話題の映画や作品等にまつわる、俳優や映画監督、アーティストら“Stars”へのインタビューと、彼らからの「質問」に「回答」できるOKWAVEの特別企画です。

Vol.659 映画監督/ドラマ演出家 ユン・ソクホ(映画『心に吹く風』)

OKWAVE Stars Vol.659は、「冬のソナタ」などを手がけたユン・ソクホ監督が映画初監督を務めた『心に吹く風』(2017年6月17日公開)についてのインタビューをお送りします。

Q 「冬のソナタ」をはじめ大ヒットドラマを多数手がけてこられましたが、本作が映画初監督、しかもそれが日本での作品とのことで、その経緯をお聞かせください。

Aユン・ソクホ映画はもともと大好きでしたし、映像のジャンルとしてもTVドラマと似ているところもありますので作り手としても興味がありました。TVドラマを作り続けてきたので、映画に挑戦する機会がなかなかありませんでしたが、7年ほど前に本作のプロデューサーの深田誠剛さんと韓国で食事をする機会があって、その際に映画を撮ってみないかとお声がけをいただいていました。映画の企画をすすめていた7年の間にドラマの撮影が急遽入ったりして、最初の企画は中止になりましたが、あらためて「作家主義の映画を撮りましょう」というご提案をいただいて、今回日本で映画を撮ることになりました。

Q 日本で、日本人俳優を起用した映画を撮る、ということへのチャレンジの気持ちはありましたか。

Aユン・ソクホ映画というジャンルも初めてですので、まずそこにチャレンジする興奮がありました。さらに、外国で外国人の俳優と一緒に作ることは、慣れない環境ですので、とても好奇心が湧きました。映画をいまやるべきか、ということへのいい動機付けになったと思いますし、楽しくなりそうだと思いました。

Q 脚本も自ら書かれましたが、この題材と物語で描きたかったことについてお聞かせください。

Aユン・ソクホ時間や偶然の要素をテーマに、それを映像に収めたいと思いました。自然の要素で代表的な偶然と言えば「風」です。人間の偶然の要素はいろいろあると思いますが、中でも「恋」は代表的なものだと思います。この2つをつなげた時に、どのようにマッチするのか、そして生きることに対していろいろ考えられるような作品にしたいと思いました。

Q 北海道の美しい自然を舞台にしていますが、このロケーションを選んだ理由は何でしょう。

Aユン・ソクホキーワードになっている「偶然」というものを大切にしてロケーションを決めました。それを象徴するのが倉庫のシーンです。この倉庫も北海道でロケハンをしていて偶然見つけたものです。その倉庫を見た瞬間に、自分が思っているいろいろなことを表現できると思いました。たとえば、壁の色が一つ一つ全部違っていて、時間や自然が作ったものだと感じられます。錆びついていたり色が剥がれているのは自然の現象ですし、過去と現在の出会いという要素としても、主人公の男女の過去と現在を描く上でも、とても印象的な場所になると思いました。
また、この映画は6月に撮影しましたが、最初のシーンではまだ雪が残っている山が映っています。その山の手前に広がる畑には作物の芽の緑色が出始めています。この引いたカット一つとっても、偶然と、過去と現在の出会いというテーマが入っています。映画のためにその風景を作ったものではありませんので、芽が出てきたところと土の色の境目は偶然の産物です。雪が残っている山は冬という過去、手前の畑には春の訪れ、この2つが同時に入っているのがこの映画のテーマに相応しいと思いました。このような、2つのテーマを満たしている場所を選んで撮影しました。
美瑛の「青い池」のシーンも、池の中に水没した枯れた木々と周りの青々とした木々は、もちろんこれも撮影のために作ったものではなく、その姿自体が偶然だと思いますし、過去と現在が共存している場所です。

Q 主演の眞島秀和さんと真田麻垂美さんに期待したことと演出の方針についてお聞かせください。

Aユン・ソクホ演技的な面では、役に合うかどうかのイメージで2人を選びました。私は初めて会う2人でしたので何の先入感もなく、私が眞島さんと真田さんを見て感じたイメージを引き出そうと思いました。
私が脚本を書いてロケ地も決めて2人を選び、私の頭の中にできているイメージを伝えて演じてもらったので、演出面で難しいことはなかったですね。

Q 主人公リョウスケと春香の高校時代の回想シーンでは、セリフは使わず、音楽と映像で語られます。

Aユン・ソクホ高校時代を演じた2人はほぼ新人だったのですが、眞島さんたちと同様に私の頭の中にあるキャラクターのイメージで選びました。現場に入る前は大変かなと思いましたが、実際には私の演出にすぐついてきてくれたので、とても気持ちよく撮影できました。

Q 日本と韓国での撮影現場の違いなど、何か新しい発見はありましたか。

Aユン・ソクホ監督によっても違うとは思いますが、日本では当日のスケジュールをはじめ事前準備をしっかりすることが多いと聞いています。私の場合は、即興的で、その日の現場の状況を大事にしたいので、その日に変わったり、その日にならないと分からない、ということもあります。そんな私のスタイルに最初の頃は日本のスタッフの方にはとまどいもありました。でも、段々と皆さん慣れてきて、撮影終盤には息が合っていました。
もう一つ挙げるなら、韓国はみんなアグレッシブだったり情熱的なところがあるので、撮影現場はみんな声も大きいし活発な雰囲気です。日本では自分の役割を黙々と落ち着いた静かな雰囲気の中でこなしていきます。どちらも良い作品を作るために尽くしているのは同じですが、現場の雰囲気は違うということは感じました。

Q 音楽の素晴らしさも監督の作品の特徴ですが、今回の狙いについてお聞かせください。

Aユン・ソクホ今回の作品では、機械的な音や壮大な音楽よりはピアノ曲の方が合っているなと思いました。イ・ジスさんとはこれまでも組んできましたが、イ・ジスさんの音楽性にも合うなと思いました。作曲もそうですが、ピアノ演奏のタッチもとても洗練されていて、今回の作品にとても合うと思ったので、企画段階からお願いしていました。こういう作品にしたいという話をずっとしていて、それに合わせた素晴らしい音楽を作っていただけました。

Q 「初恋」という要素をどう描こうとしましたか。

Aユン・ソクホ結婚前の男女の初恋を描くことはこれまでもありましたが、今回、初めて中年男女にとっての初恋を描いたので、どうなるのかなという思いがありました。年を取ったとしても気持ちは青春だ、と言ったりもしますが、初恋という純粋な気持ちは年をとっても変わらないと思い、そこにフォーカスを当てようと思いました。ピュアな初恋の気持ちを蘇らせることができる人物として2人を描きました。リョウスケは、40代になってもどこか純粋でロマンチックなところがある人物、春香も真面目で純粋な女性にしました。不倫をテーマにしているように見えますが、いわゆる不倫ドラマは、初恋の頃とは変わってしまった男女の再会であったり、もっとリアルなドロドロしたものですが、私の場合は、初恋が持っている価値を大事にして、その純粋さを描きたいと思いました。

Q ユン・ソクホ監督からOKWAVEユーザーにメッセージをお願いします。

Aユン・ソクホ日本の皆さんとは、冬ソナを通して運命的な素晴らしい出会いができました。今回、日本の俳優さんと映画を作ることが出来るという心ときめく楽しい機会をいただきました。冬ソナのときのように皆さんとまたいい思い出が作られればいいなと思います。そう思いながらこの映画を作りました。ぜひご覧いただければと思います。

Qユン・ソクホ監督からOKWAVEユーザーに質問!

ユン・ソクホ結婚されている方も、恋愛で傷ついてしまった方も、それでも変わらず、皆さんはいまでも恋したいと思いますか。

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■Information

『心に吹く風』

2017年6月17日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
6月10日(土)より札幌シネマフロンティア、ディノスシネマズ旭川にて先行公開

友人の住む北海道・富良野の郊外を訪れ、作品作りのための撮影を続けていたビデオアーティストのリョウスケ。乗っていた車が故障し、電話を借りるために立ち寄った家でドアを開けたのは、高校時代の恋人・春香だった。
23年ぶりに再会した彼女に家族がいることを知りつつも、撮影へと連れ出すリョウスケ。彼のお気に入りの小屋の中で雨宿りをしながら話すうちに高校時代の気持ちを思い出していく春香。静かな時間の中でふたりの距離は縮まっていく。
翌々日には北海道を離れなければならないリョウスケは、もう1日だけ一緒に過ごしたいと春香に頼むが……。

監督・脚本:ユン・ソクホ
出演:眞島秀和 真田麻垂美
鈴木仁 駒井蓮 長内美那子 菅原大吉 長谷川朝晴
音楽:イ・ジス
配給:松竹ブロードキャスティング/アーク・フィルムズ

http://kokoronifukukaze.com/

© 松竹ブロードキャスティング


■Profile

ユン・ソクホ

1957年6月4日生まれ。韓国・ソウル特別市出身。
85年にTV局KBSに入社し、92年の「明日は愛」で連続ドラマの演出家としてデビュー。自然を細やかに捉える映像美と卓越した色彩感覚を発揮しながら数々のドラマを手がける。00年の「秋の童話」は韓国だけではなく中華圏でも大ヒットし、“韓流”の火付け役に。さらに続く「冬のソナタ」が04年、日本でも地上波で放送され空前のブームを巻き起こす。主演のペ・ヨンジュンをはじめとする俳優たちが爆発的な人気を獲得すると同時にユン・ソクホ監督も韓流の立役者として広く知られるようになり、大統領表彰をはじめ、数々の賞に輝いた。「夏の香り」(03)、「春のワルツ」(06)と続いた四季シリーズを完結させた後は、人気俳優チャン・グンソクと少女時代のユナを主人公にした「ラブレイン」(12)を発表。
01年にKBSを離れ、04年に自身の制作会社YOON’SCOLORを設立。06年に「冬のソナタ ザ・ミュージカルWinter Sonata, The Musical」の総合演出を担当した。