OKStars インタビュー

Vol.403 映画監督

オリヴィエ・ダアン

OKStars Vol.403は2014年10月18日公開の『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』のオリヴィエ・ダアン監督へのインタビューを送りします。

グレース・ケリーを取り上げたきっかけは何だったのでしょう。

最初にプロデューサーがシナリオを携えて声をかけて来た時は、プリンセスというものに対してあまり興味がありませんでした。それがシナリオを読んだところ、このシナリオだったら自分が語りたいことを語れるのではと思いました。それはプリンセスとしてではなく、ひとりの人間、ひとりのアーティストとしてのグレース・ケリーを描けるのではないかと思ったからです。それで、テーマを少し変えて、女優という自分のアートを断念せざるをえなかった人の人生を描こうとしました。それは僕が以前に撮った『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』のアーティストとは真逆のものでした。

西欧政治史や宮廷の陰謀のようなものを興味深く観ましたが、その点についてはいかがでしょう。

今回はひとりの女性の肖像画を描こうと考えていました。その中で、いかにそれが完璧なものにできるのかは、この政治を扱うエピソードが重要でした。ひとりの女性にとって政治問題というものはちょっと自分の手に余るものだと思います。政治の渦中にあって自分自身でいられるというのは誰にだって難しいものです。それで、グレース・ケリーが自分自身でいられるかどうかを描けば、今回のテーマが描けるのではと思いました。政治そのものを描きたかったわけではないのです。

グレース・ケリー役にニコール・キッドマンを起用したねらいは?

最初はL.A.で米国の女優さん20人くらいとお会いしましたけど、その時にはニコール・キッドマンのことは思い浮かびませんでした。パリに一度戻ってから、ニコールからオーディションをしてほしいと連絡があり、スカイプで2時間ほど話しました。話しているうちに彼女がいいのでは、という気持ちになってきたので、もう一度L.A.に行って会うことにし、3、4回話して彼女に決めました。ニコールは彼女自身、グレース・ケリーが経験したことととても近い経験をしていると話していました。それはあのとても有名な俳優との結婚生活のことで(笑)、それならばグレース・ケリーを演じきれるのではないかと思いました。おそらく彼女もその時に孤独を感じる時があったのでしょうね。

また、ニコール・キッドマンはこの役柄にプレッシャーを感じたりしていたでしょうか。

彼女はプレッシャーというよりも、この役柄を演じることへのモチベーションがとても高かったです。僕自身は、ニコール・キッドマンのファンでもあり、素晴らしい女優だと思っていました。

グレース・ケリーが思い悩みながらも、最後には強い決意を示すところが現代的な女性にも見えました。そこはグレース・ケリーのキャラクターでしょうか。それとも監督の思いが反映されているのでしょうか。

グレース・ケリーの性格の中には今に通じる現代性がありましたので僕自身もそれを全面に出したところはあります。今回の映画は伝記映画を作る意図はありませんでした。ひとりの女性が、女性として生きるために戦う姿を描きたかったからです。当時は今と比べて女性は解放されていたとは言えませんし、その中でいかに女性として夫を立てたり、子どもを育てながら、自分の道を切り開いていくか、という難しさを描きたいと思いました。

衣装へのこだわりをお聞かせください。

衣装にはとてもこだわりがありました。グレース・ケリーが実際に身につけていたものからインスパイアされたものもありますし、グレース・ケリーがヒッチコックの作品で身につけていた衣装からもインスパイアされましたので、その2つをミックスしました。

監督はモナコという国をどう捉えていますか。

僕は南仏の生まれ育ちなので地理的には近くですけど、あまりイメージはなかったですね。国というよりは大きな銀行のようなところなので、こう言っては何ですが、そういう場所にグレース・ケリーは“罠にかかって”しまったのかなと。プリンセスの生活、というイメージがあったと思いますが、実際にはショーウインドウの飾り物のような生活を要求されてしまったところがあるんじゃないかなと思います。だから、グレース・ケリー本人はモナコにいて、必ずしも幸せだったわけではないという話も聞いています。

劇中で使われるエリック・サティの音楽についてお聞かせください。

音楽に関してはとても時間がかかりました。最初はヒッチコックみたいにしようかとも思いましたが、壮大なものよりは人物の内面を表現するものがいいと思って、エリック・サティの「ジムノペディ」を選びました。あのメランコリックなメロディは、グレース・ケリーの当時の孤独な気持ちを表しているような気がします。

同様に、マリア・カラスの歌うシーンについてお聞かせください。

重要なシーンです。とくにマリア・カラスが歌うということに意味がありました。彼女はアーティストとしてとことん突き詰めるために戦い続けて、決してあきらめない人物でした。一方で、グレース・ケリーは女優のキャリアを捨てなければならないということで対照的です。マリア・カラスは自分の才能を開花させることに成功しましたので、そういう意味でグレース・ケリーとは鏡のような関係ですし、彼女がそうなりたかった人物なので、あの場面ではグレースがマリアを見ているカットも入れています。

監督はグレース・ケリーの魅力をどうお考えでしょう。

彼女自身は11本くらいしか出演していないですし、オスカーを獲って一番輝いている翌年には引退しているので、女優としての資質を評価するにはあまりにも短いキャリアです。ヒッチコックは彼女の感情の表現に惹かれていたんだと思います。今回、僕はグレース・ケリーという女性の内面に興味がありましたので、伝記映画というよりも彼女が本当にやりたかったこと、女優という人生を諦めなければならなかった女性の人生を描きたいと思いました。

夫婦の関係の描き方についてお聞かせください。

彼女の夫婦仲がうまくいっていないということを描くことも必要でした。この夫婦はうまくコミュニケーションがとれていないんですね。レーニエ3世は政治に目が向いていて、結婚6年目の彼女は孤立していました。戸棚の中に閉じ込められているような中で、ヒッチコックの誘いを受けて、もう一度女優として自分を確立したいという思いと、家庭の両立をしたいという思いももちろん持っていました。その大変さは、現代の女性が抱えているものと同じだと思います。

次回作等の監督の今後の計画をお聞かせください。

いま2つほど企画があって、僕自身がシナリオを書いています。いまフランスでベストセラーの小説が原作で、戦時中の話で子ども2人が主人公です。非常に叙事詩的でもありシュルレアリスムなところもある作品になると思います。

オリヴィア・ダアン監督から質問!

映画は誕生してから100年以上経つと思いますが、なぜ今も皆さんは映画館に行くのでしょう?皆さんが映画館に行く理由をお聞かせください。

Information

2014年度カンヌ国際映画祭オープニング作品
『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』

10月18日(土)TOHOシネマズ有楽座ほか全国ロードショー

グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札 遠くアメリカから独り異国へやって来たグレースは、完全に孤立していた。夫のレーニエは公の場でのグレースの発言に神経をとがらせ、激しく叱責する。側近も何かと反抗的で信用できないし、共に赤十字を運営する伯爵夫人からもよそ者扱いされる。ヒッチコックが変わらぬ友情を示すが、内密のはずのハリウッド復帰が漏れる。オペラ歌手のマリア・カラスは親友だが、自分の利益しか考えない大富豪のオナシスの愛人だ。唯一の頼りだった相談役のタッカー神父はアメリカへ帰ってしまう。いったいグレースは、誰を信じればいいのか?

監督:オリヴィエ・ダアン(『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』)
出演:ニコール・キッドマン(『めぐりあう時間たち』『ムーラン・ルージュ』)/ティム・ロス(『海の上のピアニスト』『パルプ・フィクション』)/フランク・ランジェラ(『ドラキュラ』『フロスト/ニクソン』)/パス・ベガ(『トーク・トゥ・ハー』『カルメン』)

配給:ギャガ

公式サイト:http://grace-of-monaco.gaga.ne.jp/

© 2014 STONE ANGELS SAS.

Profile

オリヴィエ・ダアン

オリヴィエ・ダアン
1967年、フランス、ブーシュ=デュ=ローヌ生まれ。
美術学校で絵画を学び、卒業後は個展を開く。数多くの映像作品を手がけた後、1998年に長編映画監督デビュー。2004年、ジャン・レノ主演の『クリムゾン・リバー2 黙示録の天使たち』の監督に抜擢される。その後、伝説のシャンソン歌手の生涯を描いた『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』(07)が絶賛され、主演のマリオン・コディヤールをアカデミー賞とゴールデン・グローブ賞に導き、自身もセザール賞にノミネートされたことで、その才能を世界に認められる。

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