OKStars インタビュー

Vol.352 映画監督

ライアン・クーグラー

OKStars Vol.352は、2014年3月21日公開の全米で大きな波紋を起こした事件の映画化作品『フルートベール駅で』のライアン・クーグラー監督へのインタビューをお送りします。

一人の青年の死が悲しく、生命の重さを考えさせられる内容でした。

まさにそういう映画にしたいと思いました。主人公オスカーの中に自分を見つけて共感してもらうこと、そして生命の重さを考えてもらうこと。そういう共感や思いやりを感じることがこういう事件を減らすきっかけになると僕は思っているからです。

主人公のオスカーが過去の過ちから立ち直ろうとしている姿が描かれましたが、オスカーを描く上で注意したことは何でしょう?

実在の人物なので、リサーチしてそのまま取り入れましたが、一番意識したのは若さです。オスカーを描く上で重要なポイントだと思いました。亡くなった時、彼は22歳でした。22歳という時期はすごく成長する年頃ですよね。彼には娘や家族がいて、1年間服役していたのでその間は家族を支えることができませんでした。実は話を聞くと彼はいろんな面を持っていたそうです。ちょっとキレやすい面があったり、柔和なところもある。もし大晦日を友人と過ごしていたらもっと前者の面が出ていたと思います。娘や彼女、母親と過ごしていたので優しい部分が出ていたと思います。大晦日は先のことを考える1日なので、彼が未来をどう考えていたのかをきちんと描きたいと思いました。

長編映画の初監督とのことでしたが、キャストの方々をどう演出していきましたか?

演出は監督業の一番楽しいところです。役者は面白い生き物ですよね。他人になりきれること自体が興味深いです。そして今回は皆人柄がとても良い方たちばかりでした。自己中心的な人はいなくて作品を尊重してくれていて、しかもプロフェッショナルで努力家ばかりでした。僕は初監督ということで、経験は彼らの方があるので、頼ってしまう部分もあったし、オープンな形で皆で一緒に作業ができて楽しかったです。

地下鉄の問題のシーンで、携帯電話で事件を撮影している人たちがいたからこそ、この事件が明るみに出ましたが、監督自身はこの事件を知った時はどのように感じましたか?

僕の両親は思いやりのある人物で、僕もそういうタイプに育ってきました。ですので、動画サイトにアップされたものを観た時には涙を流したし、数日間はショックを受けたままでした。悲しみと怒り、そして何よりずっと感じ続けていたのは無力感でした。オスカーの生前のことは知りませんでしたが、自分と同じ年齢で出身地も近く、彼の友人も自分の友人も似たり寄ったりで、自分もあのような状況に巻き込まれそうになったこともあります。あの場にいたら同じようなことになっていたかもしれないので、他人事とは思えませんでした。僕の周囲でもフラストレーションや怒りの気持ちから抗議行動を起こす人たちがいました。僕も何か行動をしたいと思いましたが、署名活動に参加しても、オスカーが帰って来ることは叶わないと分かっていたので、未来のために何ができるかを考えました。そして僕には映画という他の方がなかなか持てない声を上げる手段があったので、自分にとってそれが、この作品を作る一番のモチベーションとなりました。

着想から公開までに一番苦労したことは?

若い監督たちによく言うことですが、映画作りはとにかくスタミナが重要です。映画学校で短編を手がけた時は金曜日から長くて日曜日までの3日間くらいの撮影でした。それがこういう作品になると毎日撮影が1ヶ月間続くようになります。これが強烈で、誰にもそのことを言われなかったから、何も考えずに撮影に入ってしまい、2週間後には身体が悲鳴をあげていました。自分の睡眠時間や食事の時間を削って製作に邁進していたからですが、これから初めて長編映画を撮る若い監督には映画作りはマラソンで、ペース配分が大事だと伝えたいです。

本作を作る前後で、監督としての気持ちの変化は何かありましたか?

僕自身としてはいろんな所に行くことができて経験値が増しています。それと以前だったら自分で電話をかけて企画を売り込んでも素気無くされたところを、今ではそういう話をする機会をもらえるようにもなりました。ただ、映画作家としての自分にはどんな変化があったのかはまだ分からないです。実は新作の脚本を書いてはいますが、以前よりも腕は上がっていると思いたいけれど、まだ誰も読んでいないので分からないし、たぶん以前よりも落ち着いて演出できるとは思うけど2本目の現場にも入っていないのでそれもまだ分からないですね。

本作は批評家からも観客からも高い評価を得られましたが、どの部分が成功したと思いますか?

成功の理由は僕にも分かりません(笑)。これは想像ですが、オスカーのキャラクターだと思います。カリスマ性がある人物だったし、彼には観客を惹きつける何かがあったのだと思います。

本作を観て、米国内にまだまだ人種差別が残っていると感じました。日本の観客にとっての見どころをお聞かせください。

他の国の人であっても、オスカーに共感してもらいたいし、彼の住んだコミュニティに自分のコミュニティを重ねて感じてもらいたいです。僕にとっても舞台のベイエリアは故郷なので、真に迫った表現になっていればいいなと思っています。ぜひ外国の方からオスカーや彼がいたコミュニティへの共感を聞くことができたら嬉しいです。

監督が映画作りを目指したきっかけは?

大学で化学か医学に進もうと思っていたところ、大学1年生の時に書いた文章を先生が見て「君は映画の脚本を書くべきだ」と言われて、それで書いてみたら、自分にも合点がいきました。もともと映画は好きでしたが、映画の道を進もうと決めてからあらためて映画を観ると、スクリーンの中で行ったこともない場所で会ったこともない人に会えて、観終わった時にはあたかも何事かを見知っているようになれる、その橋渡しを作品がしてくれることに気づきました。自分もそういうキャラクターとストーリーで橋渡しができたらと思ったのがきっかけです。

映画作りのモットーをお聞かせください。

常に描かれているキャラクターたちに親密な気持ちにさせられることと、普段だったらあまり描かれることがないようなキャラクターと身近に感じてもらえる物語を心がけていますし、これからも綴っていきたいと思います。

次回作を準備中とのことですが、明かせる範囲のお話を聞かせてください。

次回は実在の人物の話ではないですが、「ロッキー」的な、ある意味実在していてもおかしくないようなキャラクターの物語です。簡単に言えばボクサーものです。実は来日する飛行機の中でも脚本を書いていました。

ライアン・クーグラー監督からOKWaveユーザーに質問!

あなたが好きな黒澤明監督の映画は何ですか?
そして、どの監督にどの作品をリメイクしてほしいと思いますか?

Information

『フルートベール駅で』
2014年3月21日(金・祝)新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開

その日は母の誕生日。
娘と遊び、家族と少しケンカをし、友人と笑いあった。
僕の人生、最後の日だった。

オスカー・グラント 享年22歳。
2009年元旦に3才の娘を残し、無抵抗なまま警官により射殺される

2009年元旦。新しい年を迎え歓喜に沸く人々でごった返すサンフランシスコ「フルートベール」駅のホームで、22歳の黒人青年が警官に銃で撃たれ死亡した。丸腰の彼は、3才の娘を残しなぜこのような悲惨な死を迎えることになったのか。全米で抗議集会が行われるなど、大きな波紋を巻き起こした実在の事件を映画化した本作は、彼が事件に巻き込まれる前の“人生最後の日”を描いている。そこには、決してニュースを見ているだけではわからない、一人の人間の非業の死がいかに悲しく、周囲の人を傷つけるか、そして、ただ一人の人間の命がいかに重く尊いものなのかを描き出し、観る者の心に訴えかける。

出演:マイケル・B・ジョーダン (『クロニクル』)/オクタヴィア・スペンサー (『ヘルプ~心がつなぐストーリー~』)

監督:ライアン・クーグラー
製作:フォレスト・ウィテカー
配給:クロックワークス

公式サイト:http://fruitvale-movie.com

©2013 OG Project, LLC. All Rights Reserved.

Profile

ライアン・クーグラー

1986年5月23日カリフォルニア州生まれ。 南カリフォルニア大学で映画&TV製作の修士号を取得。2011年に、娘の安全のために闘う若い娼婦を追った短編の学生映画『FIG』が、ディレクターズ・ギルド・オブ・アメリカの学生映像作家賞と2011年度アメリカン・ブラック映画祭のHBO短編映像作家賞を受賞、作品はHBOで放映された。2012年『フルートベール駅で』の脚本がサンダンス・インスティテュート・スクリーンライターズ・ラボに選出された。そして本作は2013年サンダンス映画祭にて「作品賞」と「観客賞」のW受賞という快挙を成し遂げ、カンヌ国際映画祭でも“ある視点部門フューチャーアワード”受賞した。
現在もベイエリアに住んでおり、映画製作に加えて、サンフランシスコの少年鑑別所でカウンセラーを務めている。

OK LABEL

回答投稿にあたっての注意とお願い

OKStarsからの質問は、OKWave事務局(ID:10q-OK)が質問投稿とベストアンサー選定を代行しています。
当企画は、OKWaveの他のカテゴリーと異なる主旨での運営となっています。原則的に回答への個別のお礼はつきません。あらかじめご了承ください。
ご回答の際には利用規約禁止事項ガイドラインに沿った投稿をお願いいたします。