OKStars インタビュー

Vol.431 映画監督

成島出

OKStars Vol.431は、宮部みゆきさん原作のミステリー巨編を前後編で映画化した『ソロモンの偽証』(<前篇・事件>2015年3月7日公開、<後篇・裁判>同4月11日公開)の成島出監督へのインタビューをお送りします。

『ソロモンの偽証』映画化にあたって、原作のどの部分に注目されましたか。

宮部みゆきさんの作品はもともと好きでよく読んでいて、「ソロモンの偽証」原作も読んで大傑作だと思いました。少年少女の魂を忘れないでヒリヒリするような気持ちを保ったまま書ける宮部さんにも圧倒されました。子どもたちが裁判に向かっていく勇気や正義のようなものは今の日本に一番欠けているものだと思います。さらに本作の中で起きるいじめや自殺の問題も含め、この先50年も100年も読まれるであろう、まさに宮部さんの集大成のような作品だと思いました。

映画化という部分で、監督が大事にされたところは何でしょう。

原作がとても長いので、前後篇といえども5時間以内には収めないといけないため、映画としての脚色が必要です。すべて原作通りにはいかないのですが、原作の魂のようなものを踏みにじってはいけないと思いました。

中学生役について、1万人規模のオーディションを行ったことについてお聞かせください。そのくらいの規模になることは想定の上だったのでしょうか。

今回はプロ・アマ問わずに一番いい素材の役者を使おう、という考えでした。その結果が今活躍している14歳になるかもしれないし、まったくの新人になるかもしれないけれど、とにかくやってみようと始めました。その結果のキャストとなりました。

>進め方はいかがだったでしょうか。

最初の書類選考で半分くらいになってから、実際に会ってオーディションを行い、300人程度までに絞りこまれたところで、ワークショップを始めました。ワークショップでは映画とは異なる様々なシチュエーションでの即興芝居を繰り返して、その子たちの素質を見ていきました。オーディション当時14歳、15歳の子たちなので、その時に演技が上手いかどうかよりもいい素材かどうかというところを見ました。そして33人のクラスメートのキャストを決めました。

主演の藤野涼子さんら、主要キャストについてはいかがだったでしょうか。

彼女はエキストラの通行人役を一度やったことがあるだけで演技経験が全くなかったです。オーディションの時、彼女と、神原和彦役の板垣瑞生くんのふたりが一番演技ができなかったですね。なので、僕がこのふたりにすると決めた時にはスタッフは「間に合いますか?」と青ざめました。素材としてはこのふたりしかいないから、クランクイン2ヶ月前でしたけど、もし間に合わなければクランクインを延ばすつもりでした。決め手はふたりとも目と声です。前後篇で5時間近い作品なので、この年頃の甲高い声よりも落ち着いた声ということで、キャストを選ぶ上で声のアンサンブルで決めたところは大きいですね。
とはいえ、声のトーンはこちらで決めて、そのトーンで演じています。藤野さんは目力がありますが、まばたきをする癖がついてしまって撮影中はずいぶんと苦労をしました。

>役が決まってからの2ヶ月間はどのような演技指導をされましたか。

彼女に限らず、選ばれたキャストにはお芝居はいいから役になりきってくれと言いました。演じるのではなくて本人として生きてくれと。最後には本人と役とどちらが本物かわからないくらいになってほしかったので、2ヶ月前からみんな役名で呼び合うようにさせました。表面的な演出ではなく、なりきらせるようにした訳です。逆にそのようなやり方だったので、オーディションの時点で演技経験のある子は残らなかったですね。

撮影前後で彼らが成長した部分は何でしょうか。

こちらが求めていることが高いレベルで、やっていくうちに本人らも求められていることはわかるようになってきました。たとえば藤野さんだけに高いレベルを要求していたら途中で挫けてしまっていたかもしれません。でも、みんなに対して求めてきたので、彼らはいい意味でお互いをライバルとして切磋琢磨し合い、助け合っていました。というのはワークショップが始まった11月から、クランクインの翌年6月までいっしょに過ごしていて役柄の関係と同じような関係ができていたからです。本作は群像劇でひとりの物語ではないので、彼らも良い仲間になれたと思います。映画の後篇で涼子が「ひとりではできなかった。いい仲間がいたからできた」というようなセリフを話しますが、それと全く同じようになりました。映画の中の物語が彼ら自身の物語とシンクロしているからです。仲間がいたから撮りきれただろうし、役を生き切ることができたと思います。だからこそ、長い期間をかけてキャスティングをして関係性を作る必要がありましたし、1ヶ月前にキャスティングをして台本を渡して撮れるような作品ではありませんでした。みんなで力を合わせて最後までやる、という物語なので、作り方もそうなりました。

その他、彼らを演出する上で気をつけたことは何でしょうか。

この映画は1990年代前半の話なので携帯電話も出てきません。いまはLINEなどで簡単につながるので、この子たちにはそういうものを使わせずに、放課後実際に会わせて交流させるようにしました。今の子たちにはそれが新鮮だったようです。今だともっと簡単につながることができますが、本音でちゃんと相手にぶつかるということもあまり経験していない世代なので、そういう経験をさせて、90年代の子どもの考え方などを得てもらうようにしました。

大人のキャラクターの描き方についてお聞かせください。

出てくる先生たちのことを子どもたちは「あんな教師はいない」と言っていましたが、90年当時は普通にいました。そういったところもきちんと描かないと、子どもたちに都合のいい話になってしまうので、大人の生きる理屈がきちんと通っているようなリアリティをきちんと出すようにしました。そもそも中学生が裁判をするということは荒唐無稽な話ですが、それをどうリアルに落としこんでいくかについてはすごく考えました。

<後篇・裁判>に向けて、『ソロモンの偽証<前篇・事件>』の見どころをお聞かせください。

前篇と後篇で1本の映画になります。前篇はいろいろな謎が描かれ、後篇の裁判で、前篇で残った謎が明らかになっていきます。宮部さんの原作のすごいところでもありますが、その結果みんなが救われていきます。それがこの映画で僕が一番やりたかったことです。謎が解けていくとともに、それぞれの人生が救われて、ちゃんと着地できるので、すごい裁判劇になると思います。これだけの大長編を観てもらって最後の後味が悪かったらどうかと思いますし、それぞれの魂が浄化され、解放されていくような、必ず感動できるようなものになると思います。

OKWaveユーザーにメッセージをお願いします。

宮部さんのすごい原作の、その精神を受け継ぐ形で映画を作りました。原作をまだ読んでいない方は映画を観て気に入ったら、ぜひ原作も読んでいただいて、両方とも楽しんでいただけたらと思います。小説を原作とした前後篇の映画はめったにないし、とても贅沢な取り組みですので、ぜひそういった贅沢な部分を楽しんでください。まったくの新人たちが主役を張っていますので、彼女たちを見守って、最後まで観ていただくと気持ちの良い感動が待っていますので、ぜひ劇場でご覧ください。

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Information

『ソロモンの偽証』

3月7日(土)前篇・事件
4月11日(土)後篇・裁判
2部作拡大公開

『ソロモンの偽証』 クリスマスの朝、雪の校庭に転落死した男子生徒。警察は自殺と判断したが、殺人の目撃者を名乗る告発状が学校に届く。告発された容疑者はクラスメート。過熱するマスコミ報道、無力な学校と親、そして犠牲者がひとり、また一人。もう大人たちに任せておけない。隠された真実を暴くため、学校内裁判が開廷される。賢い者が、権力を持つ者が、そして正しいことをしようとする者が、嘘をついている。校内裁判の果てに、彼らがたどり着いた驚愕の真実とは。

原作:宮部みゆき「ソロモンの偽証」(新潮文庫刊)
監督:成島 出
出演:藤野涼子
板垣瑞生 石井杏奈 清水尋也 富田望生 前田航基 望月 歩
西畑澪花 若林時英 西村成忠 加藤幹夫 石川新太
佐々木蔵之介 夏川結衣 永作博美 黒木 華 田畑智子 松重 豊 小日向文世 尾野真千子

http://www.solomon-movie.jp/

©2015「ソロモンの偽証」製作委員会

Profile
成島出

成島出

1961年生まれ、山梨県出身。
相米慎二監督、平山秀幸監督らの作品の助監督を経て、04年『油断大敵』で監督デビューし、第23回藤本賞新人賞、第26回ヨコハマ映画祭新人監督賞を受賞。その後、『フライ,ダディ,フライ』(05)、『ミッドナイトイーグル』(07)、『ラブファイト』(08)、『孤高のメス』(10)、『聯合艦隊司令長官 山本五十六』(11)、『草原の椅子』(13)などを監督。11年公開の『八日目の蝉』では第35回日本アカデミー賞をはじめその年の主要映画賞を独占、高い評価を受ける。最近作は、第38回モントリオール世界映画祭で審査員特別賞グランプリを受賞した『ふしぎな岬の物語』(14)。

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