OKStars インタビュー

Vol.345 映画監督

青山真治

OKStars Vol.345には青山真治監督が登場!芥川賞受賞作の映画化『共喰い』がBD/DVD発売。本作についてのインタビューをお送りします!

田中慎弥さん原作の「共喰い」を読まれて惹かれた部分は?

脚本の荒井晴彦さんから「共喰い」は読んだ?これは映画になりそうなんだけど」というメールが来たのが読むきっかけだったので、初めから映画化できるかどうかを考えながらでした。映画化したいなと思ったところは、昭和の終わりの昭和63年(1988年)の話ということ、僕の故郷の北九州の門司の対岸に位置する下関が舞台だということ、そして読み進めるうちに女たちの物語だと気づいたこと、この3点です。僕は読んでいる時には映像のことを考えない方なので、作品の持っているそういう部分に惹かれましたね。

3つのポイントを挙げられましたが、映画化の上でどういうところを中心に描いていこうとしましたか?

主役は篠垣遠馬ですし、遠馬の敵は父親なので、そのふたりを描くのは当然ですが、その周りの女性たちが実際にはつながっていないのに、なぜかつながっているかのような微妙な線が浮かび上がって見えるといいなと思いました。

>エンディングに向かってどんどん女性が全面に出てくる作りになっていましたが、男女の立場を逆転させるような意図があったのでしょうか。

そうですね。遠馬にとっては、川辺という町にそれまでは暴君としての父親がいたのが、上に立つ人間が変わったに過ぎないということですね。

キャスティングについてはいかがだったでしょう。

僕の見立てでの一番役に合っている人を選んだキャスティングです。原作では琴子はもう少し太っている人物ですし、千種はもっとかわいくないような書かれ方をしていますが、容姿ではなく内面の部分でそのキャラクターの人間像と合っているかを見極めていきました。

>では、菅田将暉さんのどの部分に遠馬らしさを感じましたか?

菅田君は結構照れ屋で、人の顔を見て話さないし、時々こちらを見てニヤッと笑うような内省的なところがあって、そこが遠馬という鬱屈した人間の様子に近いのかなと思いました。そういう部分を一目見て遠馬らしさを感じました。

本作では性描写にも挑まれましたが、現場での若手俳優らはいかがだったでしょうか。

現場では至って冷静でしたよ。はい、お仕事ですよ、と(笑)。女子は皆さん堂々としていたけれど、男子はあわてていたり、冷や汗びっしょりになっていましたね(笑)。

>映画公開時の資料によると、ロマンポルノというキーワードがあったそうですが。

昭和の時代を知っている中高年には懐かしさが感じられたり、分かりやすい設定ですが、過去にそういうジャンルがあったことを新鮮に思ってくれたらいいなと思いました。

昭和の終わりを描くという点では何か感じるところはありましたか?

ロケハンをして見つけたあの場所は昭和から時間が止まっているような場所だったので、とくに注意するようなことはなかったですね。

>平成生まれの菅田さんや木下さんが昭和の若者を演じる点では、何か演出面でありましたか?

とくに昭和だからということで意識して変えるということはなかったですね。

脚本を読まれた時、この映画としてのエンディングについて、監督自身はどう感じましたか?

荒井さんらしいなと思いました。昭和の終わりを描く方法のひとつだと僕は納得しました。映画で描いたものと、僕の母や祖母の昭和の終わりに対する反応も同じでしたので。

>女性たちにとっては拓けていくような終わり方かなと感じました。

女性たちの物語という部分では、女性たちの存在が大きくなっていくのでハッピーエンドと言えるかもしれません。一方で遠馬にとってどうなのかという部分での二重性を考えていましたので、その部分は面白いと思います。

人物にはあまり寄らない映像、俯瞰する映像が印象的でした。

もちろんアップの映像もありますが、川辺という町で生きているということがどういうことかを意識して撮りました。どこから誰が見ているかは分からないけど、誰かが見ているかのような引いた絵を撮っている感覚ですね。誰かが見ているから噂が伝播していくし、その噂が町全体を作っていることこそが遠馬を閉ざしている場所なんだという説得力を持っていると思います。

荒井晴彦さんの脚本で撮られましたが、難しかったところはありましたか?

難しいという感覚よりはチャレンジという気持ちでした。自分が脚本に携わっていない他の人の脚本で演出に徹するのは初めてだったので、荒井さんからは「やっと監督になったな」とは言われました。脚本にどこまで丁寧に、即してできるかという点ではうまくいったと思います。そういう意味ではひとつ大人になった気持ちがしていますよ。

本作から離れた質問ですが、第26回東京国際映画祭の「アジアの未来」部門の審査委員として講評された際に「どの作品にも笑いがなかった」とコメントされていましたが、その考えをもう少しお聞かせください。

問題意識を掘り下げることは良いことですが、そこにユーモアが無いとお客さんがついてこないだろう、ということです。お客さんを笑わせながら、描きたい問題を掘り下げていく視点が欠けていたということですね。『共喰い』で言えば、父親の円という男を、光石研さんのキャラクターもありますが、暴力的でありながらもどこかユーモラスな人物に変更したのが原作からの最大の変更点です。親子の会話のちぐはぐさがみえるところなどは笑いを誘う部分ですね。

青山真治監督からOKWaveユーザーに質問!

皆さんは『共喰い』の最後に流れる「帰れソレントへ」という曲を知っていますか?

Information

『共喰い』
2014年3月5日(水)Blu-ray&DVD発売

DVD(ASBY-5707)3,800円(税別)
Blu-ray(ASBD-1105)4,700円(税別)

特典映像:劇場予告編、TVスポット、初日舞台挨拶、プレミア試写挨拶、メイキング、青山真治×田中慎弥対談、ロカルノ映画祭模様

【ストーリー】
昭和63年夏、山口県下関市。17歳の遠馬は、父親とその愛人と暮らしている。普段は明るい父だが、彼にはセックスの時に女を殴る暴力的な性癖があった。戦争で左手を失った遠馬の実母は、そんな夫に愛想を尽かし、遠馬を産んですぐに家を出て魚屋を営んでいる。日常的に父の乱暴な性交場面を目の当たりにし、嫌悪感を募らせていく遠馬。幼なじみの彼女・千種と何度も交わるうちに、思わず千種の首を絞めてしまい気づいてしまう。自分にも確かに父と同じ、忌まわしい血が流れていることを。

監督:青山真治(『EUREKA ユリイカ』『東京公園』)
原作:田中慎弥「共喰い」(集英社文庫刊)
脚本:荒井晴彦(『Wの悲劇』『大鹿村騒動記』)

菅田将暉、木下美咲、篠原ゆき子、光石研、田中裕子

発売元・販売元:アミューズソフト

http://www.tomogui-movie.jp/

© 田中慎弥/集英社・2013『共喰い』製作委員会

Profile

青山真治

1964年福岡出身。
生まれ故郷の北九州市を舞台にした『EUREKA ユリイカ』『Helpless』『サッド・ヴァケーション』と北九州サーガ3部作を撮り、北九州の街を舞台に濃厚な血と暴力の物語を映し出した。 『EUREKA ユリイカ』はカンヌ国際映画祭にて国際批評家連盟賞とエキュメニック賞をダブル受賞、『東京公園』ではロカルノ国際映画祭金豹賞(グランプリ)審査員特別賞を受賞した。

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