話題の映画などの作品にまつわる、俳優・女優、映画監督、アーティストらへのインタビューと、彼らからの「質問」に「回答」できるOKWAVEの特別企画です。

Vol.443 映画監督 チョン・ジュリ

OKStars Vol.443は2015年5月1日公開の映画『私の少女』で長編デビューを飾ったチョン・ジュリ監督へのインタビューをお送りします。

Q本作『私の少女』が長編デビュー作ということですが、本作を撮ろうと思った一番のモチベーションは何だったのでしょうか。

photo01-1Aチョン・ジュリ本作は私にとって初めての長編であると同時に、以前撮っていた短編作品の延長線上の作品とも言えます。テーマについても共通しているところがあります。私は映画の学校に通っていた時に3本の短編を撮りましたが、その時には気づいておらず、後で振り返ってみると、その3本とも暴力を描いているという共通点を見つけ出しました。1本は暴力の被害者、1本は暴力の加害者、そしてもう1本は暴力の傍観者を描いていました。その延長線上に『私の少女』があります。本作には寂しさを抱えた主人公が出てきます。その寂しさを生み出した原因を突き詰めていくと暴力という構図になります。だからなぜこの作品を作ったのか、という質問の以前からこのテーマ意識を持った作品を作っていて、今回もまた作品を通して観客の皆さんとこのテーマ意識を共有したいと思いました。

Qその暴力というものについての問題意識はどのようなところから持たれたのでしょう。

Aチョン・ジュリ暴力は人と人の間で行われる非常に恐ろしいことです。それがあちこちに蔓延しています。ある時は加害者になったり、別のある時には被害者になってしまう、そんな複雑な状況も見られます。暴力は人間が生きていく上での非常に重要な行為の一つだと思います。それについて考えなければならないし、ずっと悩んできました。

Q『私の少女』では、児童虐待やセクシャルマイノリティ、移民の問題なども描かれますが、それらは韓国でも大きな社会問題となっている事柄でしょうか。

Aチョン・ジュリ児童に対する暴力や虐待は以前から問題になっており、公にもされるケースが多いです。性的少数者の問題はそれに比べると社会の表面に出にくい問題なので、公にもされにくいのが現状です。そういった状況がセクシャルマイノリティの方々をもっと寂しく感じさせる状況になっていると思います。私たちの側にマイノリティの方がいるということを考える余地さえなかなか与えられていないように私の目には映ります。マイノリティの方は自分のアイデンティティについてカミングアウトすべきなのか、何が幸せなのかということを考える段階にも至っていないと思います。自分の置かれている境遇を運命なんだと受け入れて公にすることをしていない、そういうところを描きたいと思いました。

Q主人公ヨンナムを演じたペ・ドゥナさんの印象についてお聞かせください。

photo03-1Aチョン・ジュリ私が本作のシナリオを書いている時はデビュー前でしたので、ペ・ドゥナのようなトップスターと仕事ができるとは想像もしていませんでした。それが幸運に恵まれて、このシナリオで映画を撮ることができるようになり、誰にヨンナム役をお願いしようかと考えて真っ先にペ・ドゥナが思い浮かびました。ですので、シナリオを書いている時にはペ・ドゥナをイメージしてヨンナムを描いたわけではありませんが、映画が完成して観ていただいた方からはヨンナムはペ・ドゥナを念頭に書いたのですか、とよく言われました。そのくらいヨンナムという役にペ・ドゥナが適任だったということ以上に、ペ・ドゥナがヨンナムに入りきってヨンナム役を生きてくれたからだと思います。ペ・ドゥナ本人は「自分をまっさらにして役の人物を自分の中に取り込んで演技をする」と仰っていました。彼女は自分を白紙にしてヨンナムとして最初から最後まで演技をしてくれましたので、女優として驚くべき才能の持ち主だと思います。

Qドヒ役のキム・セロンさんは若い女優ですが、この難しい役を演じた彼女にはどのように接していきましたか。

photo02-1Aチョン・ジュリドヒ役もヨンナムと同じで、映画を撮るにあたって誰にしようか考えて最初に思い浮かんだのがキム・セロンでした。結果的に私は第一候補に挙げた女優さんたちと仕事ができました。ただ、最初はキム・セロンには断られてしまいました。説得するまでもなく「本人がやりたくないと言っている」と言われてしまいました。仕方なく500人ほどオーディションをしましたが決め手がなく、撮影初日が近づいてきてしまいました。いよいよ最終オーディションの時期が迫ってきた時に、もう一度キム・セロンの意向を聞く機会があり、改めて打診したら今度は受けてもらえました。その時点で予定していたオーディションも取り止めて、キム・セロンに決めました。後で本人に会った時になぜ最初は断って、次はやると言ってくれたのか聞いてみたところ、自分がやらないといけないと感じたからとのことでした。最初に断った時は本人がまだ13歳で「私には無理」という短い一言に全てが集約されていました。幼いながらもこの役が大変だということを理解していたからこそ、慎重に考えてできないと言ったのだろうから、そのくらい賢明な女優だと思いました。そのようにドヒのことを理解してくれていたので、実際に撮影が始まってからも、作品全体やドヒの気持ちについては話しましたが、「こう演じてください」といった指示はせず、彼女にはできるかぎり正直な気持ちで接しました。撮影前に「ドヒという役を演じるだけでも辛いと思いますが、ドヒ役を理解するだけでも辛い経験になると思いますよ」と話しました。でもキム・セロンは役をしっかり理解して心に傷をもった少女として観客と出会えるように見事に演じきってくれました。

Qチョン・ジュリ監督からOKWaveユーザーに質問!

チョン・ジュリ『私の少女』は寂しい女性同士が出会い、過酷な運命から一歩前へと踏み出す物語ですが、その後のことは描いていません。今後どのようになってほしいと思いますか?

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Information

『私の少女』
2015年5月1日(金)よりユーロスペース、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー!

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海辺の村に赴任してきた警官のヨンナム(ぺ・ドゥナ)は、少女ドヒ(キム・セロン)と出会う。ドヒは血のつながりのない継父ヨンハ(ソン・セビョク)と暮らし、日常的に暴力を受けていた。ヨンハは村の唯一の若い働き手だったため、村全体が暴力を容認しているなか、ひとり立ち向かっていくヨンナムは、ドヒを守ってくれる唯一の大人だった。 ヨンナムも少女の笑顔に癒されてゆくが、やがて激しく自分に執着するようになったドヒの存在に少し戸惑いを憶える。ある日、偶然にもヨンハはヨンナムの秘密を知り、社会的に破滅へと追い込んでゆく。ヨンナムを守るためドヒはひとつの決断をするが…。
人を愛することをあきらめていた“私”は少女を守るために心を許し、無力だった幼い“少女”は初めて誰かのために行動を起こす。ありのままの自分を認めてくれる人がいれば、人はきっと強くなれる。ふたりが背負わされた過酷な運命から一歩前へと踏み出す、希望の物語。

監督:チョン・ジュリ
プロデューサー:イ・チャンドン
出演:ぺ・ドゥナ、キム・セロン、ソン・セビョク
配給:CJ Entertainment Japan

公式サイト:http://www.watashinosyoujyo.com/

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チョン・ジュリ

1980年3月1日生まれ。
成均館大学映画学科を卒業後、韓国芸術総合学校映像院映画科演出専攻専門士課程で学び、2007年短篇「影響の下にいる男」で第12回釜山国際映画祭ソンジェ賞を受賞し、短篇「11」(08)はソウル国際女性映画祭アジア短篇コンペティション部門で演出力を評価された。続く短篇「わたしのフラッシュの中に入ってきた犬」(10)で着実に映画監督として力量を広げ、『私の少女』で初の長編映画デビューを飾る。『私の少女』はデビュー作ながらカンヌ国際映画祭「ある視点」部門に正式出品し高い評価を受けた。