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Vol.502 映画監督 ベント・ハーメル(『1001グラム ハカリしれない愛のこと』)

OKStars Vol.502は『1001グラム ハカリしれない愛のこと』(公開中)のベント・ハーメル監督へのインタビューをお送りします。

Q 国立計量研究所で働く主人公という設定や、そこから人間関係の距離感のようなものを描いた本作の狙いについてお聞かせください。

A『1001グラム ハカリしれない愛のこと』ベント・ハーメル仰るとおり人間関係や孤独、主人公に限って言えば社交性にやや欠けていたり、離婚問題や父との死別といった悲しみ、というものを描いています。「計量」という科学の世界を探求していく作業が僕には楽しかったです。ノルウェー国立計量研究所や、実際にパリにある国際度量衡局で撮影することができ、それも面白かったです。
重さをはかる仕事をしている人は普段から人の何かをはかっているのかと思っていましたが(笑)、やはり独特な方が多かったです。実際に彼らに話を聞くと、「キログラム原器」というものを無くしてしまった国もあるそうで、科学者であってもそういう失敗もするわけです。この重さの定義を仕事にしている人も日々の生活を営んでいる普通の人で、彼らと我々を分けることはできません。それで、私の描いたストーリーと学者の日常が交じり合って、結果的に人間を描いた、人と人との関係性の話だったり、生きるというテーマになりました。
役者が役者である前にひとりの人間であるように、科学者も同様です。永遠や死に恐怖を感じたり、どこかで自分たちを測る物差しを求めてしまうものです。この世界をひとつの枠にして人はどうしてそういうものを求めてしまうのかを掘り下げました。同時に面白いのは計測の単位は7つありますが、最後まで定義することが難しいものがキログラムなんです。実際に1キログラムの新しい定義をめぐって議論が毎年続いているんです。

Q 「人生で一番の重荷は背負うものが何もないことだ」というセリフをはじめ、印象的なセリフがたくさんありますが、監督の想いはどんなところにあったでしょうか。

Aベント・ハーメル僕の人生の何らかがセリフには表れていると思いますが、このセリフに関してはノルウェーの詩人の言葉です。新聞記事で見かけて、このストーリーに合っていて良いなと思って使わせてもらいました。

Q ノルウェーを青を中心とした寒色系の色で表現されて、パリの町並みを暖色系で表現していた狙いなどお聞かせください。

A『1001グラム ハカリしれない愛のこと』ベント・ハーメル色使いは綿密に計画し、25年来一緒に仕事をしている撮影監督と色のムードを決めていきました。どんなに画角的に美しい画が撮れても、ストーリーを支えるものでなければ何の意味も持ちません。主人公の心の変化、あるいは内なる旅を表現できているのかということが大切なんです。もちろん、普通に撮っても北緯にあるノルウェーの町並みは寒色系になるし、パリはより暖色系にはなります。それよりも彼女の心模様をいかに表現できているかです。彼女は人生に対してイエスと言うことにずっと抗っています。自分の馴染みのある指標にしがみついて生きていて、最後にようやくそこから離れることができるわけです。そんなところをノルウェーと心境が変化した後のパリの色使いで表現しています。
それに合わせた裏話ですが、ノルウェー国立計量研究所はもともと北側が赤で南側が青という色彩設計がされた建物でした。でも、北側で撮影するときも赤い柱を青くして撮るなどの工夫もしています。それと実際のノルウェーはこの映画での色使いのような状況ではないと思いますよ(笑)

Q アーネ・ダール・トルプら、役者への演出についてはいかがだったでしょう。

A『1001グラム ハカリしれない愛のこと』ベント・ハーメルアーネは本当に素晴らしい役者で、プロフェッショナルであると同時に撮影の色々なアイディアにオープンでいてくれる女性です。主人公のマリエが人生にイエスと言えるまではとにかく抑えていこう、と話し合いました。スマイルを小出しにした方がもしかしたら娯楽性は増したかもしれませんが、抑制する方向で行き、最後に朗らかな姿を見せることにしました。それとパリで出会う相手役のパイは普通の男にしました。実は配給会社などからはもう少しイケメンの方が良いのでは、という意見もありました(笑)。でも、普通であることがより大切だと思ったのは、だからこそマリエが話を聞く気になっただろうし、彼女が変化していく存在になれたと思います。彼女の孤独やネガティブなところを長く見せるのはリスクのある選択でしたが、それでも私はそういう映画を作りたいと思いました。
それと、撮影前には知らなかったことですが、実はアーネは語学に堪能で、フランス語もできました。最初、パリでのシーンも英語で脚本を書いていましたが、それが分かったのでフランス語も取り入れることができたので、より良いシーンにできました。
自分にとっては初めての女性主人公ですが、彼女の持っている孤独というものは女性特有のものというよりも人間誰しもが抱えているものだと思っています。

Q 東京国際映画祭では審査員を務められましたが楽しめましたか。

Aベント・ハーメル世界中の映画を観ることも楽しんでいますし、バックグラウンドの違う他の審査員たちと観ていられるのも楽しんでいます。審査員を務めることはあまりないんですよ。日本は4回目ですが、東京以外には京都に2日間行ったことがあるだけなので、日本の他の場所にも行ってみたいですね。

Qベント・ハーメル監督からOKWAVEユーザーに質問!

ベント・ハーメル皆さんにとって、“愛の重さ”はどのくらいですか?

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■Information

『1001グラム ハカリしれない愛のこと』

『1001グラム ハカリしれない愛のこと』Bunkamuraル・シネマほか全国公開中

マリエは、ノルウェー国立計量研究所に勤める科学者。スキージャンプ台の長さからガソリンスタンドの計器のチェックまで、あらゆる計測に関するエキスパートだが、結婚生活は規格通りにゆかず、現在離婚手続き中。そんな折、重さの基準となる自国の《キログラム原器》を携えてパリでの国際セミナーに代理出席することになる。1キログラムの新しい定義をめぐって議論が交わされるパリで、”パイ”という名の男性と出会うマリエ。パリの街角で見つけた、今までの幸せの基準を一新する、心のハカリとは?

監督・脚本・製作:ベント・ハーメル
出演:アーネ・ダール・トルプ、ロラン・ストッケル、スタイン・ヴィンゲ
配給:ロングライド

公式サイト:http://1001grams-movie.com/

BulBul Film, Pandora Film Produktion, Slot Machine (c) 2014


■Profile

ベント・ハーメル

ベント・ハーメル『1001グラム ハカリしれない愛のこと』1956年、ノルウェー、サンネフィヨルド生まれ。
北欧を代表する映画監督のひとりであり、脚本家・プロデューサーでもある。作品は、50以上の国で劇場公開され、世界各地の主要な映画祭で受賞し、権威あるアマンダ賞(ノルウェー・アカデミー賞)でも6冠を獲得。2013年には彼自身に同賞の名誉賞が贈られた。ノルウェー映画批評家賞を3度受賞した最初の監督でもある。 長編監督デビュー作『卵の番人』はカンヌ国際映画祭の監督週間で国外初上映され、トロント国際映画祭FIPRESCI(国際映画批評家連盟)賞、アマンダ賞作品賞などを受賞。スウェーデン人とノルウェー人の男性ふたりの風変わりな交流を描いた第3作『キッチン・ストーリー』で2度目のアマンダ賞作品賞をはじめ多くの賞を獲得。定年を迎えた生真面目な鉄道運転士の人生初の脱線を描いた第5作『ホルテンさんのはじめての冒険』も好評を博した。本作は、『キッチン・ストーリー』『ホルテンさんのはじめての冒険』に続いてアカデミー賞外国語映画部門ノルウェー代表作品に選ばれた。また、アマンダ賞の主要6部門にノミネートを果たし、見事に脚本賞を受賞した。