OKStars インタビュー

Vol.416 女優

アンジェリ・バヤニ

OKStars Vol.416は、フィリピンの女優アンジェリ・バヤニさんへのインタビュー!東京フィルメックス観客賞をはじめ世界の映画賞を席巻し、12月13日公開される出演作『イロイロ ぬくもりの記憶』、そして第15回東京フィルメックス・コンペティションで最優秀作品賞受賞の主演作『クロコダイル』についてお聞きしました。

『イロイロ ぬくもりの記憶』について、台本の印象などお聞かせください。

台本を最初に読んだ時は、フィリピン人にとっては海外出稼ぎの家政婦という存在は、もちろん簡単な役だとは思いませんでしたが、馴染みやすい題材だと思いました。このストーリーは90年代の設定というところに惹かれました。アンソニー・チェン監督は準備に十分な時間を与えてくれて、実際にシンガポールで出稼ぎの家政婦の経験のあるフィリピン人女性に会う機会も得られ、知らなかったことを学ぶことができました。

ジャールー役のコー・ジャールーくんとはどのように関係をつくっていきましたか。

ジャールーくんはやんちゃで人の話を全然聞かない子なんです(笑)。子役としての訓練を受けてきたわけではないので、そういう下地や配慮もないので、やんちゃをして常にスタッフに注意を受けていました。私は映画の中では彼の乳母のような存在ですけど、撮影当初はカメラが回っていない時にはジャールーくんとはあまり接しないようにしていました。でも彼は私と遊びたがっているようでしたね(笑)。ある時に、相変わらず彼が遊んでいて、私と一緒に呼ばれたのに動こうとしないので、つい怒鳴ってしまったんです。そうしたら周りが驚くほど素直に言うことを聞いて、それがきっかけでふたりの距離が近くなりました。私自身は何で怒鳴ってしまったんだろうと自己嫌悪に陥ったのですが…(苦笑)。でもそれがあって、役者同士というよりも、ジャールーくんと私との年齢に見合った関係が築けたと思います。その後は、一緒に遊んで一緒に叱られましたけど(笑)、子どもにとって、遊んであげることが大事なんだと気づかされました。彼は現場で遊び相手がいなくて孤独を感じていて、私しか共有できる相手がいないと思っていたのかもしれません。そんなことがあって、私は役柄以上にジャールーくんの家政婦役になれたと感じました。画面上でテレサとジャールーの関係がうまく出せていたとしたら、そういったことがあったからだと思います。

ジャールーの両親役のヤオ・ヤンヤンさんやチェン・ティエンウェンさんとはどんな話をしましたか。

母親役のヤオ・ヤンヤンさんとは、シンガポールの主婦像やフィリピンの出稼ぎ家政婦像といった役柄の背景の情報交換はしましたが、役柄そのものの話はあまりしませんでした。でも彼女は優れた役者なので、私が演じやすいようにしてくれました。父親役のチェン・ティエンウェンさんはあまり英語を話せないので、あまり会話ができなかったのですが、それが逆に役柄上での父親とテレサのぎこちない関係性と似ていて、あまり親しくなりすぎないのが功を奏したかもしれません。この映画ではジャールー一家のマンションの一室で撮影をずっとしていたので、本当に家族になったような気分でした。

では続いて、『クロコダイル』出演について感じたことをお聞かせください。

フランシス・セイビヤー・パション監督からオーディションのオファーをいただいた際に、実際にこの娘さんを亡くされたお母さんであるディヴィナさんのインタビューの書き起こしも送ってくれました。娘さんを亡くされた悲しみとその後の苦労をひしひしと感じて怖気づいた部分と、この役柄を演じたいという両方の感情が芽生えました。

撮影の様子はいかがだったのでしょう。役者は3人だけで、他は現地の方だったそうですが。

撮影の前に3日間、ディヴィナさんのご家族と過ごす機会はありましたが、撮影になると別物で、やはり大変でした。そして、川での撮影ということで、あれだけ水があるのに、飲み水はないんです!水道も電気もない環境でした。監督は毎日、日の出を撮りたいと言うのですが、あの川の現場に行くのに2時間かかるんです。なので、毎朝3時に起きていました。そして、電気がないということは、夜は真っ暗なので、日が沈む前に撮影を終えて帰らなければなりませんが、ワニがお腹がすくのも夕暮れ時なので、そこでモタモタすると大変なことになるんです。そういったことを考えながらの撮影でしたし、地元の方あっての撮影なので、こちらの計画通りに、というのはなかなか難しかったです。皆さん警戒心を最初は持っていましたし、何かを提案して受け入れられる前に、儀式のような承認をとらなければならないので、10日間で撮るなんていう計画は全く無理でした。さらに、あの地域の方言は難解で意思疎通が大変でした。でも、私が演じたディヴィナさんとは、ある時から通訳の方がいなくても通じ合えるようになりました。長く一緒に過ごしたから、とも言えますが、迷信的な言い方をすれば、何かが降りてきたのかもしれません(笑)。というのも、あまりにも超自然的なことが起きすぎて、そう思わざるをえない状況だったからです。あれだけ文明から離れた僻地にいると、キリスト教は入っているものの土着的な信仰が根強く残っているので、そういうものを無視できないんです。あの場では普段の考えは一旦置いて、あの場の皆さんの考えと波長を合わせないと信頼を得ることもできないと思いました。そういったことが大事な撮影でした。

『クロコダイル』はどんなところに注目して観たらいいでしょう。

私があの湿地帯で感じたことは、自然というものは大きな存在で、私たちは自然に対して無力だということです。ディヴィナさんは、娘さんがワニに襲われたことも意味があるのではとも考えたそうです。ディヴィナさんが行き着いたのは、「陸にもワニがいる」と人を責めることはできるけど、相手がワニではどうしようもないということでした。映画の中で、祈祷師が出てきて「お供えが足りなかったからワニが未来のある子をさらって行った」と信託を言うシーンを初日に撮影したのですが、あの祈祷師も役者ではなく祈祷師自身で、儀式も本物なのですごく奇妙な光景で、あの場に何かが降りてきたと思わざるを得なかったです。初日からそんな雰囲気でしたので、そんな空気感が映画全体に見られると思います。

アンジェリ・バヤニさんからOKWaveユーザーに質問!

私も以前は質問することもあったのですが、ある時から、女優はあるがままを受け入れるしかないという境地になりつつあります。アドリブをする時は質問をしてはいけない、という演技の方法論もあります。解せないことでも受け入れて進んでみるとそれが成長につながることもあるんです。

それで皆さんに質問ですが、私は以前に日本に訪れた際に京都を訪問する機会がありました。古い建物がたくさん残っていることに感銘と羨ましさを感じました。フィリピンでは過去を残さず、消し去ろうとするところがあるし、古い建物も残そうとしません。日本ではなぜそういう古いものを維持できるのか、何がそうさせるのかを知りたいです。

イロイロ ぬくもりの記憶
Information

『イロイロ ぬくもりの記憶』

2014年12月13日(土)よりK's Cinemaほか全国順次公開

1997年のシンガポール。共働きで多忙な両親をもつ一人っ子のジャールーは、わがままな振る舞いが多く、小学校でも問題ばかり起こして周囲の人々を困らせていた。手を焼いた母親の決断で、フィリピン人メイドのテレサが住み込みで家にやって来る。突然の部外者に、なかなか心を開かないジャールーだったが、仕送り先にいる息子への想いを抑えつつ必死で働くテレサに、いつしか自分の抱える孤独と同じものを感じて心を開いていく。だが、そんな折、父親がアジア通貨危機による不況で会社をリストラされてしまう。また、メイドに打ち解けた息子に安心していたはずの母親の心にも、嫉妬にも似た感情が芽生えはじめる。そして、テレサは自国に残した実の子への想いが募り…。

監督の幼少時代を題材に、小さな家族を描きながら、家族の問題・少年の成長・資本主義社会への疑問・移民や階層の問題といった、文化や国境を越えた普遍的な価値観をちりばめ、世界中の映画祭で絶賛された。

監督:アンソニー・チェン
出演:ヤオ・ヤンヤン、チェン・ティエンウェン、アンジェリ・バヤニ、コー・ジャールー
配給:日活/PLAYTIME

公式サイト:http://iloilo-movie.com/

© 2013 SINGAPORE FILM COMMISSION, NP ENTERPRISE (S) PTE LTD, FISHEYE PICTURES PTE LTD

『クロコダイル』

第15回東京フィルメックス・コンペティション 最優秀作品賞受賞

娘のロウィナの12回目の誕生日を祝おうとしていたディヴィナはショッキングな知らせを受け取る。ロウィナがワニに襲われたのだ。ディヴィナは行方不明になったままのロウィナの遺体を探すために湿地帯を彷徨う。フランシス・セイビヤー・パションの監督第3作は、娘の遺体を探す母親の姿を通し、フィリピン南部、南アグサンの湿地帯に暮らす人々の生活とその直面する問題点を描き出す。湿地帯を行き来する舟をとらえたカメラワークが素晴らしい。本作はフィリピン若手監督の登竜門であるシネマラヤ映画祭で最優秀作品賞を始めとする4賞を受賞した。

監督・脚本:フランシス・セイビヤー・パション
主演:アンジェリ・バヤニ

Profile

アンジェリ・バヤニ

アンジェリ・バヤニ
(ANGELI BAYANI)

2002年、フィリピン国立劇場付属劇団であるTanghalang Pilipinoのメンバーとして演劇活動を開始。国際的には、フィリピン人映画作家であるラヴ・ディアス作品で知られる。初めての出演となったディアス作品は、第64回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門でスペシャルメンションを受賞した上映時間が9時間半にも及ぶ『エンカントスの地の死(原題:Kagadanan Sa Banwaan Ning Mga Engkanto)』(07)だった。2008年、ディアス作品出演2作目となった『メランコリア(原題:Melancholia)』でシネマニラ国際映画祭の国際部門最優秀女優賞を受賞した。この8時間の大作は、第65回ヴェネチア国際映画祭でオリゾンティ部門最高賞を獲得している。2010年、アントン・チェーホフの「三人姉妹」を基にした「Tatlong Mariya」でモネット(イリーナ)を演じ、Gawad Buhay賞で主演女優賞を獲得した。また、Gawad Tanglaw賞では映画『Presa』(10)の共演者たちとともに最優秀女優賞(アンサンブル)を受賞した。また、デンマークの巨匠で詩人でもあるヨルゲン・レス監督の映画『The Erotic Man』(10)にも出演した。『イロイロ ぬくもりの記憶』がバヤニにとってフィリピン国外で初の映画出演作となった。

OK LABEL

回答投稿にあたっての注意とお願い

OKStarsからの質問は、OKWave事務局(ID:10q-OK)が質問投稿とベストアンサー選定を代行しています。
当企画は、OKWaveの他のカテゴリーと異なる主旨での運営となっています。原則的に回答への個別のお礼はつきません。あらかじめご了承ください。
ご回答の際には利用規約禁止事項ガイドラインに沿った投稿をお願いいたします。