OKWAVE Starsは、ここでしか読めない、俳優・女優、映画監督、アーティストへのインタビューと、彼らからの「質問」に「回答」できるOKWAVEの特別企画です。

OKStars Vol.471 映画監督 羽野暢

OKStars Vol.471は『THE HYBRID 鵺の仔』(2015年7月25日公開)にて長編商業映画デビューを果たした羽野暢監督へのインタビューをお送りします。

Q 『THE HYBRID 鵺の仔』の最初の企画の経緯をお聞かせください。

A羽野暢本作の倉谷宣緒プロデューサー兼共同監督が代表を務めているベンテンエンタテインメントの「短編映画プロジェクト」の中で僕が『水銀柱の恋』という短編作品を提供していて、それを観た倉谷さんから長編の企画を打診されました。また、その話が出る直前には、大阪市の支援を受けて製作した『モスリン橋の、袂に潜む』という作品を公開して、DVDをベンテンエンタテインメントから発売したところでした。それが2011年3月の話で、次の一手としてどうか、ということでこの企画が始まりました。
一方でベンテンエンタテインメントでやっていた「リアルオーディション」という企画の合格者を使った作品を作りたいという話もあって、そちらと組み合わせて、最初は温泉ものの企画として始まりました。なので今とはまったく違った内容でクランクインする予定でした。それがいったん「鵺啼くカルデラ」というタイトルの映画作品として2011年の7月にクランクインすることになりました。

Q ここで「鵺」という日本古来の妖怪にフォーカスしたのはどういったきかっけなのでしょう。

A『THE HYBRID 鵺の仔』羽野暢鵺はサルの顔、タヌキの胴体、トラの手足、ヘビの尾を持つ妖怪と言われていますが、ロケの協力をしていただいた万座温泉には鵺の正体とされるトラツグミという鳥の鳴き声をよく聞いたという伝承が郷土史に書かれていて、以前から鵺という存在には興味があったので映画で使いたいと思いました。「鵺の姿は誰も観たことがなく、声だけ聞いたことがある」という伝承が特徴だったので、2011年のロケの時にも鵺自身は登場せず、声だけは聞こえる、ということで製作していました。ですが、そのままではしっくりこなかったので、2014年になってから倉谷さんから鵺を実際に出して追加撮影をしよう、と提案されて、そこから鵺が実際に出てくる今の形になっていきました。
それで特殊メイクで著名な梅沢壮一さんに鵺の着ぐるみの特殊造形を担当していただいて、撮影が実現しました。

Q 2011年に撮影された元々の話があって、そこに鵺が登場する話が加わっていったのですね。

A『THE HYBRID 鵺の仔』羽野暢そうです。タイトルの「THE HYBRID」とも連動しますが、最初に撮影した話と鵺が出てくる話をかけ合わせる際に、新たな登場人物を出してふたつの話を合体させようと決めました。双方の話の核になるのが、黒沢あすかさんと柴田光太郎さんの演じた大人の男女です。石橋穂乃香さんの演じた話と、山村憲之介さんの演じた話がこのふたりのところで結びついているわけです。そういうつもりじゃなかったのにつながっていくところが映画作りの面白いところだとも思っています。結果的に、当初考えてもいなかったところで、登場人物にも深みが出ました。

Q そのようにいろいろなものが組み合わさっていく時には、どのように整理されていったのでしょう。

A『THE HYBRID 鵺の仔』羽野暢はじめから決まっていたわけではなく、鵺を実際に出す、それを追う人物が出てくる、鵺が出現するのは皆既月食の時である、といったように、出てきたアイディアをはめ込んでいく作業でした。たとえば、2011年に撮影したシーンの中に、石橋穂乃香さん演じる主役チアキの友人のマイが大人の逢い引きを盗み見るシーンがあって、そこを実はもうひとつのストーリーの主役である京極編集長から依頼を受けて調査している、ということにすれば、ふたつの話に接点ができる、といった感じでふたつの話をつないでいきました。なので、2011年の撮影部分を使いつつも、役柄の意味合いが大きく変わっていたりします。

Q 鵺と京極編集長の対決についてはいかがだったでしょうか。

A羽野暢ストーリーとしてのつながりよりもシーンとしての面白さを追求しようと思いました。この鵺との対決は、本当に起きていることなのか分からない、白昼夢のような出来事にしようと思って、擬似夜景という手法を使っています。日中に露出を低めに撮影をして夜っぽく見せるという撮り方なので、月食が起きている間という設定ですが、本当の夜ではなく、映像的にも不思議なものができたと思います。
もし最初からこの完成作品の企画を出していたらそもそも通らなかったと思います。いまどき着ぐるみの妖怪と戦う映画ですからね(笑)。結果的にはこの映画にとってベストな道筋になったのだと思います。とはいえ、着ぐるみを着ていただいた柴田光太郎さんは追加撮影の展開にはびっくりしていました(笑)。でも本人が熱演していただいたけたので良かったです。
実はその後にさらに追加撮影を行っていて、僕としてはさらに好きな方向になっています(笑)。

Q 『ウルヴァリン:SAMURAI』『GODZILLA ゴジラ』の山村憲之介さんの出演についてはどういった経緯からでしょうか。

A『THE HYBRID 鵺の仔』羽野暢キャスティングについては倉谷さんからの推薦ですが、ハリウッドで自ら売り込みをしてデビューを果たした面白い役者がいるということで紹介されました。京極編集長の設定は40歳前後だったのでちょっと若すぎるかなとは思いましたが、お会いしてみるとしっかりした存在感があったので彼なら大丈夫だと思って起用しました。

Q 研ナオコさんの出演は、それ自体が見どころかと思いますがいかがでしょう?

A『THE HYBRID 鵺の仔』羽野暢研ナオコさんは少ないシーンの中、圧倒的な存在感で演じていただきました。非常に説得力がある役柄だと思います。出演に加えて、「竹田の子守唄」という挿入歌を歌っていただいています。それが素晴らしかったですし、その歌が流れる哀愁ただようシーンは見どころのひとつだと思います。その歌は、映画の中盤の別のシーンではエンディングテーマを担当している研ナオコさんの実の娘さんでもあるひとみさんが歌っていて、そこの聴き比べも見どころだと思います。

Q 追加撮影を経ての公開を迎えるにあたって、思うところをお聞かせください。

A羽野暢自分では4年もかける気はありませんでしたが、本作は自分でも意図しない方向に進んでいきました。最初に計算した通りに作るのも映画の面白さのひとつですが、自分が思ってもいない方向性に転がっていくのも映画の面白さのひとつだと思っています。新しいアイディア、しかも最初からだったら通らなかったような企画を取り入れて完成させた作品はあまり無いとは思います。逆に4年かけないとできなかったとも思います。

Q 羽野監督自身が映画監督を目指したきっかけについてお聞かせください。

A『THE HYBRID 鵺の仔』羽野暢元々映画が好きで大学生の時に映画サークルに所属していました。大学卒業後は映像関係の会社で働いていた時期もありましたが、映画監督への道を模索し続けて、会社を辞めて短編を1本撮りました。その短編で大阪市の映画祭で賞を獲って、大阪市の支援で『モスリン橋の、袂に潜む』を撮ることができたのがきっかけですね。それがなかったら、今の自分がいるかは分からないです。『モスリン橋の、袂に潜む』は実際には低予算ですが、美術などにこだわってバジェット以上の世界観を撮ることができたので、それが次に声を掛けてもらうことにつながったのかもしれません。今作へのつながりという意味では、その後、短編『水銀柱の恋』を制作するなど、作品を作り続けていたのが良かったとも思います。

Q 今後挑戦していきたいことは?

A羽野暢1年に1本は作っていこうと思っています。今はデジタルの時代で1カットを長く撮ることができますので、長いカットを積み重ねた映画を撮ってみたいと思います。どこかの街に協力してもらって、1カットで20分みたいなものを、太陽の位置や時間帯なども全て計算して撮る、というようなことをやってみたいです。役者さんたちの力は余計に必要になりますが、芝居の間などもよりリアルになると思います。あとは、ファンタジーを作っていきたいですね。リアルな世界を舞台にしていても、その延長線上にあるファンタジックな要素というのが映画の醍醐味だと思いますので。

Q 『THE HYBRID 鵺の仔』の見どころと監督からのメッセージをお願いします。

A羽野暢ラスト20分が想像していなかった展開になりますのでそこは見どころです。極力CGを使わないアプローチで、僕の世代が子どもの頃に見ていたようなアナログな作り方でアプローチしています。CGとは異なる存在感を感じていただけたらと思います。

Q羽野監督からOKWaveユーザーに質問!

羽野暢皆さんの身近なところで見聞きしたことがあるUMA(未確認生物)の話があったら教えてください。

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■Information

『THE HYBRID 鵺の仔』

『THE HYBRID 鵺の仔』2015年7月25日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷にて夏休み公開
Japan Film Festival Los Angeles 2015(ロサンゼルス日本映画祭2015)正式招待作品

OLのチアキは、親友の記者・マイを連れ、故郷である温泉郷・鵺ヶ淵へ向かっていた。母ヨシコが、そこで古い温泉宿を経営しているのだ。チアキには秘密にしている過去があった。12年前に父親が、ヨシコに想いを寄せる男、澤津久森によって殺されたのだ。
だがヨシコはひとり、鵺ヶ淵で澤津久森の出所を待ち続けていた。
時同じくして、へんぴな山奥にある洋館に、巨大な柩を運び入れる男たちがいた。未確認生物UMAを専門に扱う三流誌の編集長・京極とその部下である。柩の中には、異形の化物が経文により生きたまま眠らされていた。
京極にはもう一つの顔がある。怪物を捕獲するUMAハンターとしての顔だ。京極は般若心経に身を包み、源頼政が使用したといわれる弓を武器にUMAを狩っては、ボスである「マダム」に差し出してきた。マダムは、新鮮な怪物を食べ続ける事で若さを保ち続ける謎の老女であった。マダムは言う「一刻も早く鵺を目の前に差し出せ」と。
鵺。古くは古事記に登場する日本古来のUMA。顔は猿で体は狸、手足が虎で尻尾は蛇。そんな化物の血を引く人間が生存しているといわれる秘境があった。それこそが鵺ケ淵であった。
怪物の血を引く人間は繁殖期に怪物の姿に戻る。鵺の繁殖期である月食の晩に狙いを定め、京極は鵺ケ淵を目指す。
やがて月食が訪れ、その闇の下、人々の想いの交錯する戦いが幕を開ける!

羽野暢&倉谷宣緒 共同監督作品

石橋穂乃香 山村憲之介 柴田光太郎 大島葉子
瀬戸祐介 藍田 舞 むとう水華 千葉美紅
と も こ 中村邦晃 記井沙也佳 青木和枝
研ナオコ 黒沢あすか

オープニングテーマ「鵺退治」德將城(正伝士風薩摩琵琶 士弦会)
主題歌「Lonesome Call」ひとみ

ホームページ:http://www.benten.org/nue/


■Profile

羽野暢

羽野暢1979年大分県生まれ。
立命館大学文学部卒。2004年、自主制作で中編映画『雨池十八丁目の淵の中』を監督、第一回シネアスト・オーガニゼーション・大阪エキシビジョン(CO2)オープンコンペ部門にてグランプリを受賞。2006年、大阪市の支援のもと、長編映画『モスリン橋の、袂に潜む』を制作(2011年公開/DVD発売)。2010年、短編映画『水銀柱の恋』を制作。また、朗読劇「田辺聖子の世界」をはじめ、舞台の脚本・演出も行う。
【主な映画作品】『モスリン橋の、袂に潜む』『水銀柱の恋』
【主な舞台作品】朗読劇『田辺聖子の世界』『春琴抄』『曾根崎心中~愛の呪縛』