話題の映画などの作品にまつわる、俳優・女優、映画監督、アーティストらへのインタビューと、彼らからの「質問」に「回答」できるOKWAVEの特別企画です。

Vol.680 俳優 ウエンツ瑛士(映画『禅と骨』)

OKWAVE Stars Vol.680はヘンリ・ミトワさんを追った映画『禅と骨』(2017年9月2日公開)のドラマパートに出演したウエンツ瑛士さんへのインタビューをお送りします。

Q ヘンリ・ミトワさんのことはご存知だったでしょうか。ご本人の印象をお聞かせください。

Aウエンツ瑛士これまでは存じ上げていなかったです。中村高寛監督が実際にヘンリさんを密着されている映像も、自分の撮影の後に観ました。事前には一切映像を見ないで、ドラマパートの台本を読んで役作りしました。
台本を読んだ印象は、すごい人なんですが、無茶苦茶な人だな、と(笑)。後で映像を見て、すごくいい表情をされている方だと思いました。それが第一印象です。

Q 俳優としてオファーを受けてどんな気持ちでしたか。

A映画『禅と骨』ウエンツ瑛士どんな感じなんだろうというワクワク感が大きかったです。自分と似た境遇の方を演じさせていただくのには、運命的なものを感じざるをえないです。『禅と骨』撮影後には『スコット&ゼルダ』という舞台で「華麗なるギャツビー」の著者のスコット・フィッツジェラルドの一生を演じましたが、そういう自分が切り開いて魂をぶつけていくような役のオファーを同じ時期にいただいて、自分はそういう役を演じる時期だと言われているような中でヘンリさんを演じました。お芝居というよりも、自分が磨かれる、自分自身にとって必要なものがあるから常にフラットに、楽しさを忘れずに、という気持ちで現場にいました。

Q ドラマパートでのヘンリさんを演じる上で、何か資料などには当たりましたか。

A映画『禅と骨』ウエンツ瑛士中村監督はヘンリさんのパスポートの写真を見て僕に似ていると思ったそうです。ヘンリさんと僕は、お互いに父がドイツ系アメリカ人の血筋という共通点もあって、それでオファーをいただきました。監督はヘンリさんをずっと追ってきましたが、ドラマパートの台本も監督が書いたもので、再現ドラマというよりもフィクションです。時代は違いますが、同じ境遇だから、好奇の目で見られたり、そういう時に感じる気持ちは一緒だから、そこを大事にして、ヘンリさんの人生の一部を僕も体験させていただきました。動きや仕草を再現するということではなく、台本の中のヘンリさんを演じるということを意識しました。

Q では役作りのアプローチはどうされましたか。

Aウエンツ瑛士晩年のヘンリさんが破天荒な方だったとしても、若い頃のそうなっていく過程ではなく、何層かあるヘンリさんの一部だと思いました。ですので、いろんな見方ができるヘンリさんでいたいなと思いました。もしかしたら演じたのはヘンリさんとは全く似ていない人物かもしれません。でも、いろいろな人生経験を経てヘンリさんになっていったはずなので、僕が演じた部分を見てこれがきっかけだったのかなと思ってもらってもいいと思います。そこは僕も中村監督も同じ考えでした。

Q 余貴美子さんや永瀬正敏さんらとの共演はいかがでしたか。

Aウエンツ瑛士皆さん当たり前のように現場にいるんです。それがいいのかなと思いました。僕は映画に出演する機会がそれほど多くないですし、小規模なチームで一気に撮る、という経験もほとんどなかったので、役者が現場にどういればよいかを学ばせていただきました。撮る側、撮られる側ということではなく映画作りの一員なんだと。中村監督がヘンリさんを撮っていますが、その中村監督の魂も画面にすごく出ています。だから撮る側、撮られる側の境目の無さは、ドラマパートにも出ていると思います。

Q 戦前から戦後にかけてのヘンリさんを演じましたが、その時代を演じる上で考えたことはありますか。

Aウエンツ瑛士ヘンリさんだからだと思いますが、あまりピリピリしていないと思いました。自分も死ぬかもしれない時代で、アメリカでは強制収容所に入れられます。本来なら、死ぬ代わりにそういう所で生かされているのだと感じるはずが、ヘンリさんはそこでもちゃんと自分が生きているんです。しかも別の収容所に自分の意思で移ったりもしています。どちらが捕まえているのか分からないですよね(笑)。ラジオ技師だったことからスパイだと疑われて、殺されるかもしれないというのに、そういう振る舞いができてしまうので、僕もあまり殺伐としないように演じました。戦争の時代ではあるのですが、そこまで戦争を身近に感じさせない作りになっています。

Q 現場で得られた気づきなどはありましたか。

Aウエンツ瑛士久々にガムシャラな人に会ったなと思います。それは中村監督を筆頭にですが、監督がそうだと周りもみんなそうなるんです。今まで自分がやってきた仕事はどちらかと言えば、「ゴールはここだから、そこに向かいましょう」というものが多かったです。今回は「ゴールはどこだ?」とみんなでかき分けていくような仕事だった上に、ゴールが見えなくてもみんな笑っているし、違うところに行ったとしても怒られないですし、みんな中村監督を信頼していました。そういう間違ってもそれがいい結果になるんじゃないかと思わせてくれる現場はなかなかないですね。

Q ヘンリさんは家族に愛情深い一面とそうでもない面もあるように映ります。ウエンツさんはヘンリさんのそんな姿をどう捉えましたか。

Aウエンツ瑛士信じてやまない人、なのかなと思います。固定観念が無さそうな方なので、家族への愛もあれば、家族でも嫌いなら一緒にいない、ということもあるのだと思います。世の中の枠にとらわれないで、価値観を広げてくれるところがすごいなと思います。自分の家系図に愛人の名前を書いてしまうのも「実際にいたんだから仕方ないでしょ」くらいなのかもしれません。ヘンリさんは僕よりもずっと年上の方ですが、ずっと先を行っているような、未来を作っているような感じがあります。それも1年先というよりも100年先の未来を作っている人物なんだと思います。

Q ヘンリさんと似ている部分や共感できる部分は何かありますか。

Aウエンツ瑛士意見や考えが変わってしまう時に、以前のことを忘れているところはちょっと似ているなと思います。「前はこういう時はこうだって言ってたよ?」と言われても「そうだったっけ」と本当に忘れてしまっているので(笑)、そういう悪気のないところは似ています。

Q ハーフということで改めて思うところはありましたか。

Aウエンツ瑛士僕の場合はこの仕事をしていると、「あ、ウエンツだ」と友達のように言われることが多くて、ハーフという見られ方をしていないと感じます。逆に海外に行った時に、日本人なのに見た目はそうではないと言われてハーフだと実感することがあるので、いつも住んでいる日本で毎日そう言われていたら結構きついだろうな、という振り返りはあります。実際にはそういうことが起きてはいないので、それはこの仕事に救われているのだろうなと思います。

Q ヘンリさんはいろいろな日本文化に関わっていますが、そのことで思うところはいかがでしょう。

Aウエンツ瑛士それまでやってきた実績や、年齢を重ねることで感じる得意、不得意というものが普通だったらあると思います。でもヘンリさんはそれとは全く関係なく飛び込むのがすごいです。茶道をはじめ、いろんなことをやっているので、自分に合う、合わないのジャッジはしていないのだろうなと。興味だけで、いい意味で閉鎖的な日本文化に入ろうとしているのがすごいし、あれだけ真っ直ぐに行けるのもすごいです。でも、日本の文化に近ければ近いほど、受け入れる側も人を見た目で判断しないのだろうなとも思いました。師匠たちは心で見るのだろうから、それが良かったのではないかなと思います。

Q もしヘンリさんにお会いできたら聞いてみたいことはありますか。

Aウエンツ瑛士会うのは怖いです(笑)。僕は怒られてしまうんじゃないかと思います。見透かされている、というか、今も見られているんじゃないかなと思います。もしご存命だったら、言葉よりもイキイキしている魂に触れられれば、それだけで十分かなと思います。

Q ヘンリさんを演じて、ヘンリさんのような生き方の影響は受けましたか。

Aウエンツ瑛士ここ数年で自然とですが自分もヘンリさんのようにドンドンいくような性格になってきました。そうすることで周りに迷惑をかけることもあるかもしれませんが、それ以外のところでうまくいって恩返しできたと感じることもあるので、やらないよりはやってみることの方がいいんだと思いました。この作品は30歳になる前に撮っていますが、ちょうど年齢的にも新しいことに挑戦してみようという気持ちや、心に少し余裕のようなものが出てきたことも影響していると思います。以前は時間内にゴールしようとスタートから全速力という気持ちだったのが、今は時間たっぷり使ってゴールしよう、という気持ちになりました。

Q ヘンリさんのご家族の様子を見て思うところはありましたか。

Aウエンツ瑛士血のつながりは馬鹿にできないなと思いました。僕自身、家族のことをそこまで考えたことはありませんでしたが、あれだけ壮絶な喧嘩をするようなヘンリさん一家ですが、あの次女の方はヘンリさんに似ていると思いますし、血のつながりは本人が気づいていないところで出てくるんだなと思いました。それを色濃く見せてくれるので、あのご家族はすごいですし、その一部始終を撮っていた中村監督もすごいです。あの家族を見ていると遺伝子が見えている感じがします(笑)。
僕自身は早いうちに親元を離れてしまったので、今は周りからは希薄な家族関係に見えているかもしれません。でもそのうちにグッと近づく瞬間もあるのだろうなと、ヘンリさんの家族を見て思いました。それまでは家族だから大事にしなきゃ、とい思うばかりで、いつも大事にしなくてもいいんだと思えるようになって、気が楽になりました。

Q ウエンツ瑛士さんからOKWAVEユーザーにメッセージ!

Aウエンツ瑛士この映画は元気がある時に観ないとヤバイです。ヘンリさんはもういないのですが、天国からパワーを吸い取られてしまいます(笑)。中村監督にも同じようなところがあります。だから間違っても、この映画を観て元気になろう、という気持ちではなく、この映画と戦いに劇場に来てください。よく食べてよく寝た次の日にお待ちしています。

Qウエンツ瑛士さんからOKWAVEユーザーに質問!

ウエンツ瑛士皆さんは「いま」楽しいですか?
この質問をされた瞬間に何を思ったか知りたいです。

ちなみに僕は楽しいです(笑)。

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■Information

『禅と骨』

映画『禅と骨』2017年9月2日(土)より待望のロードショー!
ポレポレ東中野、キネカ大森、横浜ニューテアトル他

粋人か?はたまた変人か?
京都の禅僧、日系アメリカ人 ヘンリ・ミトワ その一代記。
大ヒット作『ヨコハマメリー』の中村高寛監督が
11年ぶりに放つ渾身の長編ドキュメンタリー!
日本文化をこよなく愛し、世界遺産に登録されている京都嵐山・天龍寺の禅僧として晩年を過ごしていた、日系アメリカ人のヘンリ・ミトワ。
しかし、80歳を目前に、突如追い求めた夢によって、家族や周辺の人々を巻き込み、彼が築き上げてきた“青い目の文化人”という地位から大きく逸脱していく…。

監督・構成:中村高寛
プロデューサー:林 海象
ドラマパート出演:ウエンツ瑛士、余 貴美子
ナレーション:仲村トオル
配給:トランスフォーマー

http://www.transformer.co.jp/m/zenandbones/

©大丈夫・人人FILMS


■Profile

ウエンツ瑛士

1985年10月8日生まれ、東京都出身。
ドイツ系アメリカ人の父と日本人の母を持つ。4歳でモデルデビューし、9歳で舞台「美女と野獣」で役者デビュー。その後「天才テレビくん」 (NHK)をはじめ、「利家とまつ~加賀百万石物語~」(02/NHK)の森蘭丸役や、『キャプテントキオ』(07)で映画初主演を果たすなど、俳優として活躍する一方、2016年に解散した小池徹平とのデュオ「WaT」での歌手活動や、現在多数のTVレギュラー番組を抱え、幅広い活躍をみせる。07年の実写映画『ゲゲゲの鬼太郎』では、日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。その他の出演作に『ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌』(08)、『のだめカンタービレ最終楽章 前編/後編』(09・10)などがある。

http://wentz.fanmo.jp/

 

スタイリスト:渥美 千恵
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ヘアメイク:Aico