OKWAVE Starsは、ここでしか読めない、俳優・女優、映画監督、アーティストへのインタビューと、彼らからの「質問」に「回答」できるOKWAVEの特別企画です。

OKStars Vol.461 映画監督 杉岡太樹

OKStars Vol.461は2013年7月の参議院選挙に立候補したミュージシャン三宅洋平さんの街頭ライブ型政治演説を追った『選挙フェス!』(2015年7月4日公開)の杉岡太樹監督へのインタビューをお送りします。

Q 杉岡監督ご自身の三宅洋平さんとの最初の出会いについてお聞かせください。

A杉岡太樹僕の長編デビュー作の『沈黙しない春』という震災直後に各地で起きた脱原発デモを撮影した映画の撮影時に、広島のデモで三宅さんがギターを弾きながら歌っている姿を見たのが彼に初めて接した時です。その時の様子も撮影して『沈黙しない春』が完成した後、三宅さんが試写会に来て歌ってくれたり、メディアでの対談などの協力をしてくれました。それ以降も、三宅さんが住んでいる沖縄から東京に来られるときには、ライヴを観に行ったり、薄くですけれど交流がありました。

Q 三宅さんの印象はいかがだったのでしょう。

A『選挙フェス!』杉岡太樹N.Y.に住んでいる時に日本の音楽をYouTubeでチェックしていました。その時にたまたま見つけた三宅さんのライブの動画が、どこか自分のハングリー精神とも共鳴していて、荒ぶっていて格好いいなと観て思いました。その後、『沈黙しない春』の撮影の時には、広島のデモに参加していることを知らなかったので「あ、三宅洋平だ!」という感じでした(笑)。当時は今と比べて彼のことを追いかけて撮影しているような人も少なかったので、まさに特等席で撮影ができてラッキーだと思っていました。

Q 選挙出馬の話はいつ聞かれたのでしょう。

A杉岡太樹2012年12月の衆議院選挙の時に、山本太郎さんの応援に三宅さんが駆けつけていて、その時に「俺は次の選挙に出る」と公言していました。周りの人も僕もその時は半信半疑でした。それで2013年5月に彼から連絡があって、「選挙の様子を撮ってほしい」という話がありました。

Q 三宅さんの依頼は断ったけれども、本作を撮ることにした経緯をお聞かせください。

A杉岡太樹三宅さんからの依頼は、彼の選挙のチームの一員として映像を撮ってほしい、というものでした。その時点では僕は彼の立候補者としての資質を把握できていなかったし、個人的には頑張ってほしいとは思いましたが、映像作家の立場ではたとえ三宅洋平からの依頼だからといって手放しに撮ろうとは考えませんでした。彼から報酬をもらって撮影するとなると表現の自由も担保されないだろうし、仮に立候補者として自分の評価軸と違うなと思っても止まれないとも思いました。一方で「三宅洋平が選挙に出るということは絶対に面白い」という確信もありました。それで、チームに入ることはできないけれど、僕のやり方で援助も受けずに同行して撮影をさせてほしいと言いました。僕自身はそれが一番の応援になると思いました。というのも、彼の側から撮影をすると、彼を応援している人にしか届かない。だから外側に立って、彼を通していろんなものが見える作品を作りたいと思いました。結果的に、三宅さんは「じゃあやれば」という感じでした(笑)。

Q 密着撮影ということで、撮られていることでの三宅さんの普段との違いなどはありましたか。

A杉岡太樹撮影当初から段々と撮っている僕に意識を向けることがなくなっていったと思います。ただ、僕も段々と彼の魅力に引き込まれてくのを感じていました。それを無理に押し殺すのもどうかと思ったので、その距離感の変化も含めて作品にしようと思いました。お互いに安心はしても油断はしないようにしていましたので、「何かあれば全部撮るよ」と言いましたし、「ここは撮らないで」と言われることもありませんでした。ですので、彼の移動中も寝ている時も一人でいる時もいつも撮っていました。逆にトイレに入る彼から「ついてこないの?」と冗談を言われるくらいでした。彼本人は撮られることが逆に自己防衛になるとも言っていました。いろんな心配事があったようです。それこそ、防刃チョッキを着ようかという話もしていましたし、狙われた時に隣りで僕がカメラを回していれば大丈夫かもと利用していた部分もあったと思います。そこまでの緊張感を僕自身は感じませんでしたけれど、とはいえ戦場カメラマンほどではありませんが、何が起きてもおかしくはないという緊迫感のある17日間でした。

Q この撮影に入る時、完成形は見えていましたか。

A杉岡太樹杉岡太樹最初は何もわからずに撮影に行きました。選挙活動初日の吉祥寺の選挙演説を見て、それでどうするかを決めようと思っていましたので。実はその時点では全日程密着するつもりではありませんでした。それが吉祥寺での“選挙フェス”の様子を見て、これは想像以上に面白いので全部行こうと決めました。ちゃんとPAを入れて音のバランスを取っていたので、何より音が良かったんです。話している内容や選挙フェスという取り組み自体も面白いですけれど、みんながあまり気にしない細部までしっかり考えられていて、ちゃんとアートが宿っているところも面白いなと思いました。

Q 映画は社会派ロックのツアードキュメント風の手触りもありました。

A杉岡太樹そうですね。彼も選挙フェスは政治活動ではあるけれど、やっていることや生きている時間そのものがアートなんだという意識を持っていたと思います。ですので、僕にもツアーに帯同しているような気分がありました。

Q 選挙フェスの様子は音もすごく良かったです。

A杉岡太樹自分ひとりでの撮影でしたので、撮影と録音を兼ねながらでした。そこがすごく難しいところで、映像としてはもっと近くに寄りたいと思っても、音が割れてしまうリスクを考えて留まる、など制限のある中での撮影でした。

Q 撮影を通じて三宅さんの変化は何か感じましたか。

A『選挙フェス!』杉岡太樹段々と手応えのようなものや確信のようなものを感じていたと思います。最初は何が起きるかわからない状態ですし、手探りで始めたと思いますが、日に日に群衆も増えていくし、SNSの盛り上がりも目に見えて分かるようになっていったので、話している内容も先を見越したものに日々進化していました。彼の演説は、その日の朝や選挙フェス終了後などにSNSなどの反響を収集して次に活かしていくやり方でした。コールアンドレスポンスのようでもあるし、即興アートのようでもあったと思います。

Q 監督自身は、三宅さんに対する気持ちの変化はありましたか。

A杉岡太樹撮影中にかぎらず今も日々変化しています。撮影中は彼に引きこまれた部分もありますが、だからといって彼に忠誠を誓うというわけではないです。僕がこの映画で伝えたいのは彼の具体的な政治的主張ではなく、彼がどうやってそれを伝えるのかだったり、今の状況で自分の主張をするためにどういう方法やスタンスでいるのかでした。彼のやり方やスタンスは尊敬している部分もあるし面白いとも思っています。

Q 選挙の結果自体を監督自身はどう受け止めましたか。

A杉岡太樹176,970票という得票数はすごいし、思ったよりも集まったなと思う反面、これだけやってこれしか集まらないのかとも思いました。どうやって自分の気持ちを落ち着かせるか考えたら、やはり「落選」という結果を受け止めるしかないんだと思いました。ただやはり、日によって17万票以上という数字の受け止め方は変わります。ほとんどゼロから17日間であそこまで数字を伸ばしたということについては僕自身、学ぶところがあるなとは思います。何かを表現して共感してもらうという行為については、僕がやっている映画と一緒ですので、彼のやり方の良いところは取り入れたいと思いました。

Q 『選挙フェス!』ではテロップが出てきませんが、表現のこだわりについてはいかがでしょう。

A杉岡太樹テロップは自分が見る側でもあまり好きではないので入れていません。なるべく映像だけで勝負しようということで自分への制約を作ることにしています。面白い発想はその制約があってこそ生まれると思っています。

Q 膨大な撮影だったと思いますが編集が大変だったのでは。

A杉岡太樹それが実はそんなに多くないんです。100時間満たないくらいなので、むしろ素材は足りませんでした。素材が多いとチェックするのは大変ですが結果的に作品は短くまとめられると思います。素材が足りない方がむしろわかりやすく作ることを難しくすると思います。撮影が終わった時に、実はちゃんと編集できるかという不安が大きかったです。

Q ドキュメンタリーという表現への思い入れについてお聞かせください。

A杉岡太樹元々志していたのがドキュメンタリーですが、情報や教養としてのドキュメンタリーというより、実在の人物や世界を使って、ある種の物語を組み立てていくという行為に、責任も重いですが、ワイルドさやヒリヒリするような感触を感じています。それとは別に劇映画にも興味はあります。

Q 今後に向けての気づきはありましたか?

A杉岡太樹彼の選挙活動そのものがアートだと解釈しています。人を集め、人を動かす、という点では学ぶことが多かったです。選挙を見ていて結果を残さなければならないということが自分に大きな影響を与えました。より広くの人に伝えるために彼がどんなアクションをしたのか、どういう表現をしたのかは、僕の映画作りの表現とも共通なので、いい部分は盗めたとも思います。それと今回の映画では責任感を強く感じました。多くの人が支持していますし、その現象を僕が題材として担うのがプレッシャーでした。彼を応援している人をがっかりさせないように、そういうプレッシャーを感じながら製作できた点が自分にとってプラスだったと思います。

Q OKWaveユーザーにメッセージをお願いします。

A杉岡太樹三宅洋平さんのことを好きでも嫌いでも自由な解釈でこの映画に意味を植え付けてくれると製作した人間としては嬉しいです。映画は観てもらって初めて完成だと思いますので、僕も思ってみなかった感想などを発信していただいて、この映画を完成させてもらいたいです。僕も楽しみにしています。

Q杉岡太樹監督からOKWaveユーザーに質問!

杉岡太樹皆さんは三宅洋平さんのことをどう思いますか?

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■Information

『選挙フェス!』

2015年7月4日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開

2013年7月に行われた参議院選挙。緑の党から推薦を受けて立候補したミュージシャンがいた。三宅洋平、34歳。地盤もなければカネもない、公示当初は「売名行為」と揶揄された新人候補は、音楽と演説を融合させた“街頭ライブ型政治演説”を「選挙フェス」と称して全国ツアーを敢行する。この前代未聞の選挙運動は、インターネットからうねりを起こし、路上に多くの観衆を集め、結果的に落選候補最多の17万6,970票を集めることになる。
本作は17日間26ヶ所を巡る三宅の旅に完全密着。群衆に訴えかけたコール&レスポンス、政治参加へのアプローチ、その裏側で未経験の選挙に苦悩し、怒り、歓ぶ等身大の三宅の姿を捉えた。「政治をマツリゴトに」をスローガンに、多くの人の心を奪った“新たなカリスマ”の素顔。三宅洋平とは、何者だ?

出演:三宅洋平
監督・撮影・編集:杉岡太樹
製作・配給:mirrorball works

http://senkyofes.com/

© 2015 mirrorball works


■Profile

杉岡太樹杉岡太樹

1980年神奈川県生まれ。
2001年より渡米、School of Visual Arts(ニューヨーク)にて映画製作を学ぶ。第84回アカデミー賞ノミネート作品の『もしもぼくらが木を失ったら』や、日米で異例のヒットとなった『ハーブ&ドロシー』などの制作・配給に参加。2010年より拠点を東京に移し、“脱原発デモ”の萌芽を追ったドキュメンタリー『沈黙しない春』で2012年に長編映画デビュー。現在、ブラインドサッカー日本代表チームを追った次回作を製作中。

http://taikisugioka.jugem.jp/