OKStars インタビュー

Vol.391 特別企画

「三大映画祭週間2014」

OKStars Vol.391は特別企画として、「三大映画祭週間2014」開催を記念し、各国大使館等の方からの作品解説や映画産業についてのインタビューをお送りします。

■上映作品『ロンドン・リバー』
ユニフランス・フィルムズ東京支局長 手束紀子さん

上映作品について、母国の社会や文化との接点や関連性などの観点から作品のご紹介をお願いします。

『ロンドン・リバー』はフランス映画といっても、イギリスの首都、ロンドンを舞台にした物語です。2005年、ロンドン・オリンピックが決定し、市民が興奮に包まれた翌日に起きたロンドン市内の同時爆破事件は、フランスにも大きな衝撃を与えました。実は私も当時フランスに住んでいて、2012年のオリンピックの最終候補地にはパリも残っており、イギリスとフランスは歴史的にもライバル意識が強く、オリンピック開催地の決定を伝える報道やそれをとりまくある種のお祭り騒ぎを体感していたので、翌日この事件の発生を知り、言葉を失いました。
この作品では、イギリスのガーンジー島に住み、農業を営んでいるクリスチャンの女性エリザベスが、事件発生後に連絡のとれなくなった娘を心配し、大都会ロンドンへ彼女を捜しにやってきます。そこで自分の娘がアラビア語を学習していたこと、同様に事件以来行方不明となっているイスラム教徒の青年と付き合いのあったことなどを知るのですが、受け入れることが出来ません。
その青年の父親だという、フランスからやって来たソティギ・クヤテ演じるオスマンと出会い、当初は協力してこども達を探そうと言うアフリカ出身のオスマンに心を許す事がどうしても出来ないのですが、次第にお互いの文化的・社会的背景を乗り越え、励まし合うようになります。
フランス人にとっても、ロンドンの事件は他人事ではなかったはずです。各地のテロ事件の報道を繰り返し目にするなかで、潜在的なイスラム教徒、「自分と違う人々」への恐怖というものを抱えている人も多いのではないでしょうか。エリザベスが最初に見せるオスマンへの激しい拒否感は、エリザベスが移民の殆どいない田舎の女性という設定により余計に際立たせていますが、自ら決心して歩み寄ろうとしたわけでもなく、娘を捜し、彼と接して行く中で、拒否感を乗り越えて行く姿は、痛ましい事件の中にあって一筋の光のようです。そんな光を残してくれる映画です。

国際映画賞で評価されたところ(ベルリン国際映画祭2009 コンペティション部門出品 男優賞受賞)は何だと考察されていますか。

ロンドンの同時爆破事件を衝撃的に描くのではなく、人と人のドラマとして描き、そこに一筋の光が残るところ、それから何よりもオスマンを演じたソティギ・クヤテの存在感ではないでしょうか。エリザベスを演じたブレンダ・ブレッシンも「彼の持つ魔力が私にも少しはうつっているといいのだけど!」「彼には真の内的な強さがある」と絶賛しています。

母国での国産映画を取り巻く環境や業界動向、作り手や観客のトレンドなどをお聞かせください。

近年では伝記映画や実在の人物を取り上げた作品が多く制作されているように思います。イヴ・サンローランは違う監督により2作品制作されています。ドミニク・ストロス=カーン元IMF専務理事、作家ミシェル・ウエルベック、歌手のクロード・フランソワ、セルジュ・ゲンズブール、カミーユ・クローデルなど、取り上げられる人も様々です。また、ここ3~4年、新しい世代の実力派の監督たちが台頭してきています。“新しいヌーヴェル・ヴァーグ”と呼ばれるのはセバスチャン・ベベデール(『2つの秋、3つの冬』)、ギヨーム・ブラック(『女っ気なし』)、カテル・キレヴェレ(『聖少女アンナ』、『スザンヌ』)、レベッカ・ズロトヴスキ(『美しき棘』)など。彼らの作品は本国でも若い観客に支持されています。

上映作品『ロンドン・リバー』の見どころをお聞かせください。

繰り返しになりますが、エリザベスが、髪や肌の色、育った国、宗教の異なるオスマンに次第に心を開くようになっていく様子、それからオスマンがフランスへと帰る前にマリの歌を歌うシーンです。
クヤテはマリのマンディンカ族のグリオ(西アフリカの語り部、音楽家)の家に生まれ、このシーンでは歌手だったクヤテの母親がずっとクヤテに歌っていた歌を即興で歌ったそうです。この作品は2010年にこの世を去ったクヤテの最後の出演作となりますが、その静かなたたずまいに心を奪われます。ちなみに歌詞は「人生で自らの運命を知っている者はいない。人生とはそういうもの。私にそれ<運命>がなかったとも言えるが、だからといって君がそれを手にしないというわけではない。未来に何が起きるか知っている者などいない。だからこの時間、この瞬間を生きなさい。」というような内容とのことです。

OKWaveユーザーに質問!

「フランス映画」にどのような印象をお持ちでしょうか?
特に、「最近の」フランス映画に対して
お持ちのイメージや感想があれば教えてください。

■上映作品『フットノート』『フィル・ザ・ヴォイド』
イスラエル大使館 文化・科学担当 ニル・タークさん

上映作品について、母国の社会や文化との接点や関連性などの観点から作品のご紹介をお願いします。

両作品は共に「書かれた言葉」と「話された言葉」の裏に潜む精神性と関連があります。言葉は運命を決定し、人に自己犠牲の行為としての喪失を通じて救済を見出すところまで到達させます。
『フットノート』は皮肉に満ち滑稽な、イスラエル賞の背景となる学者の世界と官僚主義の物語です。と同時に、父子の関係と家族間の緊迫を描く示唆に富んだドラマです。
『フィル・ザ・ヴォイド』は閉塞的で自己保存しているユダヤの典型的社会を、敬意を持って、覗き見るように描きます。監督の女性は世俗的ですが、その地域に親しむようになりました。物語は、結婚のマッチメイキングや家族間のモラル、典型的社会での女性の役割、そして、その社会でのラビの持つ力を描いています。
どちらの映画もユダヤ人の伝統に繋がる2つの異なる社会に光を当てます。それは、大部分のイスラエル社会でもあまり知られていないことです。

国際映画賞で評価されたところは何だと考察されていますか。

※『フットノート』カンヌ国際映画祭2011 コンペティション部門出品 脚本賞受賞
※『フィル・ザ・ヴォイド』ヴェネツィア国際映画祭2012 コンペティション部門出品 優秀女優賞受賞

『フットノート』のシナリオは素晴らしいものです。風刺的な雰囲気を作り上げつつ、同時にパワフルなドラマを展開します。このバランスが映画を特別なものにしています。
『フィル・ザ・ヴォイド』には良質なドラマの要素が備わっています。家族間の秘密、タブー、TVシリーズの映画的スタイル、そして、知られざる世界への窓口となります。個性的な照明方法で撮影され、よくある商業的ヒット作の陥りやすい罠から逃れています。

母国での国産映画を取り巻く環境や業界動向、作り手や観客のトレンドなどをお聞かせください。

過去20年間、イスラエル映画は次に述べるような理由で頭角を現してきました。中東で唯一の民主国家としての独特な精神と創造性、良好な国家ファンドの仕組み、TV局と映画界の共同製作、地域独自の映画学校の増加、すでに存在する学校への高評価、国際共同政策協定による他国との共同プロモーションなどです。

上映作品の見どころをお聞かせください。

両作品の魅力はユダヤ社会の伝統に基づく特殊な問題を扱いながら、普遍的な物語を最優先に描いたことです。また、それぞれのシナリオは洗練されていると思います。

OKWaveユーザーに質問!

イスラエルはとてもオープンで直接的な社会で、
良くも悪くもプライバシーの壁は度々、ずかずかと踏み越えられます。
イスラエルは、その欠陥も含めて世界に向けて
自らを語りたいという衝動に駆られているのです。
日本について言えば、特別な状況で時々全く逆の態度を目にします。
私は、日本に住む外国人として、『空気を読む』という技をもっとよく学んで、
とてもよく保たれている日本社会の秘密を発見したいと思っています。
たぶん、日本映画を見ようとするより、翻訳された本を読む方がいいのでしょうね。
でも、本を読むのはサボってばかりで…日本の皆さんに伺いたいのですが、
私の考えについて、何か良いご指摘があればお願いします。

■『サムソンとデリラ』
オーストラリア大使館 参事官(広報文化担当)アレクサンドラ・シダルさん

上映作品について、母国の社会や文化との接点や関連性などの観点から作品のご紹介をお願いします。

映画『サムソンとデリラ』は、オーストラリア中央部のアリス・スプリングで育った、自身の体験を基にしています。風景は美しいものの、生きるのには苛酷な環境であり、オーストラリア中央部には歴史とも絡んで、多くの社会問題が日常的に存在しています。ソーントン監督の視点は、この地域に暮らす子どもたちと、彼らが直面する現実に注がれており、映画はこうした美しい子どもたちと、彼らのたくましい生き方に対する賛辞となっています。

国際映画賞で評価されたところ(カンヌ国際映画祭2009 カメラドール賞(新人監督賞)受賞)は何だと考察されていますか。

この映画が異色の愛の物語を美しく描いている点と、見終わった後に考えさせるテーマを含んでいる点だと私は思います。

母国での国産映画を取り巻く環境や業界動向、作り手や観客のトレンドなどをお聞かせください。

オーストラリア国内には、世界的に活躍するフィルムメーカーが多数います。また、豊かで多様なオーストラリア文化を反映し、ユニークな味わいの映画も生み出されています。シドニーで開催される世界最大の短編映画祭「TROPFEST」は有名で、毎年15万人の観客を集めています。日本でも、今年の5月に「TROPFEST IN JAPAN」(※)と題したイベントで、本国での過去の上映作品から選りすぐられたものが、横浜で一挙上映されました。今後も日本で「TROPFEST」が引き続き開催され、オーストラリア映画の素晴らしさをご理解頂けるよう願っています。

※「TROPFEST IN JAPAN

上映作品『サムソンとデリラ』の見どころをお聞かせください。

この映画には、普段見ることのない世界が展開されています。これは大半のオーストラリア人にとっても同様であり、オーストラリア中央部地域の現実に触れられる、またとない機会です。 非常に美しい、しかし非常に過酷な状況が描かれています。

OKWaveユーザーに質問!

『サムソンとデリラ』は真のラブ・ストーリーです。
日本の皆様は、どう愛を表現するか伺ってみたいです。

『三大映画祭週間2014』鑑賞ガイド by OKGuide

http://okguide.okwave.jp/guides/73607

Information

『三大映画祭週間2014』
2014年8月16日(土)~9月5日(金)の限定3週間ロードショー

カンヌ映画祭、ベルリン映画祭、ヴェネツィア映画祭と、世界最高峰の映画祭(三大映画祭)から選びぬかれた日本未公開の選りすぐりの映画を集め一挙公開する『三大映画祭週間』。2011年、2012年と2年連続開催された本企画は、多くの映画ファンが未知なる世界を求め劇場に足を運び、大好評のうちに終了。そして、第3弾を熱望する声に答え、ついに『三大映画祭週間2014』の開催が決定!

ヒューマントラストシネマ渋谷
http://www.ttcg.jp/human_shibuya/

※シネ・リーブル梅田ほか全国順次公開

公式HP:www.sandaifestival.jp

配給:熱帯美術館


『ロンドン・リバー』:©ARTE France - 3B PRODUCTIONS ? The Bureau- Tassili films – 2009

『フットノート』:©2011 All Rights Reserved Footnote Partnership

『フィル・ザ・ヴォイド』:The Copyright notice for FILL THE VOID is:©NORMA PRODUCTIONS LTD 2012

『サムソンとデリラ』:©2009 Screen Australia, New South Wales Film and Television Office, Scarlett Pictures Pty Ltd, Warwick Thornton & CAAMA Productions Pty Ltd.

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