OKStars インタビュー

Vol.430 映画監督

三木孝浩

OKstars Vol.430は、大自然広がる長崎県の五島列島を舞台とした新垣結衣さん主演の映画『くちびるに歌を』(2015年2月28日公開)の三木孝浩監督へのインタビューをお送りします。

『くちびるに歌を』映画化の経緯についてお聞かせください。

原作の小説を映画化する企画があるという話を聞いたのですが、実際に映画化の企画が進む前に、僕自身、原作を読んで気に入ったので、ひとりで五島列島にロケハンに行ってしまいました。電気自動車のレンタカーを借りて島を一周しながら、ここであのシーンを撮ったらいいなと、その時は映画化が決まってもいないのに島の景色を見ながら考えていました。それと、僕は中学生の頃にハーモニーがあるような合唱をやった経験がなかったので、中学生の合唱コンクールを取材して、すごくいいなと思って、合唱そのものにも魅せられました。合唱の良さを映画でも何とか伝えられないものかというのが映画化する時のモチベーションでした。

新垣結衣さん演じる柏木ユリは無表情だったのがだんだんと笑顔を見せるようになります。新垣さんの芝居への監督のこだわりをお聞かせください。

柏木ユリというキャラクターはいろいろな大人のデフォルメだと思います。彼女のように人に言えない悩みを持っていて歩みを止めてしまうことは、大人になると大なり小なり経験していると思います。しかも新垣結衣さんという明るいイメージの方が今回は陰のあるキャラクターを演じるので、新垣さんのような方でもそういう部分があるんだ、と思わせることができたらより親近感がわくと思います。ですので、柏木ユリのピアニストとしての孤高な感じというよりは、大人が誰しも共感できるキャラクターをイメージして作っていきました。柏木がどう心を変化させていくかは、シーンごとに新垣さんと細かく打ち合わせていきました。

自閉症のアキオ役の渡辺大知さんにはどのような演出をしていきましたか。

渡辺くんと自閉症の方々が通っている作業所に行って、彼らと一緒に作業もさせてもらって、アキオだったらどう気持ちを表現するかを勉強しながら作っていきました。僕のアキオのイメージは『ギルバート・グレイブ』でレオナルド・ディカプリオが演じたアーニーというキャラクターで、家族や周りの人に愛されているキャラクターであってほしいなと思って、渡辺くんともそんな話をしながらキャラクターを作っていきました。

15歳の中学生らのキャスティングはどういう基準でされましたか。

中学生役は、オーディションの時に合唱の歌を歌ってもらうこともしましたが、歌の上手い下手よりも、ひとりひとりがそれぞれ悩みを抱えつつも合唱を通じてひとつになっていくのが、合唱の素晴らしさを伝える方法だと思いました。ですので、なるべくバラバラのキャラクターの子たちが集まるようにしました。むしろ最初から上手いというよりは、コンクールに向けて合唱の練習をする彼らが、役者としても成長する姿とリンクするような、ドキュメンタリーのように見えた方が、観る方も感動できると思いました。

15歳役の役者らの変化を感じたところはいかがだったでしょうか。

昨日できなかったことが今日できる、というような成長の幅には驚きました。大人だったら、だんだんこうなっていくのかなというところを、想像を超えてできるようになっていく瞬間が何度もありました。お芝居も合唱もそうですが、印象的だったのは最初は現地の人の方言がわからない感じだったのがロケの中盤以降、彼らはみんな方言で会話をしていたことです。大人よりもそういう吸収力が違いましたね。それと、ペース配分を知らないからこそですけど、毎回その瞬間ごとに100%出しきっていました。それを息切れすることなく最後までやりきったので、僕もペース配分なんて言ってられないなと思いました(苦笑)。 現場では子どもたちの意識がそろった瞬間にこちらの胸を掴まれるような瞬間が何度もありました。なぜ彼らがここまでできたか僕にも不思議なところがあります。計算づくではない10代が持っている突破力のようなものだとは思いますが、それを求めながらずっと映画を撮っていたなと思います。キャストを集めて台本読みをした時に、それまでは大人が子どもたちに何かを与えるような作品になると思っていたのが、圧倒的に子どもたちから出てくるものが多くて、僕らが彼らに言えることはそんなにはなく、子どもたちから学ぶことが多かったです。

合唱曲の「手紙 ~拝啓 十五の君へ~ 」について、劇中では15年後の自分に手紙を書かせる課題が出されましたが、キャストの方と何か手紙のやり取りをされたりはしましたか。

新垣さんには最初に手紙を送りました。柏木ユリをどう見せたいかとか、この作品をどうしたいかという思いを書きました。撮影後に手紙のお返事をいただいたので、すごく嬉しかったです(笑)。それと新垣さんは子どもたちにクランクアップ後に手紙を渡していましたね。

今回は恋愛要素がほとんどない作品でしたが、あえて織り込もうとはしませんでしたか。

原作小説の方が中学生なりの恋愛の悲喜こもごもを描いていましたが、僕が原作で一番感動したのはサトルくんの手紙の部分でした。そこが心に残ったのは、僕自身、中学生の頃は他人のことよりも自分と向き合う時間の方が多かったからです。それで今回は自分とどう向き合うかということがテーマになりました。なので、柏木先生も15歳の彼らと向き合いながらも15歳の自分と向き合っているような見え方になるといいなと思いました。

島の緑の景色の中を柏木が生徒たちを連れて行くシーンですが…

そうです、『サウンド・オブ・ミュージック』へのオマージュです(笑)。歌と先生と子どもたちの交流ということで、『サウンド・オブ・ミュージック』もそうですし、『二十四の瞳』もしかりで、こういうふれあいの中で育むようなビジュアルイメージにはオマージュを込めました。このロケ地は鬼岳というところですが、すごくきれいなところなんです。

鬼岳の話が出ましたが、五島列島で思い出深いところは?

ひとりでロケハンしていた時に五島列島は海が穏やかだと気づきました。風が弱いと波がほとんどなくて本当に静かで、穏やかな気持ちになるし、母性を感じました。映画の中でも母親の存在が物語を包んでいるイメージがあったので、この映画にはピッタリの場所だなと思いました。

本作の15歳の子たちと同世代の方々へのメッセージをお願いします。

何か考えたり行動する時には自分でそこにたどり着かなければならないと思います。だけど挫けそうになった時に周りを見れば、親や友達や周りの人が見ていてくれているということを、この映画からも少しだけでも感じてもらえれば嬉しいなと思います。 とくに10代は誰かとの関り合いの中で生きていると思うので、壁にぶつかったり、自分のことを理解してもらえないと思っているとしたら、相手の立場から自分を見てみると、そこで初めて思いやりが生まれると思います。自分のことと、相手が思っている自分に差が無いか、主観だけでは分からなかった何かがあるので、立ち行かなくなった時は、誰かの視点で見ると壁を超えるヒントがあると思います。

では15歳の子どもたちの親の世代にとくに本作で観てほしいところは?

自分たちが15歳だった時のことを思い出してほしいということと、15歳の子たちが思っているようなことを自分も考えていたということにきっと気づけると思います。そうすると子どもと接していても、いろんな気づきがあると思います。

三木孝浩監督からOKWaveユーザーに質問!

歌で勇気づけられたことはありますか?もしあればその歌を教えてください。
僕は小学生の頃にスターダストレビューの「夢伝説」という曲をCMでふっと聴いて、その時は誰の曲かは分からないけどすごく勇気づけられました。後々になって曲名がわかった時にも感動しました。

Information

『くちびるに歌を』

2015年2月28日(土)全国ロードショー

『繕い裁つ人』 長崎県・五島列島の中学校。ある日、天才ピアニストだったと噂される柏木ユリが臨時教員としてやってくる。合唱部の顧問となった柏木は、コンクール出場を目指す部員に、“15年後の自分”へ手紙を書く課題を出す。そこには、15歳の彼らが抱える、誰にも言えない悩みと秘密が綴られていた。その手紙は悲しい過去からピアノを弾けなくなっていた柏木の心を動かして……。

新垣結衣
木村文乃 桐谷健太
恒松祐里 下田翔大 葵わかな 柴田杏花 山口まゆ 佐野勇斗 室井響
渡辺大知 眞島秀和 前川清 木本武宏 石田ひかり(特別出演)
木村多江/小木茂光/角替和枝 井川比佐志

監督:三木孝浩(『陽だまりの彼女』『ホットロード』『アオハライド』)
原作:中田永一(「くちびるに歌を」小学館刊)
主題歌:アンジェラ・アキ「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」(EPICレコードジャパン)
配給:アスミック・エース

公式サイト:http://kuchibiru.jp
Twitter:@kuchibiru2015
Facebook:facebook.com/kuchibiru2015
© 2015 『くちびるに歌を』製作委員会 © 2011 中田永一/小学館

Profile
小林聖太郎

三木孝浩

1974年生まれ、徳島県出身。
これまでに、いきものがかり、FUNKY MONKEY BABYS、YUI、ORANGE RANGE、木村カエラ等、数多くのPVやライブ映像、またTVCM、ショートムービーなどを手掛ける。MTV VIDEO MUSIC AWARDS JAPAN 2005 最優秀ビデオ賞、カンヌ国際広告祭 2009 メディア部門金賞などを受賞。2010年に浅野いにお原作コミックを宮﨑あおい主演で映画化した『ソラニン』で長編映画監督デビュー。以降、監督を手掛けた『僕等がいた』<前篇・後篇>(12)、『陽だまりの彼女』(13)、『ホットロード』(14)、『アオハライド』(14)がいずれも大ヒット。
http://www.stardust-directors.jp/

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