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OKStars Vol.448 その2 「戯作者銘々伝」公開舞台稽古&こまつ座懇親会レポート

「戯作者銘々伝」公開舞台稽古と、こまつ座懇親会レポートをお送りします。

「戯作者銘々伝」公開舞台稽古

Q 「戯作者銘々伝」キャストの皆さんから意気込みをどうぞ。

戯作者銘々伝A北村有起哉山東京伝役です。こまつ座公演の新しい輝かしい一歩目となります。小説を素材にした新作というのはやはり簡単ではないと日々肉体を通して痛感しています。当時の江戸の社会を風刺した戯作者たちの生き様を、現代の皆さんの目の前で活き活きと描かせていただければと思っています。

新妻聖子唯一の女性キャストとして、必死に役割を全うせねばと奮闘する毎日です。山東京伝さんのふたりの奥さんを演じます。先妻と後妻両方を演じるといういささか複雑な気分ですが、京伝さんの妻を二度味わえるおいしい役なのかなと思います。男性の偉人伝ですがその中にも確かに女性の生きた証があったのだと、何とか表現していきたいと思います。

玉置玲央花火師の幸吉役を演じます。キャストの中で一番若いので恐縮もしていますが、若いなりにできる限りやらせていただきます。こまつ座公演は初参加ですが、年齢が低い自分に何ができるか考えて演じたいです。戯作者のお話ですが、自分は花火師として花火に熱くなる役として、何かこの公演ででっかい花火を打ち上げられたらと思います。

相島一之蜀山人さんを演じます。こまつ座が新しく作品を作る、そこに自分が参加できるということが大きなモチベーションとなっています。そしてキャストの方々とは、映像の方では会っている方もいますが、舞台でガッツリご一緒できるのはとても楽しみです。阿南健治とは昔からの“戦友”で、阿南と舞台で共演するのは劇団解散以来なので、それも楽しみのひとつです。

阿南健治船頭の三助を演じます。相島とは久しぶりの共演で、他の皆さんとの共演も楽しみにしつつ、三助を江戸の庶民の代表としてこの舞台で楽しめればと思います。「戯作者は数多いるが…」というような台詞が出てきますが、まさに今までいらっしゃった戯作者の皆さんが観たくなるような舞台、後ろの方にいろいろな戯作者さんがいるような舞台を繰り広げられたらなと思います。

山路和弘戯作者や三助の母も演じさせていただきます。この人たちと共演したら楽しいだろうなと想像した通りの稽古場になっています。当時の戯作者はどういうところに心があるのかわかりませんが、一生懸命やっているんだけど、さらっとやっているように見えたらいいなと思って、頑張ってまいります。

西岡德馬蔦屋重三郎を演じます。こまつ座の公演では初めてですが、井上ひさし先生の作品「天保十二年のシェイクスピア」出演の際に先生とはお会いして、とても魅力的な方だなと思いました。この話をいただいた時に東憲司くんと初めて会ったら、とても真面目な青年という印象で、劇団桟敷童子の舞台もとても面白かったし、このメンバーならきっといいものができるだろうと自分自身に対する期待もありました。蔦屋重三郎は以前に「写楽考」という矢代静一さんの作品でも演じた役なので、もう一度蔦屋重三郎が演じられることには縁があるのかなと。摩訶不思議な魅力を持った怪人物だと思っています。浮世絵などをプロデュースした人物として知られていますが、戯作者達の黄表紙や洒落本の出版も手掛けた人物です。日本人でもよく知らないことをえぐり出して、楽しくしたものがこの舞台です。初日にはスッキリしたものをお見せできるんじゃないかと思います。


こまつ座懇親会

Q こまつ座の今後の予定をお聞かせください。

こまつ座井上麻矢代表A井上麻矢今年は戦後70年ということで、井上ひさしが掲げてきた3つのキーワード「言葉」「憲法」「庶民」に基づいて今年の公演作品を決めました。
まず、「言葉」についてはまさに言葉に取り憑かれた戯作者たちを描いた「戯作者銘々伝」を東憲司さんが新たに書き下ろすという趣向で上演します。
そして、その言葉そのものと格闘した話を扱った「國語元年」を上演します。
戦後70年ということでは「父と暮らせば」を夏に上演します。「父と暮らせば」は原爆投下から3年後のいち庶民を描いた作品です。井上ひさしは存命中から、長崎を舞台にした「母と暮らせば」という話も書くと言っていました。そんな「母と暮らせば」が山田洋次監督の手で松竹の配給で12月に公開されます。

Q 「戯作者銘々伝」はこまつ座の新作として東憲司さんが手がけられました。その経緯をお願いします。

A井上麻矢東憲司さんとは井上ひさしが存命だった頃から「何かやりましょう」という話をしていました。その後、井上がこの世を去り、なかなか話を進められませんでした。東さんに頼むなら、新しいことにチャレンジする時でなければと思っていました。それである時、井上の「戯作者銘々伝」を読んでいて、これは東さんに合うんじゃないかと思い、東さんに小説を渡しました。その3日後くらいには「僕、やりますよ」と言っていただいてこの取り組みが始まりました。ただ、そこからこの東憲司版「戯作者銘々伝」を書き下ろしていただくまでには結構時間がかかりましたね。

Q 遅筆堂文庫にこもって本作を書かれたそうですね。

東憲司A東憲司「戯作者銘々伝」を舞台化しないかと言われた時は光栄に思うとともに、すごいプレッシャーを感じました。僕らの世代は江戸時代には詳しくないので、それまでに井上ひさしさんの戯曲は30本ほど観てはいましたが、もっと詳しくならなければいけないと思いました。それで遅筆堂にあるという資料から井上ひさしさんの空気感を味わおう、というくらいの気持ちで一度訪問させていただきました。しかし、あまりの蔵書の多さに打ちのめされてしまいました。「これは3日や1週間では無理だ。山形に住み込まなければできない」と思ったくらいです。相談した結果、近くに部屋を用意してもらえたので、遅筆堂には7週間通いつめました。遅筆堂に行くと、まず書架に行って落ち込み、本を開いて落ち込み、帰り道で落ち込む毎日でした。滑稽本から黄表紙まで、読みこむだけ読み込んで、それが終わってからでないと書いてはいけないと思いました。それとともに井上ひさしさんは本を愛していたんだなとつくづく感じました。そうやって今回の「戯作者銘々伝」を書き上げました。

Q 心がけたことは?

A東憲司小説は振り返って読むことができますが、舞台はそれができないので、お客さんに1回で伝わるようにしました。それと、井上ひさしさんのこの言葉、この台詞は入れようと、なるべく吟味して入れるようにしました。井上さんの全戯曲を読みましたし、井上さんが伝えてきたメッセージはしっかり含まれていると言いきれます。その分、僕にとっては今までで一番苦労した戯曲になりました。
世間の歪みがあれば、まず笑い飛ばして権力を批判し闘う、というテーマは、井上ひさしさんの中に息づいていると思います。言論への圧力に対し、庶民の代表である戯作者たちが彼らの作品を通じて権力に立ち向かったように、書くことによる正義というものは脈々と受け継がれていると思います。

Q 稽古の様子をお聞かせください。

A東憲司キャストの皆さんも、最初は戸惑いもあったと思いますが、一致団結してこの作品を作り上げようと、意見を出し合って、日夜奮闘しています。戯作者ゆかりのものにだんだんと近づいています。自分でもワクワクしていますが気も引き締めて取り組んでいます。

Q 「戯作者銘々伝」は宮川彬良さんが音楽を担当していますがその経緯をお聞かせください。

A井上麻矢宮川さんのことを「とても良い乾いた曲を書く人だ」と井上は言っていました。今回思い切ってお願いをしてみたところ、宮川さんからも「僕の曲は井上さんの戯曲に合うと思っていた」と言われました。戯作者が言葉で権力と闘っていたイメージを宮川さんも持っていて「そういうトンガッた人たちは好きですね」と言っていました。

東憲司小説には当然歌はありませんが、こまつ座の作品なんだから歌を入れなきゃと思って、宮川さんには歌とそれ以外の楽曲をそれぞれ作っていただきました。最初に歌が出てきた時は思わず「えぇっ!?」と声が出るくらい江戸から遠く離れた意表をつく楽しい音楽でした。びっくりしましたが、それを活かした楽しい演出になると思っています。

Q 井上ひさしさんの他界後の新たな作品としては「木の上の軍隊」もありましたが、「戯作者銘々伝」に続いて、今後もこういった取り組みは計画されているのでしょうか。

A井上麻矢「木の上の軍隊」は井上のメモ1枚をもとに蓬莱竜太さんが苦労して書かれましたが、「戯作者銘々伝」は素材となる小説が2編ある中での戯曲ということで、違った大変さがありました。さらにアプローチの違うものとして「母と暮らせば」も誕生しようとしています。新たなことをやっていくということは父の遺言のようなもので「演劇はコンクリートで作られたものではない。海のようにいろんな所に入り込んで広がっていくものだ」と本人も言っていました。「どんなふうに広がっても根っこは腐らないように書いている」とも言っていました。「根っこから木が育って広がっていくような要素はこれからもあるだろう」と言っていましたし、演劇というものはその時代をはらんでいくものですし、チャレンジしていくのが劇団の使命だと思います。確約はできませんがなるべく臆せず取り組んでいきたいです。

Q 「父と暮らせば」を今年上演する意図をお聞かせください。

A井上麻矢辻萬長さんは「父と暮らせば」をライフワークと仰っていますが、井上もまた「この作品を書くために作家になったんだと、これを書いてわかった」と言っています。戦争に巻き込まれた、普通の生活を営んできた人たちの物語です。昨今は声高に右寄りの発言をする人の方に寄っていく怖さが感じられます。戦争で亡くなった方はもはや語る術がありませんが、彼らの声無き声が集まったのが憲法であり、私たちの生活を守ってくれているものだと思いますので、この節目の年にもう一度問い直したいという気持ちがあります。「父と暮らせば」は、どこに行っても、小学生から大人まで、みんなが理解できる作品です。今年は「父と暮らせば」「母と暮らせば」の2つを観てもらえば、戦争とか改憲ということではなく、大切な人を失った人がその後どうやって生きていくのかという、普遍的なテーマを感じてもらえると思います。今やらないでいつやる、という気持ちでこの2本をアプローチを変えて上演、公開することに意味があると思っています。

「戯作者銘々伝」は言葉で伝えることに命をかけた人たちの話です。言葉の重みというものがどんどんなくなっている時代に、言葉に命をかけた人たちの話を伝えたいと思いました。ですので、どちらの作品も同じくらいの重みを持って上演したいです。


■Information

こまつ座第109回公演・紀伊國屋書店提携
東憲司版『戯作者銘々伝』

戯作者銘々伝黄表紙で絶大な人気を得た戯作者の山東京伝は、町人の力が大きくなることを恐れた松平定信の寛政の改革により処罰された。権力に屈し追い込まれた京伝は、烟草店を開く。そこで、若く純真な花火師の幸吉に出会い…。
江戸時代後期、黄表紙や洒落本が風俗を乱すと咎められ弾圧されながらも、「笑い」というものにすべてを賭けた戯作者たちの鬼気迫る生き方。
夜空にあがる一瞬の光に身を捧げる花火師と、書くことに魅せられ、コトバと心中した戯作者の数奇な運命とは。

井上ひさしの傑作小説「戯作者銘々伝」と「京伝店の烟草入れ」の2作品を素材に、第47回紀伊國屋演劇賞個人賞、第20回読売演劇大賞優秀演出家賞、第16回鶴屋南北戯曲賞を受賞した異才・劇団桟敷童子の東憲司が書き下ろした新作。
戯作者・山東京伝に北村有起哉を迎え、多彩多芸多様と三拍子揃ったキャストで、今一番新しい江戸が平成に甦る。

作・演出:東憲司(劇団桟敷童子)
音楽:宮川彬良
出演:北村有起哉 新妻聖子 玉置玲央 相島一之 阿南健治 山路和弘 西岡德馬

2015年5月24日(日)~6月14日(日)新宿南口・紀伊國屋サザンシアター

入場料:8,000円(全席指定・消費税込)
夜チケット:7,500円(全夜公演対象)
学生割引:5,500円(全席指定・消費税込)

こまつ座 03-3862-5941

公式サイト:http://www.komatsuza.co.jp/