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Vol.505 映画監督 サイモン・カーティス(『黄金のアデーレ 名画の帰還』)

OKWAVE Stars Vol.505は『黄金のアデーレ 名画の帰還』(2015年11月27日公開)のサイモン・カーティス監督へのインタビューをお送りします。

Q 監督はマリア・アルトマンさんのどんなところに心が動かされたのでしょうか。

Aサイモン・カーティスマリアのことは映画になる話だと思いました。ドキュメンタリーでは捉えきることができない、閉じたドアの向こう側へ映画は連れていくことができますので。私は彼女の強さや勇気のあるところに惹かれました。また、20世紀初頭の美しいウィーン、そしてそのウィーンが第2次世界大戦によってひどくなっていく姿、そして現代のアメリカ。これらをリンク付けて描くことができる作品になると思いました。

Q キャスティングについてお聞かせください。

A『黄金のアデーレ 名画の帰還』サイモン・カーティスマリア役にヘレン・ミレンをキャスティングするのは天才ではなくてもできると思いますが、彼女が私と同じくらいこの映画に対して熱意を持ってくれたのがとてもありがたかったです。また、私たちはライアン・レイノルズを起用することができてラッキーでした。ランディ・シェーンベルク本人とはかなり見た目が違いますが、ランディ役は自分を発見していく旅に出るアメリカ人を代表するような若者像にしたかったのです。ヘレンもライアンも見た目のイメージとは違うのですが、優しげな雰囲気は同じでした。ですので、このふたりをキャステイングできてとてもラッキーでした。
撮影初日からヘレンとライアンはすごくうまくいったので、その二人の関係性も映画に反映されていると思います。ユーモアや温かい人間味のあるところが出ていると思います。

Q ライアン・レイノルズの素晴らしい芝居をどう演出されたのでしょう。

Aサイモン・カーティス役者と脚本と監督の協力体制によるものだとは思います。ライアンの中には甘い優しいところと知的なところがあるので、それを引き出しました。

Q ヘレン・ミレンの起用について、とくに監督が良かったと思うことは?

A『黄金のアデーレ 名画の帰還』サイモン・カーティス実は私は10代の頃にヘレンの出演舞台でお茶出し係をしていたこともあって、彼女とは長年の知り合いなんです。なので、こういう形で一緒に仕事ができてとてもエキサイティングでした。脚本が完成して、ヘレンと読み合わせをした時の、彼女の本能的な演技に対する感覚が素晴らしかったので、その時に彼女が示したものを取り入れたいと思いました。また、ヘレンはマリアをとてもユーモラスな人物にすると同時に怒りを抱えている人物だとも感じていて、その要素も取り入れようと思いました。

Q シリアスなストーリーとユーモア溢れる会話のバランスはどのような考えだったのでしょう。

Aサイモン・カーティスある意味、この映画は“おかしな二人の話”とも言えます。シリアスでエモーショナルなストーリーですが、ヘレンとライアンがお互いにユーモアな会話で楽しんでいた関係性が現場にあって、それがスクリーンにも出ているのだと思います。

Q 事実を基に映画化する際に監督が心がけていることは何でしょう。

Aサイモン・カーティス真実を伝える部分とエンターテインメントとしてのバランスをとっていくのがこういう映画に必要なことだと思います。ホテルでのランディとマリアの会話など、細かいことが全部正しいかは分かりませんが、ワシントンD.C.でプレミア上映をした時にランディ本人からは「本質的に正しい」と言われましたので、非常に誇りに思っています。

Q マリアの現在と過去が描かれますが、マリアが過去に向き合う距離感をどう描きましたか。

Aサイモン・カーティスマリアはウィーンに住んでいた子どもの頃、第2次世界大戦の頃、そして老年になってカリフォルニアに住む3つの時代を描いています。彼女のような人生を考えると、訪れたい過去と見たくない過去があると思います。それを過去を描く上で表現していこうとしました。過去の道のりを辿って、「黄金のアデーレ」を取り戻すという間違いを正す行為と、これ以上痛みを見たくない、という感情の両面があります。ですので、この物語はドイツとユダヤ人ということに限らず、家族と離れなければならかなったことなど、全ての人に当てはまる普遍的な出来事だと思います。非常に痛みが伴う人生だったわけですが、彼女は幸運にも長生きできて、カリフォルニアに住んでからはかなり幸せな人生だったと思います。ですが常に家族との記憶もあったわけです。映画の最後で家族に別れを告げた場面は、この映画で最も伝えたかったところです。

Q 絵画の返還をめぐっての法廷劇や国外逃亡のシーンではスリルも満点で、作品全体としてはどのように構成していきましたか。

A『黄金のアデーレ 名画の帰還』サイモン・カーティス確かに違うタイプの映画の要素がたくさん入っています。“おかしな二人組”の要素、ある種のラブストーリー、そして逃亡劇。この映画はそういうエンターテインメントの要素もありつつ、何が大事なことなのか、ということを描いています。というのも、最近の映画は何も語っていないコミックのような映画が多いので、何が大切なことなのかを描きたいという想いがありました。私たちは21世紀に生きていますが、20世紀に起きた戦争のことを忘れないように、というメッセージを込めています。それはナチスに限らず、人種や宗教や性別、年齢、様々な理由を挙げて差別をするのは危険であると伝えたかったのです。それをなるべくエンターテインメントの要素も入れつつ、メッセージとして語りました。

Q 撮影をしていて印象的だったエピソードは?

Aサイモン・カーティスロンドンでの撮影の時です。その日にヘレンとライアンが車内でチョコレートドーナツを食べるシーンを撮りました。そして同じ日にクリムトが絵を描いている1907年のシーンも撮りました。同じ日に100年以上も時代が変わって、舞台設定もカリフォルニアとウィーンだったので、撮りながらとても奇妙だと思いました(笑)。

Q ナチスに接収されて、いまだ返還されていないものがまだまだある、ということをメッセージとして入れた意図は?

Aサイモン・カーティスこの話をどのように位置づけるかが大事だと思いました。たまたま、この映画の事例は有名な裁判でしたが、他にもまだ解決していない同じような事例がたくさんあるということを明確にすることが大事だと思いました。

Q 監督は映画化に際して実在の人物を取り上げることが多いのかと思いますが、どのようなところに心惹かれるのでしょうか。

A『黄金のアデーレ 名画の帰還』サイモン・カーティス人々は実在の人物に興味を持っていると思います。最近成功している映画にしても、本当の話を映画化しているものが多いですよね。私はその人物がどういう人物だったのかリサーチしていくのが大好きです。こういう映画を作る上では勝手に話を作ってはいけないので、その点には大変さもあります。

Q サイモン・カーティス監督からOKWAVEユーザーにメッセージ!

Aサイモン・カーティス過去を忘れてはいけないということです。マリアは人生の最後になって若者に自分の人生で起きたことを伝えます。そういうところをこの映画から読み取ってください。

Qサイモン・カーティス監督からOKWAVEユーザーに質問!

サイモン・カーティスみなさんはニューヨークのノイエ・ギャラリーに行ってこの有名な「黄金のアデーレ」の絵を見たいと思いますか?

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■Information

『黄金のアデーレ 名画の帰還』

『黄金のアデーレ 名画の帰還』2015年11月27日(金)全国ロードショー

20世紀が終わる頃、ある裁判のニュースが世界を仰天させた。
アメリカに暮らす82歳のマリア・アルトマンが、オーストリア政府を訴えたのだ。それは“オーストリアのモナリザ”と称えられ、国の美術館に飾られてきたクリムトの名画<黄金のアデーレ>を、「私に返してください」という驚きの要求だった。
マリアの伯母であるアデーレの肖像画は、第二次世界大戦中、ナチスに略奪されたもので、正当な持ち主である自分のもとに返して欲しいというのが、彼女の主張だった。
弁護をするのは、駆け出し弁護士のランディ。対するオーストリア政府は、真っ向から反論。大切なものすべてを奪われ、祖国を捨てたマリアが、クリムトの名画よりも本当に取り戻したかったものとは?

監督:サイモン・カーティス(『マリリン 7日間の恋』)
出演:ヘレン・ミレン(『クイーン』 アカデミー賞主演女優賞受賞)、ライアン・レイノルズ(『あなたは私の婿になる』)
ダニエル・ブリュール(『ラッシュ/プライドと友情』)、ケイティ・ホームズ(『バッドマン・ビギンズ』)ほか
配給:ギャガ

公式サイト:http://golden.gaga.ne.jp/

(C)THE WEINSTEIN COMPANY / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / ORIGIN PICTURES (WOMAN IN GOLD) LIMITED 2015


■Profile

サイモン・カーティス

『黄金のアデーレ 名画の帰還』サイモン・カーティス1960年3月11日イギリス、ロンドン生まれ。
ロンドンとニューヨークで舞台演出家として活躍。後に『リトル・ヴォイス』として映画化された舞台「リトル・ヴォイスの栄光と挫折」を演出した。
その後、マギー・スミス、イアン・マッケラン、ダニエル・ラドクリフが出演したBBCのTV映画「デビッド・コパーフィールド」(99)や、エミー賞と英国アカデミー賞を受賞したTVドラマシリーズ「クランフォード」(07~09)などを監督した。『マリリン 7日間の恋』(11)で長編映画監督デビュー。本作でアカデミー賞2部門、ゴールデン・グローブ賞3部門、英国アカデミー賞で6部門にノミネートされ、主演のミシェル・ウィリアムズはゴールデン・グローブ賞とインディペンデント・スピリット賞を含む12の映画賞で主演女優賞を受賞した。