだまだこれからなのかなとは思いますね。

郊外という舞台であったり、演出面でのこだわりはいかがだったでしょうか?

郊外を舞台にした亜SFみたいな話に亜リアリティをどうつけていくかにはこだわりました。実際には自分が増殖していくなんてのはリアルなことではないので、そういうSFをどうリアルに作っていくのかということですね。郊外というものには、そこならではの価値観や思想みたいなものができつつあると感じていて、大きなショッピングセンターがあるような風景とか、昔の田舎とは違う新しい地域の共通認識ができていると思います。その気分が新しい価値観だとか、何かを決める尺度のひとつになってきているんじゃないかとも思うんです。ですので『俺俺』は、その郊外を舞台に亜SFをどう起こしていくか?ということなんです。郊外にいる人たちの話であり、その人たちが郊外のシネコンで映画を観るわけです。昔なら都心の単館映画館に文化人が集って物事が生み出されたり、都市で生まれたものが各地に広まっていくのが、今では郊外の気分みたいなものから物語が生まれる時代になっているんだろうなということですね。

亀梨和也さんのキャスティングに思い至ったところや、撮影前に期待していたことろはいかがでしょうか?

プロデューサーからの発案で彼の名前が出てきましたけど、亀梨くんの持っているリアリティがこの作品に合っていることが最大のポイントでしたね。33役を演じるということは、一人芝居をやっているような役者さんが演じ分けるものを見せるエンターテインメントではないだろうと思いました。一方で、亀梨くんはトップアイドルとしてそれぞれの顔で演じ分けているので、役者さんが演じ分けるのではない別のリアリティを持っているんじゃないかと感じました。亀梨くんは27歳の男であると同時に東京ドームの5万人の観衆の前に立つアイドルであり、プロ野球のコメンテーターをやり、「妖怪人間ベム」のようなドラマの役者でもある。そういうチャンネルを切り替えられるようなリアリティを持って郊外の風景に立ってもらうことが魅力的でしたね。
実際には、撮影の途中には、3役を演じているのに、そういう風に見ないようになっていました。撮影に苦労した割には、3人の人物が出てくる普通の芝居のようにしか見えないくらいですからね(笑)。

>確かに最初はびっくりしましたけど、段々と亀梨さんが全ての“俺”を同じ画面で演じているのを忘れる時がありました。

一人の役者が3役をやってますよという演出をあえてやっていないですからね。
他人を見る時に、自分の目線や自己を投影してしまうのが物語上のテーマです。例えば自分の彼女を見るときに自分の理想が反映されてしまうなんてのは、突き詰めると“相手が俺だったらいい”、ということになってしまいますけど、実際にはそうではない、ということがこの不条理な物語のテーマのひとつでもあるんですね。

他のキャストの方々も個性的ですが、全体に演技に求めたところは?

“ただ演じてもらう”ということですね。全体のつながりとか、演じている人がどういう背景を持っていて今があるのかをあまり気にせずに表現してほしいと。辻褄が合わないこととか、一貫性の無さというものを内包して演じるという非常に難しい作業だったと思います。普通はこういう育ちや経験をしたからこういう言動の人物、ということなりますからね。ですので、各シーンだけをきっちり演じていただきました。高橋恵子さんはすごい女優さんなので「三木さん、ここは全体の辻褄は気にしなくていいのよ」と最初に宣言してくださいました。とくに亀梨くんにはキャラクターのデフォルメを無しにした分、周りの人物はデフォルメすることを緩めにしたので、全体にトリッキーなキャラクターを演じてもらっていますね。

では、OKWaveユーザーに見どころとメッセージをお願いします。

見どころとしては、自分が観た感想と他の人の感想を比べてみてどんな感じなのかを考えていただけると嬉しいですね。自分が観た感想がひとつの答えだと思っているけど、他の人が観た感想が正解という可能性もあると思っているので、そういう見方をしてほしいですね。自分の考え方が世界を構築しているのではなく、いろんな方が世界を構築しているんだということを再認識していただけると嬉しいです。それが『俺俺』の問題ですので。OKWaveなんてまさしくそうですよ。

>いろんな答えをもらっても、質問した人がベストアンサーを選びますからね。

結局自分が答えを言っているのと一緒なんじゃないかとも思いますね(笑)。自分に一番合っている答えを選ぶという『俺俺』と同じ現象が起きているわけです。見てて面白いのは答えてもらった回答なのに気に食わないとかね(笑)。そういうことが起こりうる発想って現代的だと思いますよ。不特定多数の人が自分の質問に答えて、かつその答えによって好き嫌いが分かれる(笑)。インターネットというメディアがなければそういうことは起こり得ないですね。そして、相手が“俺”になってくれれば一番いいわけです。

三木聡監督からOKWaveユーザーに質問!

質問は、

他人が自分のことをどう思っているかをそんなに気にしないといけないですか?

個人的には全く気にしていないですけど、
映画監督としてはもう少し気にしないといけないだろうから、
皆さんはどう思っているか、ぜひ教えてください。

Information

『俺俺』
2013年5月25日(土)増殖開始!

永野均、28歳。なりゆきでオレオレ詐欺をしたら俺の前に別の俺が現れた!同じ顔、同じ好み、同じ考え…俺だらけの世界って最高にハッピー!俺同士のパラダイス俺山。止まらない俺の増殖。俺同士はみんなわかり合えると思っていた均だったが、いろいろな“俺”に会ううち、なかには“許せる俺と許せない俺”がいることに気付く。そしてある日を境に、俺の前で別の俺が殺され、俺同士の削除が始まったのだ。やがて均自身もほかの“俺”に追われるようになっていく。

出演:亀梨和也 / 内田有紀 / 加瀬亮
脚本・監督:三木聡
製作・配給:ジェイ・ストーム
配給協力:GAGA

http://ore-ore.jp/index.html

Profile

三木聡

1961年、神奈川県生まれ。
80年代から「タモリ倶楽部」「ダウンタウンのごっつええ感じ」「トリビアの泉」などのTV番組に放送作家として関わり、2000年までシティボーイズのライブの作・演出を手がける。2000年に『シティボーイズライブ短編映画「まぬけの殻」』を発表。05年『イン・ザ・プール』で長編映画デビューを果たす。監督作に『亀は意外と速く泳ぐ』(05)、『ダメジン』(06)、『図鑑に載ってない虫』『転々』(07)、『インスタント沼』(09)。TV。主なドラマ作品に「時効警察」(06)、「帰ってきた時効警察」(07)、「週刊真木よう子「チーコとかもめ」」(08)、「熱海の捜査官」(10)など。

OK LABEL

回答投稿にあたっての注意とお願い

OKStarsからの質問は、OKWave事務局(ID:10q-OK)が質問投稿とベストアンサー選定を代行しています。
当企画は、OKWaveの他のカテゴリーと異なる主旨での運営となっています。原則的に回答への個別のお礼はつきません。あらかじめご了承ください。
ご回答の際には利用規約禁止事項ガイドラインに沿った投稿をお願いいたします。