話題の映画や作品等にまつわる、俳優や映画監督、アーティストら“Stars”へのインタビューと、彼らからの「質問」に「回答」できるOKWAVEの特別企画です。

Vol.557 映画監督 豊島圭介(『ヒーローマニア-生活-』)

OKWAVE Stars Vol.557は『ヒーローマニア-生活-』(公開中)の豊島圭介監督へのインタビューをお送りします。

Q 原作の福満しげゆきさんの「生活【完全版】」が元々お好きだったとのことですが、どんなところに魅力を感じたのでしょう。

A豊島圭介僕は元々福満さんの作品のファンで、とくに雑誌「ガロ」で描かれていたちょっとセクシーな作品をよく読んでいました。その後、テレビ東京で放送された「週刊真木よう子」という真木よう子さんを主人公に毎回異なる監督が撮る作品の中で福満さんの「景色のキレイなトコに行こう」を選ばせていただいたご縁がありました。福満さんは今では「うちの妻ってどうでしょう? 」のような私小説風の漫画を描かれてブレイクしていますが、「生活【完全版】」はその前に描かれた初めての長編作品で、しかもアクションものだったので、「こういう作品も描かれるんだ」という驚きがありました。社会の隅っこにいるような人たちが自分の欲望のために自警団を作るという歪んだ話で(笑)、金槌やワイヤを使ったアクションが面白くて、これを映像化できたら日本映画では誰も見たことがない作品になるんじゃないかと思って名乗りを上げました。

Q 実際に映画化が決まって、どんなところを大事にしようと思いましたか。

A豊島圭介原作を再現することよりも、エッセンスをいただきつつも、より多くのお客さんに開かれたエンターテインメントにすることを考えました。僕は原作を面白いと思っていたので、足りないところをどうするかということではなく、どこを削れば収まるだろうと悩みつつ、より開かれて、ポップでカラフルなものにしようと思いました。
アクション・コメディ映画を撮るのは今回が初めてです。僕はいろんなジャンルの原作モノの映画を撮ってきたので、毎回、自分の脳のいろんな部分に刺激がある感覚です。原作の力を借りて自分の違う可能性を引き出してもらいました。

Q 東出昌大さんをはじめとする4人のバランスも面白かったですが、キャストにはどんなことを期待したでしょうか。

A『ヒーローマニア-生活-』豊島圭介パブリックイメージと違うことをやってほしいと思いました。東出くんは凛々しい役が多かったですけど、だらしなくて嘘つきで卑怯な役を演じています。窪田正孝くんもストイックなところは変わらないですけど、下着と格闘にストイックという、みんなが見たことがない姿を見せています。片岡鶴太郎さんも「オレたちひょうきん族」以来のお笑いの感じですし、小松菜奈さんも妖艶さだけではなく、ちょっとふざけた姿を見せています。とくに小松さんは、ダサいジャージ姿から妖艶な女になるまでの七変化を撮ることができて、僕にとっても楽しい撮影でした。

Q アクションが生々しくキレもありますが、どのような撮影だったのでしょう。

A豊島圭介AKB48が出演した「マジすか学園」で出会った殺陣師の森﨑えいじさんにアクションの振り付けをお願いしました。森﨑さんはアクションと物語を分離させずに、台本をちゃんと読んで「この物語ならこのアクションだろう」「このシーンならこう動くだろう」と考えてアクションを作ってくれました。僕としてもアクションの中で物語を語ることがテーマだったので、彼に参加してもらえて良かったです。アクションそのものはお任せできていたので、僕からキャストにはアクションの時の感情の流れを伝えていきました。「マジすか学園」を演出している時にアクションとは何だろうと考える機会があって、アクションも芝居だという結論に至りました。その後に『花宵道中』の撮影を通じて濡れ場も芝居ということに気づき(笑)、アクションに通じるものがあるなと思いました。ですので、今回の撮影でも、アクションに至るキャラクターの気持ちや、その中でどういう感情になっていくかを言い続けました。

Q 冒頭のアクションが終盤にも出てくる演出が、同じ映像でも受け取り方が全く違って面白かったです。

A豊島圭介『トレインスポッティング』という映画でも使われている手法ですね。「ラスト・フォー・ライフ」というアップテンポな曲と共に始まって楽しそうな映画だと思って見始めると、後半になってそのシーンが出てくると、実はハッピーな状況ではない場面で、使われている音楽ももちろん違います。その手法が面白いなと思っていつかやってみたいと思っていて、今回取り入れました。

Q 地方の都市が舞台ということへの狙いなどはあるでしょうか。

A『ヒーローマニア-生活-』豊島圭介地方都市を舞台にするというよりは、カオスな状況を作りたいと思っていました。シャッター商店街でアクションをしたい、という初期衝動があって、そういう街を探してロケハンをしました。昭和っぽい風情だけではなく、貧富の差や、それによって開発が進んだ象徴のものなど、いろんな要素がある街を探しました。最初は首都圏から探し始めて、木更津や水戸の商店街もロケハンしましたが、最終的に僕の地元の浜松に行き当たりました。ちょうどいい商店街があって、昭和風の寂れた風情もありつつ、新しく開発された地下の広場や巨大なタワーもあって、面白いなと思いました。同じ静岡県の静岡は碁盤の目のようにきれいな街づくりがされているのですが、浜松はそれに比べて継ぎ接ぎのような感じだったので、この映画には良かったなと思います。フィクション度をどう高めるかも狙っていたところで、そういった意味でも良かったです。

Q 主人公たちのヒーロー像も、いわゆる日本のヒーロー作品とは違っていますが、その狙いをお聞かせください。

A『ヒーローマニア-生活-』豊島圭介『ヒーローマニア-生活-』というタイトルは後付けで、元々は原作と同じ「生活」というタイトルの予定で撮影していました。その後にアクション映画ということがより伝わるようにとタイトルを変更することになりました。それでみんなで話し合っていて、「ヒーローに憧れているが、ヒーローになりきれてない人たちの話」というテーマが抽出できて、『ヒーローマニア-生活-』というタイトルになりました。ですので、「ヒーロー」という切り口については、土志田が中津に「中津さんは僕のヒーローです」というセリフは出てきますが、撮っている最中はそこまで意識していたわけではないんです。後からこのタイトルをつけたことで、作品のテーマ性がよりにじみ出てきたんだと思います。僕自身は「人は変われるか、変われないのか」ということをずっと考えていました。自分の経験上、僕は基本的には人は変われないと思っていて、でも人は変わろうとする希望を持つし、そう思わないと生きていけないだろうなとも思っています。中津が勤めているコンビニのロクでもない客たちに注意できるようになりたいとか、そういう部分に注目していました。

Q 監督自身が今回の撮影を通じて気づいたことは何でしょう。

A豊島圭介音楽の重要性を再発見したことですね。映画を撮る現場に予算をかけすぎずに、ポストプロダクションのところにも予算を残すということはプロデューサーの采配のひとつです。音楽が非常に充実している中島哲也監督と組んできた石田雄治さんが企画に入っていて、この作品のエンターテインメント性を高めるためにも音楽が絶対に必要だという話になりました。それでグランドファンクという会社に音楽を担当していただきました。日本映画ではなかなか無い10組ものアーティストに参加いただけました。映像だけではなかなか豊かにできないところも効果音と音楽の力でリッチにできましたし、カラフルな雰囲気も高まりましたので音楽の力は大きいですね。また、普通の作品よりも日数をかけて仕上げているので、爆音で音楽が鳴りながらも、セリフも埋もれずちゃんと聞こえるし、効果音ももちろんちゃんと聞こえますので、これは時間の賜物だと思います。それができたのが僕にとっては大きな分岐点で、とうとう映画作りのベースができたなと思います。こういうカラフルな作品を作ろうとすると、ポストプロダクションはないがしろにできないなと思いました。

Q 豊島圭介監督からOKWAVEユーザーにメッセージ!

A豊島圭介子どもから大人まで楽しめるエンターテインメントを撮ろうと思って作った作品です。僕が中学生の頃に観た『ゴーストバスターズ』や『グーニーズ』、『グレムリン』などの80年代のあっけらかんとした、一見、ただ楽しい映画というものを目指しました。この楽しい作品の中にある、ほろ苦い話も伝わればいいかなと思います。

Q豊島圭介監督からOKWAVEユーザーに質問!

豊島圭介今回の作品は主役の4人や船越英一郎さんら、俳優の方々のパブリックイメージとは違った顔をどれだけ撮れるかにチャレンジしました。皆さんへの質問ですが、皆さんが違った顔を見てみたいと思う俳優は誰ですか?

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■Information

『ヒーローマニア-生活-』

『ヒーローマニア-生活-』2016年5月7日(土)公開

ここはさびれた地方都市・堂堂市。中津はコンビニでバイトしながら暮らしていた。
バイト中、中津はチンピラに絡まれてお金を巻き上げられてしまうが、チンピラが店を出た途端にその姿が消え、道端で倒れているのを発見する。
傍にいたのは赤いニット帽の青年、土志田だった。土志田を追う中津は、彼が袖口のガジェットからワイヤを放ち、女性の下着を盗むところを目撃。下着泥棒はともかく、チンピラをやっつけた強さに惹かれた中津は「俺と一緒に戦わないか?」と声をかけ、“ヒーロー”になろうと持ちかける。
そこから2人は夜になると街にはびこる暴走族やチンピラといった小さな悪を片付けていく。ある日、中津と土志田は日下と出会う。彼もまた悪を成敗している“ヒーロー”であり、意気投合した3人は悪い奴らをやっつけて、生きたままロープに吊るし見せしめることで悪を退治しようとする。
その後、土志田が下着を盗んだ家の住人、女子高生のカオリが下着泥棒の一件を警察に通報しない代わりに仲間に入れろと脅迫し、4人目の仲間に加わった。チームとなった4人はターゲットを決めては夜な夜な街の掃除に出かけ、いつしか街のヒーローになっていった。
そして、事態は4人が全く予想もしないラストへと向かっていくのだった。

監督:豊島圭介
出演:東出昌大 窪田正孝 小松菜奈
村上和成 黒田大輔 松岡恵望子
山崎静代(南海キャンディーズ) 船越英一郎 片岡鶴太郎
原作:福満しげゆき「生活【完全版】」(モーニングKCDX/講談社刊)
脚本:継田 淳
音楽:グランドファンク
配給:東映/日活

http://heromania.jp/

©福満しげゆき/講談社/映画「ヒーローマニア-生活-」製作委員会


■Profile

豊島圭介

豊島圭介(『ヒーローマニア-生活-』)1971年生まれ、静岡出身。シャイカー所属。
大学在学中から自主映画を製作し、『悲しいだけ』がPFF94に入選。
2003年、『怪談新耳袋』で監督デビューすると、「マジすか学園」シリーズ(10~13)などのTVドラマや、『ソフトボーイ』(10)、『花宵道中』(14)といった作品で着実に評価を上げ、各作品で独特の世界観を構築し、幅広いファンを獲得している。
人間ドラマもアクションも撮れる、今もっとも熱い注目を集める俊英。2016年は『森山中教習所』が7月9日公開予定。

https://twitter.com/toyoshima1113