話題の映画や作品等にまつわる、俳優や映画監督、アーティストら“Stars”へのインタビューと、彼らからの「質問」に「回答」できるOKWAVEの特別企画です。

Vol.513 映画監督 行定勲(『ピンクとグレー』)

OKWAVE Stars Vol.513は『ピンクとグレー』(2016年1月9日公開)の行定勲監督へのインタビューをお送りします。

Q 加藤シゲアキさんの書かれた原作についてはどのような印象を持ちましたか。

A行定勲ある種の鮮烈さがある小説だと思いました。芸能界を実際に肌で感じている作家のメタフィクション的な要素を持ちながら、ちゃんと自分の青春とも向き合っている、生命力のような要素を立体的に感じられる小説だと思いました。

Q 映画化するにあたって意識したことは何でしょう。

A『ピンクとグレー』行定勲その鮮烈さは作家自身にあるので、僕が体感した読後感を核として映画に持ち込もうと思いました。原作者の加藤シゲアキさんほど僕は若くはないですし、かつて青春映画を撮っていた時と比べて、青春とは何なのかなんとなく分かっています。であれば、鮮烈さを出すためにも、突き放した方が良いなと思いました。自分が若い時に撮った青春映画には僕自身もその中に含まれています。登場人物と一緒になって何かに抗ったり、突き抜けようとしたりしましたが、年をとってみると、突き放した、引いた目で、主人公たちがどうなっていけばいいのかを見ていきました。そうやって加藤シゲアキさんが作り上げた人物背景を辿っていきました。

Q 中島裕翔さん、菅田将暉さんはいかがだったでしょう。

A行定勲中島裕翔も菅田将暉もすごく良かったです。若さの特権は素直じゃないところにありますが、彼らは素直で、その素直さが良かったです。演じる上でのポテンシャルやスキルを持っているので器用でした。『GO』を撮った時の窪塚洋介の鮮烈さと同じ雰囲気が彼らにも感じられるようにしたいと思っていましたが、ふたりとも最初から鮮烈さが放たれていました。自由度が高くて衝動的に芝居ができるので、そのポテンシャルを信じて撮っていました。

Q 時間軸の使い方など、原作からさらに手がこんでいますが、そういった工夫についてお聞かせください。

A行定勲小説を読んだ時は小説ならではの作りだと思いましたし、映画特有の構造を小説化しているようにも読めました。それを映画にするなら、映画ならではの大胆さが必要だと思いました。この映画の仕掛けの部分は、原作でも書かれていることですが、それを言葉で説明したくなかったので今回の方法をとりました。ただ、僕の中では仕掛けだとは思っていなくて、前半と後半の二重構造になっているのは必然でしたし、原作で起きていることを美しく見せる最良の方法だと思いました。この仕掛けは脚本では書かれていなかったのを僕が言い出したんです。後半部分は原作に書かれていることを踏襲して作っていった内容なので、僕の中では小説の映画化が最もうまくいったパターンだと思っています。このアイディアを加えたことで原作から逸脱してはいるけれど、原作を踏まえてりばちゃんを深く描けたんじゃないかと。ただ、かなりのチャレンジでもあったと思います。たとえば、グザビエ・ドランが『マミー』で登場人物の気持ちを画面の画角を広げて表現してたのは一歩間違えるとバカバカしく思う人もいると思いますが、でも、あの実験精神は鮮烈でした。そういうチャレンジでした。
ごっちとりばちゃんの人生をあの仕掛けでスイッチできたので、観客はふたつの人生を体感できます。脚本ができた時には「分かりにくい」と言われましたけど、そもそも小説で加藤さんがあれだけ立体化できたのは並大抵のことではないです。それを読んで火をつけられたのでこうしましたけど、観た人にはよく分かるんじゃないかと思います。今回作ってみて、シナリオではあまり説明的である必要はないなと思いました。

Q 主人公たちの高校生の頃からの姿が描かれましたが、その前半部分の描き方はいかがでしたか。

A行定勲青春の青臭さの中でちょっとオーバーな芝居をさせたり、わざと下手な青春映画のように撮りました。その中で気づいたのはスピード感ですね。60分で一区切り描かなければならないので、自然と画面にスピードが出たと思います。前半でああ描けば、2倍描けるので、今後の作品でも説明セリフはほとんどいらないなと思いました(笑)。後半はモノクロにしましたが、色をこちらでコントロールすると作り物のようになるので、その色を抜くことで、生々しく見えるようにしました。僕の場合、思い出の記憶の方が色鮮やかで、いま生きている時間は色をあまり意識していないので、それに忠実に作りました。

Q 作品を撮り続けてきたことでの監督の中での変化についてお聞かせください。

A『ピンクとグレー』行定勲『GO』を撮った時に、深作欣二さんが試写を観に来てくれました。試写室から出てきて「いい映画だったな。いい寫眞だった」と大きな声で話されていて、胸が震えるような気持ちになりました。それで挨拶に行ったら、「でも俺が撮った柴咲コウの方がいいな」と笑って言われました。「映画よかった。若さが眩しくて羨ましかった。それがよかった!でも、今の俺が撮ったらならもっとエグく描くだろうね」と仰っていました。その言葉を『ピンクとグレー』を仕上げている時に思い出して、確かに昔よりは主人公たちに寄り添っていないなと思いました。ドライに捉えているからこそ、彼らがイキイキしていて、抗ったり落ち込んでいる顔がしっかり出ていると思います。生きることが見苦しく見えるのが青春映画なのかなと思いました。だから柳楽優弥はむしろ僕ら側で、キャラクターの設定は清らかに見えました。青春映画が青臭くても観ていられるのは僕らが通った道だからです。年をとったからといって社会派映画だけを撮る必要もないんだなと。青春映画だから昔の手練手管で描けばいいかなと撮る前に思ったこともありますが、新しいことに取り組めたのが良かったです。ちゃんと自分にフィードバックされているんだと気づけたので、深作さんにも感謝しています。

Q 本作の芸能界の描き方ですが、実態と比べていかがなのでしょうか。

A行定勲実際の芸能界は地味ですよ。足の引っ張り合いは無いわけではないだろうなとは思います。アマデウスとサリエリみたいなものはどの時代にもあることですよね。そういうことを告白するかどうかは、その人の主観なので嘘か真実か分からないです。今回の話ではその部分は小さなことですけれど、僕からすると逞しさを感じるので、悪いことではないです。彼らは甘い奴が嫌いなんだと思います。主人公が堕ちていくのは必要なことでしたけど、全部が愛にも見えます。ごっちがりばちゃんに残した愛のムチなのかなと僕は解釈しています。

Q行定勲監督からOKWAVEユーザーに質問!

行定勲『ピンクとグレー』でも描かれていることですが、皆さんは人のどんなところに嫉妬しますか?

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■Information

『ピンクとグレー』

『ピンクとグレー』2016年1月9日(土)公開

14年前、俳優・白木蓮吾が、11歳の「鈴木真吾」だった時、同じ団地に引っ越してきた小学生、それが大貴だった。蓮吾を「ごっち」、大貴を「りばちゃん」と呼び合い、いつも一緒の二人は共に成長していく。高校に進んだ二人は、共にギターに熱中し、幼馴染のサリーに初恋を抱いた。そんなある日、蓮吾の姉がダンスの発表会の最中に舞台で事故死する。蓮吾を気遣い、学祭でのバンド出演をやめようかと尋ねる大貴に蓮吾は、「やらないなんてないでしょ」と即答する。それは、亡くなった姉の口癖でもあった言葉だった。

その後二人は、渋谷で読者モデルにスカウトされ、ともに芸能界へと足を踏み入れる。高校を卒業した二人は大学に進学せず、同居しながら、役者になる夢を追いかけ始めるのだった。しかし、ある撮影がきっかけで、蓮吾は注目され一気にスターダムへと駆け上がっていく。一方でエキストラから抜け出せない大貴。徐々にズレはじめた二人の関係。ささいな喧嘩がきっかけで、二人は決裂してしまう。部屋を出ていく大貴に、蓮吾は声をかけることができなかった。

5年後、24歳になった大貴は、蓮吾の活躍をアパートの部屋のテレビで眺めていた。そんな大貴に、同棲しているサリーも苛立ちを隠せない。ある晩、同窓会に出席した大貴は、蓮吾と再会する。気まずさから途中で抜け出した大貴を、蓮吾が追いかける。数年ぶりにきちんと話をした二人はわだかまりも解け、いつしか、まるで高校生の頃のように肩を組んで歌っていた。酔いつぶれて翌朝蓮吾のマンションで目覚めた大貴。蓮吾はすでに外出しており、テーブルには鍵と手紙が置かれていた。置手紙の約束通りその夜再び蓮吾の部屋を訪れた大貴は、蓮吾の亡骸を発見する。残されていたのは6通の遺書。なぜ、蓮吾は死を選んだのか?大貴が辿り着いた“蓮吾の死の真実”とは―。

出演:中島裕翔、菅田将暉、夏帆、柳楽優弥、岸井ゆきの
監督:行定勲
原作:加藤シゲアキ(「ピンクとグレー」角川文庫)
音楽:半野喜弘
主題歌:ASIAN KUNG-FU GENERATION“Right Now”
配給:アスミック・エース

http://pinktogray.com/

©2016「ピンクとグレー」製作委員会


■Profile

行定勲

『ピンクとグレー』1968年生まれ、熊本県出身。
助監督として林海象監督や岩井俊二監督の作品に参加し、長編第一作『ひまわり』(00)が第5回釜山国際映画祭の国際批評家連盟賞を受賞し、演出力のある新鋭として期待を集める。『GO』(01)で日本アカデミー賞最優秀監督賞をはじめ国内外の50の賞に輝き、『世界の中心で、愛をさけぶ』(04)が観客動員620万人、興行収入85億円、同年実写映画1位の大ヒットを記録。10年には『パレード』が第60回ベルリン国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞、国内外から支持を得る監督のひとりである。
代表作には、『北の零年』(05)、『春の雪』(05)、『遠くの空に消えた』(07)、『クローズド・ノート』(07)、『今度は愛妻家』(10)、『つやのよる ある愛に関わった、女たちの物語』(13)、『円卓 こっこ、ひと夏のイマジン』(14)、『真夜中の五分前』(14)など。
また、劇場映画にとどまらず、携帯動画配信BeeTV「女たちは二度遊ぶ」の制作や、WOWOW「平成猿蟹合戦図」(14)で初の連続TVドラマの演出をするなど、メディアの幅を広げているほか、「ブエノスアイレス午前零時」(14)、「趣味の部屋」(13・15)、「タンゴ・冬の終わりに」(15)などの舞台演出も手掛けている。