OKWAVE Starsは、ここでしか読めない、俳優・女優、映画監督、アーティストへのインタビューと、彼らからの「質問」に「回答」できるOKWAVEの特別企画です。

OKStars Vol.474 女優 工藤夕貴

OKStars Vol.474は2015年8月8日より公開中の映画『この国の空』についての工藤夕貴さんへのインタビューをお送りします!

Q 『この国の空』の作品の印象をお聞かせください。

A工藤夕貴今までになかった戦争映画だと思います。戦争映画というと泣かさなければいけないような使命感があったりしますが、『この国の空』には、そういうものが無いんです。背景が戦争の時代ということだけで、そこにいる人間がどう生きていくのか、どういう風に成長したり人を愛していくのかが普遍的に描かれています。戦争映画だけど誰も血を流さないですし、いつ自分が死んでしまうのか、いつ誰かを亡くしてしまうかという切ない空気感はあっても、観る人を泣かそうとせずに、不意に胸に突き刺さってくるような、独特の空気感のある新しい切り口の映画だと思います。台本の時からそう感じていたので、どうしてもこの役を演じたいと思いました。

Q 里子の母・蔦枝役の性格や人物像をどのように感じましたか。

A『この国の空』工藤夕貴娘の里子は、女性として一番衝動的になる時期に同年代の男の子が周りにいなく、目上の方しか本土に残っていない中で、市毛という、結婚してはいるけど魅力的な男性と出会います。里子から見た市毛は父親くらいの年代なので、そういう男性に惹かれてしまう気持ちは良くわかりますし、ある意味、等身大という感じがします。

私の役は面白いキャラクターだと思います。このお母さんはちょっと余裕があるんです。家賃収入で食べていくことができるのと、女性としての自分を持っているのだと思います。娘に恋愛をさせるのも、ある意味、自分を重ねている部分もあるんだろうなと思います。自分に出来ないことを娘がやってくれるんじゃないかと疑似体験的に見ていたりもするんだろうなと。「こんな時代だから娘をよろしくお願いしますって、頭を下げに行きたいくらい」という台詞が理解できなくて、母親としてどうなんだろうと思って監督に質問したこともありましたが、監督からは、「里子が恋愛のひとつもせずに戦争で死んでいってしまうのは、あまりにも不憫だと思う気持ちがあるから、娘のことをよろしく頼むという気持ちもある」と説明されて納得しました。娘に自分を重ねて見ているところもあるから、娘が女性として変化していく様子を自分に重ねてやきもち焼きつつ複雑な気持ちで見ている、ちょっと変わったお母さんなんだと思います。私自身、こういう母親もありなんだろうなと理解できるところもあって、娘にとって母親は「女」であってほしくないと思うのですが、蔦枝は里子に自分が女性だということを平気でぶつけていくので、面白いな、と思いながら演じていました。しかも優しいのかなと思っていたら、お姉さんがご飯の豆をつついていたことに腹を立ててみたり、意外なところで人間くさかったり、普通の映画では描かないところが出てくるのがこの映画の魅力だと思います。

映画のキャラクターは、いい人役と悪役がはっきり分かれることが多いのですが、私の役も富田靖子さんの演じた姉の瑞枝役も善悪両面を持っていて人として生々しいんです。お姉さんが「百姓なんてがめついんだからだまされないようにしなさいよ」とか「爆弾が落ちて私と同じ目に遭えばいい」とか、普通は、悪役以外が言わないようなことを平気で描くのが、荒井晴彦さんの脚本の魅力なんだと思います。戦況はどうあれ毎日暗い顔をして生きているわけでは無かったかもしれず、恋愛もしただろうし、不倫もあっただろうし、逆に追い込まれていく中で、そういうものに身を委ねたりすることもあったり、そうやって、実は、みんな逞しく生きていたのでは、と思わせてくれます。

Q 食事のシーンがたびたび出てきましたが毎回どのように演じたのでしょう。

A工藤夕貴出演者としては、次は何の料理が出てくるんだろうと楽しみにしていました(笑)。
食事のシーンは、みんな無防備になるから人柄が出るんです。実際に食べる芝居が出てくることで演技ばかりに頭がいかなくなるので、考えずに芝居をするから演技以上のことが出てきます。

Q 二階堂ふみさんとの母娘の役の関係はどのように作っていきましたか。

A工藤夕貴役柄の話はそんなにはしませんでしたけど、よく群れていました(笑)。彼女はいい意味でハングリーさがあり、本当に面白い女優さんです。初めて会った時に、私に英語で話して欲しいと言ってきて、私もそういうのに抵抗感が無いし、英語は、便利な言語で、例えば先輩と後輩のような垣根を取っ払った本心で会話ができるので、早くに気持ちが通じ合えるようになりました。それで二階堂さんとは、近しい存在になれたし、ハグしたり、手をつないで歩いたりすることもあったので、母娘の関係を無理に作らなくても、自然と心がつながっている関係を出すことができました。私は二階堂さんのことをステーキガールと呼んでいて、彼女は私のことをベジマムと呼んでました。私が野菜をよく食べていて、彼女は肉好きだからなんですけど、いまだにそういう風に呼び合っています(笑)。

Q 長谷川博己さんとの芝居についてはいかがだったでしょう。

A工藤夕貴共演シーンは、それほど多くなかったのですけど、ご一緒して感じたこととしては、役者として、役をとても深く掘り下げ役作りをされていていると感じ、そこに、感動しました。

Q 戦後70年という時期に、戦争を知らない世代の方々にどう観てほしいですか。

A『この国の空』工藤夕貴私は、戦後50年くらいのタイミングで戦争映画(※『戦争と青春』1991年)に主演させて頂いたのですが、当時は戦争を実際に知っている世代の方々がたくさんいましたので、台本にある戦中の話が当たり前のように成り立っていました。『この国の空』の脚本と監督の荒井さんも、その世代に近い方なので、すごくリアリティーがあります。出演者も本当の戦争を知っている世代に近い方が多いですし、二階堂さんも当時の映画などを見て所作を研究したと言っていましたので、そういうところからも良い意味で現代っぽさがないと思います。今回は斬新な戦争映画ですけど、メロドラマのようにならないのは、そういう戦時中のリアリティーを知っている方たちの存在が大きいですね。利重剛さんにしても石橋蓮司さんにしても奥田瑛二さんにしても、ひとりひとりが主役級の方たちなので、演じられた、ひとりひとりのキャラクターが実際にいたのでは、と信じられる様なクオリティーで、独特の空気感が出ていると思います。

Q ちなみにハリウッド映画にも出演されていて、日本の描かれ方について感じることはいかがでしょう。

A工藤夕貴違和感はよく感じますが、日本のために作られた映画ではなく、アメリカ人の為の映画なので、それはそれで仕方ないことですね。最近は、史実も含めて違和感がないようにしようとはしていますけれど、日本を描くなら、やっぱり日本映画です。ただ、自分の役はある程度は自分でコントロールできるので、出来るだけ違和感が出ないようにはしています。

Q OKWaveユーザーにメッセージをお願いします。

A工藤夕貴観るということは、体験につながることだと思います。「百聞は一見にしかず」という言葉がありますが、その時代に懸命に生きた人たちの上で今の日本があって、私達がいるんだ、ということを感じることは、すごく大切なことだと思います。『この国の空』は、戦争映画でもありますが、ヒューマニティーを描いた映画だと思います。人が生きるということに、どれだけ真っ直ぐになれるか、を問いかけているので、戦争ということだけではなく、人を感じてほしいです。明日がどうなるか分からない、という当時の時代背景も、今も変わっていないということも伝えたいです。いまは平和だと言っても、いつ覆るか分からないですし、どう生きるのかを考えることは、人としてより豊かになれる機会になると思います。映画らしい映画なので、ぜひ映画館で観て頂きたいです。

Q工藤夕貴さんからOKWaveユーザーに質問!

工藤夕貴もしも戦争が起きて、自分が戦地に行かなければならなくなった時に、その前にこれだけはやっておきたいことは何でしょう?

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■Information

『この国の空』

『この国の空』公開中!

1945年、終戦間近の東京。
19歳の里子は母親と杉並区の住宅地に暮らしている。
度重なる空襲に怯え、雨が降ると雨水が流れ込んでくる防空壕、日に日に物価は高くなり、まともな食べ物も口には出来ないが、健気に生活している。
妻子を疎開させた銀行支店長の市毛が隣に住んでいる。
里子の周りでは日に日に戦況が悪化していく。
田舎へ疎開していく者、東京に残ろうとする者…。
戦争が終わると囁かれはするものの、すでに婚期を迎えた里子には、この状況下では結婚などは望めそうもない。自分は男性と結ばれることなく、死んでいくのだろうか。
その不安を抱えながら、市毛の身の回りの世話をすることがだんだんと喜びとなり、そしていつしか里子の中の「女」が目覚めていくのだが…。

二階堂ふみ 長谷川博己 富田靖子 利重剛 上田耕一 石橋蓮司 奥田瑛士 工藤夕貴
脚本・監督:荒井晴彦
原作:高井有一「この国の空」(新潮社)
詩:「わたしが一番きれいだったとき」茨木のり子

配給:ファントム・フィルム KATSU-do

公式サイト:kuni-sora.com

©2015「この国の空」製作委員会


■Profile

工藤夕貴

工藤夕貴1971年1月17日生まれ。
1984年『逆噴射家族』(石井聰亙監督)で映画デビュー。その後『台風クラブ』(85/相米慎二監督)に出演。その体当たりな演技で女優として国内外で注目を集めた。以降、海外へも活躍の場を広げ、『ミステリー・トレイン』(89/ジム・ジャームッシュ監督)、『ヒマラヤ杉に降る雪』(00/スコット・ヒックス監督)などに出演。『戦争と青春』(91/今井正監督)では日本アカデミー賞主演女優賞を受賞。近年では、『SAYURI』(05/ロブ・マーシャル監督)、『佐賀のがばいばあちゃん』 (06/倉内均監督)、『ラッシュアワー3』(07/ブレット・ラトナー監督)、『リミッツ・オブ・コントロール』(09/ジム・ジャームッシュ監督)、『座頭市 THE LAST』(10/阪本順治監督)、『カラカラ』(13/クロード・ガニオン監督)、『りんごのうかの少女』(13/横浜聡子監督)など、国内外問わず映画作品に出演し、注目を浴びている。

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