OKStars インタビュー

Vol.424 映画監督

三島有紀子

OKStars Vol.424は2015年1月31日公開の映画『繕い裁つ人』の三島有紀子監督へのインタビューをお送りします。

『繕い裁つ人』の映画化で監督が一番描きたかったことは何でしょうか。

もともと仕立て屋の映画を作りたいという思いがありました。洋服は一番その人に密着していますよね。なので、服によって気分も変わるし、ある種、行動も変わる魔法のような存在だと思います。そういうものを作る女性の職人の生き様を描きたいと思っていました。

では『繕い裁つ人』を描くポイントにしたことは?

洋裁店を営む南市江の生き様に寄り添っていく映画にしたいと思っていました。市江はどういう服を着ていて、お直しをした洋服はどういうもので、どういう服をオリジナルデザインで作ろうとしていたのか。さらには、市江がどういう生地やボタンを買うのか、と市江が神戸の仕立て屋で洋裁師をする上でどういうものを選んでいるのかまで、何を見ても市江の生き様が見えるように描こうと思いました。

市江役の中谷美紀さんのキャスティングはいかがでしたか。

中谷さんも私にとっては市江そのものでした。もともと、中谷さん自身が市江のように細部までこだわってご自身の最高の芝居を提供する職人と捉えているので、まさに市江そのものですね。市江がその場にいるだけで空気がきれいになって静謐な空間になると思っているので、まさに中谷さんが立っているだけでそういう空間になりますので、市江は中谷さん以外では考えられませんでした。

オール神戸ロケとのことですが、ロケーションや建物へのこだわりは?

市江が神戸で生まれ育って、先代の祖母が洋裁店をやっている、という人生を送って来たとしたら、どういう空間で暮らしているんだろう、どういうカフェに行くだろうと想像しながらロケハンをしました。南洋裁店に関しては本当に神戸の洋館を全部見て廻ったんじゃないかと思います。職住一体で、市江が住んで店もやっているという規模感の建物はなかなかなかったですし、ここまでの意匠にこだわっている建物も見つかりませんでした。やっと、川西市郷土館を見つけた時に、ここは市江がいる空間だと思えました。先代もここで開店したのだろうとその光景まで想像できましたし、市江が洋服を作っているイメージもできました。外観はどっしりしているのがまさに市江ですし、中も壁紙ひとつとってみても、職人のこだわりが詰まった建物でした。なので、ここでならきっと素敵な夢見るための洋服が生まれるなと思えました。本当に素敵な場所です。映画を観た後には皆さんに行ってもらいたいくらいです。ミシンなどのセット以外は、郷土館をそのまま使っていますので楽しんでいただけると思います。

衣装も素晴らしいですが、こだわりについてお聞かせください。

道具にしても何にしてもこの映画はクラシカルなものを目指そうとみんなで話していました。先代もクラシカルな服を作っていただろうし、市江もそれを受け継いでいる。衣装に関しては夜会のような特別な夜に着て行きたいと思うような素敵なドレスを伊藤佐智子さんにお願いして作っていただきました。衣装の半分は作っていただいているので、この規模の映画では珍しいです。一番こだわったのが市江の衣装で、この作業着も手作りなんです。青い色も3回くらい染めてやっと出るような色なんです。なぜ作業着を作ったかというと、市江自身は主役ではなくお客様が主役で、お客様を輝かせるために服を直しているのですが、中谷さんは美しすぎて、普通の服ではどうしても中谷さんにスポットライトが当たってしまいます。それでは市江の生き方とは違うので、何とかして市江のスタイルを見せたいと考えて作業着を着せようと思い至りました。市江はある意味孤独でストイックに洋服と向き合っているので修道女のような服にしてもらいました。なおかつ、先代の技術にある種とらわれているところがあるので、全身を覆ってもらうデザインをお願いしたら、このようになりました。ですので、伊藤さんがこの服も青い色も考えてくれました。原作ではこういう衣装を着ていないので、市江さんの象徴となる衣装となったかなと思います。夜会で出てくる衣装は「私だったら、あれが着たいな」という風に見て選んでもらえたらなと思います。

夜会は30歳以下は入れなかったり、大人の目を意識されていますね。

そうですね、大人の映画にしたいと思いました。もちろん若い人たちにも観てもらいたくて、私は、大人になると結構楽しいことがあると思っているので、若い人たちにもそう思ってもらいたいです。

『繕い裁つ人』を撮る中で何か気づきはありましたか。

やはり内面と向き合うことですね。市江自身、お客様が何を大切にしているのか、本当はどこに向かいたいのかを静かに読み取って、それを洋服に縫い込んで、それを着た人が変化して行動していける、ということを大切にしています。市江が相手の内面を見ることで市江自身も自分の内面を見ていくことになります。自分の内面をあらためて掘り下げていくということは、何度でもやっていくことと思います。それによって新しい自分が生まれるということを描けたら、と思いました。何かを決めつけずにもっと心を自由にしてあげて、明日は違う自分に会えると思って生きていくことが大事かなと、作りながら思わせてくれた作品ですね。

三島有紀子監督からOKWaveユーザーに質問!

オーダーメイドで服を作ったことはありますか?私は手作りのもの、大切に造られたものを大切に使いたいなと思っています。が、まだ作ったことはありません。ぜひ作ってみたいと思うようになりました。

Information

『繕い裁つ人』

1月31日(土)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー

『繕い裁つ人』 神戸の街を見下ろす坂の上に、その店はあった。「南洋裁店」という小さな看板が掛けられた、古びた洋風の一軒家。店主の南市江が仕立てる服は、いつも人気。すべて昔ながらの職人スタイルを貫く手作りの一点ものだ。神戸のデパートに勤める藤井は、市江にブランド化の話を持ち掛けるが、まるで“頑固じじい”のような彼女は、全く興味を示さない。市江の手掛けるのは、祖母で一代目が作った服の仕立て直しとサイズ直し、あとは先代のデザインを流用した新作を少しだけ。
「世界で1着だけの、一生もの」それが市江の繕い裁つ服が愛される、潔くも清い理由だった。
だが、南洋裁店に通い詰めた藤井だけは、市江の秘めた想いに気付いていた。やがて、彼の言葉に、市江の心は初めて揺れ動く。

監督:三島有紀子(『しあわせのパン』『ぶどうのなみだ』)
原作:池辺葵「繕い裁つ人」(講談社「ハツキス」連載)
衣装:伊藤佐智子
脚本:林民夫
出演:中谷美紀/三浦貴大 片桐はいり 黒木華 杉咲花/
中尾ミエ 伊武雅刀 余貴美子
配給:ギャガ

公式サイト:http://tsukuroi.gaga.ne.jp/

(c)2015 池辺葵/講談社・「繕い裁つ人」製作委員会

Profile
三島有紀子

三島有紀子

大阪市出身。
18歳からインディーズ映画を撮り始め、神戸女学院大学卒業後、NHKに入局。「NHKスペシャル」「トップランナー」など、“人生で突然ふりかかる出来事から受ける、心の痛みと再生”をテーマに一貫して市井を生きる人々のドキュメンタリー作品を企画・監督。11年間の在籍を経て、独立。以降、助監督をやりながら脚本を書き続け、『刺青~匂ひ月のごとく~』(09)で映画監督デビュー。12年に映画『しあわせのパン』でオリジナル脚本・監督をつとめる。
14年10月には『ぶどうのなみだ』を発表。第38回モントリオール世界映画祭のワールド・グレイツ部門に招待された。映画監督としての仕事に加えて、TV向けドラマ作品や小説、エッセイの執筆等、幅広い活動で、優しい雰囲気の中にスピリッツの効いた作品を手掛けるクリエイターとして評価を受けている。
著作に小説「しあわせのパン」(ポプラ社)、小説「ぶどうのなみだ」(PARCO出版)がある。

http://yukikofilm.exblog.jp/

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