OKStars インタビュー

Vol.427 俳優

高良健吾

OKStars Vol.427は2015年2月14日(土)公開の映画『悼む人』主演・高良健吾さんへのインタビューをお送りします。

『悼む人』のオファーを受けられてまず感じたことは何でしょうか?

この静人の役に自分がどう居られるか、ということが難しいなと思いました。それは、静人は悼む行為を外に向けてやっているわけでも、評価されたくてやっているわけでもないからです。でも、これは映画なので、静人がなぜ悼むのかを見せて伝えなければならないですよね。それで静人が映画の中にどう居れば納得がいくのか、静人のやっていることが自分の中で説得力があればいいなと思いました。それで、現場に入ってからも毎日静人の感じていることを考えながら演じました。

高良さん自身は本作のような「悼む」経験はありましたか?また、本作を通じてその気持ちに変化などはありましたか。

悼む経験はこれまでもあります。亡くなった人のことをたまに思い出すことはすごく大切なことだと思いますし、たとえ生きている相手でもその人のことを忘れている間は自分の中に無いので、そういう大切な人のことを思い出せば、またその人が自分の中に戻ってきますよね。それは亡くなった人でも同じで、静人の場合はたとえ加害者であってもどんな命も差別せずに向き合っています。「覚えておきます。あなたが愛されたこと、感謝されたことを」と静人は悼む時に言いますが、これはもう静人にしかできないと思います。映画の中で静人のことを異常者と言う人も出てきますが、僕はそうは思いません。例えば親が子どもを虐待死させてしまうニュースを見たりすると、僕も気持ちが落ち込みますけど、心の何処かで悼む気持ちも持っていると思います。それを静人は自ら足を運んで全部やっているんです。静人のやっていることは批判されるかもしれませんが、否定される行為だとは思わないです。

静人の悼む旅と同時進行で進んでいる他の人物の物語に対して思うところはありましたか?

僕が気をつけたことは最初から最後までブレないことだけでした。確かにいろいろやってみたくなるんですが、僕が何かを外に発信し始めてしまったら、僕自身、きっと静人のことを嫌いになってしまったと思います。静人の悼む行為は全部静人の内に向かっていますし、目の前の人に向かっている時も外には発信していないので、やはり静人自身に向かっていなければならないと思いました。そうしていないと静人の母が蒔野記者に問いかける「あなたの目には静人はどう映りましたか」という言葉も活きないんですよね。僕にもその言葉は響いていて、僕が静人についてどう感じたのかを演じました。

演じていて印象的なシーンについてはいかがだったでしょうか?

同級生とのケンカで亡くなった子どもの家に向かうところですね。あの場面で静人の悼みに対するスタンスや距離のとり方というものが分かります。あのシーンで観ている方に静人のことを誤解されてしまうと後々の説得力がなくなってしまうので、とにかく静人に誠実に演じました。

石田ゆり子さんとの共演と、石田さん演じる倖世と静人の距離感などはいかがでしたか。

ゆり子さんの持っている儚さは画面にも出ていると思います。僕自身、撮影で1ヶ月一緒に旅をしたものの、「確かに旅したんだよな」と言わないと思い出せないような儚い感覚なんです。
静人と倖世は演じてみるとシンプルでした。人との出会いもまたシンプルなので、倖世でなかったら、静人についてくるのは厳しかったかもしれませんが、他人と他人が何かはまる瞬間はあると思うんです。静人は案外気も使うし、でもマイペースなので、途中で「あなたが来ることが嫌です」と言うシーンもあります。でも倖世から出ている何かに興味もあったんだと思います。

堤監督は本作の舞台版も手がけるなど、相当本作への思い入れが深かったと思いますが、監督からはどんなことを言われましたか?

堤さんからは「舞台とは違うから気にしなくていいよ」と言われました。僕も舞台と映画とでは表現も違うと思いますし、全然気にしませんでした。静人をブレないで演じるということはお互いに話していました。

演技で新たな発見はありましたか?

発見は毎回あります。芝居なので必ずどこかは作っていますが、今回は心もそうですが、体でも、まさに体現することをしっかりやろうとしました。若い頃は思っていることがあふれてしまって、あふれたものはコントロールできないんです。若い頃にもらった役はそれでも良かったのですが、今の27歳という年齢なら、高校生役も父親役もできると思います。言葉にすると難しいのですが、「演技の神様が降りてくる」みたいな、現場で役がはまる瞬間が必ずあって、それを待つのではなく、自分たちからその瞬間を呼ぶという感覚ですね。今回はそういうところができたと思います。

完成披露試写会で静人のことを運命的な役柄と言っていましたが?

10代、20代前半の頃から人殺しや殺される役、自殺する役などが多くて、そういうものはプライベートの生活で感じることではなく、自分からその心理を知ろうとしなければならなかったので、今回に限らず役柄のために常に死生観について考えていたんです。それこそ『ソラニン』の撮影で死んで、次の日は『ノルウェイの森』で自殺するという、2日連続で死ぬ役柄の経験もあります。『千年の愉楽』の時は僕自身の25歳の誕生日に死ぬシーンを撮影したので、「25年前に生まれたのに今日死んでいる」という普通だったら感じられない感情をもらうこともできました。10代の頃に読んだ本の一節にあった「人間誰しも一度は死にたいと思ったことがある」という感覚も分かります。静人は、友人の死のことを考えすぎて心が辛くなりましたが、悼む旅を通じて、死んだ人が誰に愛され、誰を愛して、誰に感謝されたか、という覚え方で死と向き合うことができました。静人は死ぬことを選ばなかったし、誰でもいつかは死ぬのでそれまで生き切るということが美しいと僕も思います。

高良さん自身は静人のような悼む旅をしてみたいと思いますか。

できないです。ああいう旅は物理的にもそうですが、静人のようにあそこまでいろんな人の心には寄り添えないと思いますし、自分の心が壊れちゃうと思います。でも、悼まない放浪の旅だけだったらしてみたいです。だからこそ静人の悼む旅はすごいですし、彼の中心にある命を差別しない心は清いと思います。誰に愛され、誰に感謝されたか、ということで静人の中だけでも、みんなが忘れてしまいそうな命をちゃんと覚えておこうとする行為はとても澄んでいると思います。僕は彼の一番の味方でありたいです。

人を愛することについて描かれた作品ですが、高良さんはそれは何だと思いますか?

僕自身は思いやりや相手の立場に立つことが大切だと思います。相手の人間性を否定してはダメだなと思います。

では愛されるために必要なことは何でしょう?

自分を作って、それを愛されてしまうと後々大変だと思うので、自分はこういう人間だということを普段から嘘偽りなくしていれば、フィーリングが合わない人は離れていくだろうし、合えば一緒にいるだろうと思います。自分がちゃんと自分でいるようにする、とくに自分が好きな相手にはそう接したいと思います。

高良さん自身は本作を通して「感謝」の気持ちは何に浮かびますか?

現場のスタッフですね。一人では映画はできないですし、僕らが現場の前に入る前の準備から公開されるまでの間もそうです。現場に入って役のことを考えていると孤独を感じることもありますが、相当いろんな方に支えられていますので、役のこと以外ではスタッフへの感謝しか無いです。

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『悼む人』は家庭環境や年齢でも見方が変わるので、いろんな立場で観ていただけると思います。ぜひご覧ください。

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Information

悼む人 2015年2月14日(土)ロードショー

『悼む人』
2015年2月14日(土)ロードショー

坂築静人は、不慮の死を遂げた人々を悼むため、日本全国を旅している。悼むとは、亡くなった人の「愛」にまつわる記憶を心に刻みつけることだ。死者が生前「誰に愛され、愛したか、どんなことをして人に感謝されていたか、その生きている姿を覚えておく」ための静人なりの儀式は、傍からは奇異に映った。だが、この行為こそが、静人と関わった様々な人たちの「生」と「愛」に対する考え方に大きな影響をもたらし、誰もが抱える生きる苦しみに光を照らしていく。
山形のとある事故現場で静人に出会った雑誌記者・蒔野抗太郎には、余命幾ばくもない父親がいるが、子供の頃からの確執によって、袂を分かったままだった。偽悪的なゴシップ記事を書き続け“エグノ”と揶揄される蒔野は、静人に目をつけ、取材をはじめる。
同じく山形。産業廃棄物処理場を埋め立てた展望公園で、静人と出会った奈義倖世は、夫・甲水朔也をその手で殺した過去をもっていた。夫の亡霊に苦しむ倖世は、救いを求めて、静人の旅に同行する。

高良健吾 石田ゆり子
井浦 新 貫地谷しほり
山本裕典 眞島秀和 大後寿々花 佐戸井けん太 甲本雅裕 堂珍嘉邦 大島蓉子
麻生祐未 山崎 一/上條恒彦 戸田恵子 秋山菜津子 平田 満
椎名桔平/大竹しのぶ

原作:天童荒太「悼む人」(文春文庫刊)
監督:堤 幸彦
配給:東映

公式サイト:http://www.itamu.jp/

© 2015『悼む人』製作委員会/天童荒太

Profile
高良健吾

高良健吾

1987年11月12日生まれ、熊本県出身。
『ハリヨの夏』(06)で映画初出演。『M』(07)で第19回東京国際映画祭「日本映画・ある視点」部門特別賞受賞以降、話題作で様々なキャラクターを好演。11年にはNHK連続テレビ小説「おひさま」で第36回エランドール賞新人賞・テレビガイド賞、『軽蔑』にて第35回日本アカデミー賞新人俳優賞を、13年には主演映画『横道世之介』にて第56回ブルーリボン賞主演男優賞を受賞。15年は、NHK大河ドラマ「花燃ゆ」に出演、主演映画『きみはいい子』の公開も控えている。

公式サイト:http://www.tencarat.co.jp/korakengo/

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