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Vol.681 映画監督 ダニエル・トンプソン(映画『セザンヌと過ごした時間』)

OKWAVE Stars Vol.681は画家セザンヌと小説家ゾラの知られざる友情を描いた映画『セザンヌと過ごした時間』(2017年9月2日公開)のダニエル・トンプソン監督へのインタビューをお送りします。

Q 『セザンヌと過ごした時間』は画家セザンヌと小説家ゾラの友情を描いた作品ですが、このふたりに親交があったことは監督はご存知だったのでしょうか。

A映画『セザンヌと過ごした時間』ダニエル・トンプソン私も知らなかったです。この映画のストーリーは私が作り込んだところもありますが、ふたりの友情そのものもあまり知られていませんでした。
この題材が映画として成立するのか、伝記を読んだり資料を集めるなどリサーチを続けて、それでようやく映画にしようと思い至りました。

Q 監督ご自身はセザンヌとゾラのどちらの気持ちに近いでしょうか。

Aダニエル・トンプソンセザンヌの本当の素顔と言いますか、彼の性格はこの映画を作るにあたって初めて知ることができて、非常に興味をそそられました。でも、夕食をご一緒するならゾラの方がいいですね(笑)。

Q セザンヌ役のギヨーム・ガリエンヌ、ゾラ役のギヨーム・カネにはどんなことを求めましたか。

Aダニエル・トンプソンセザンヌとゾラのふたりの間にある強い絆やぬくもり、情熱があるところは気をつけて演じてほしいと言いました。また、このふたりは性格も違うので、そこを際立たせながら、けれどもふたりの一体感のようなものを出してほしいと思いました。それは彼らの演技で叶えられました。

Q 男性ふたりの友情を、ダニエル監督は女性の目線からどのように捉えましたか。

A映画『セザンヌと過ごした時間』ダニエル・トンプソンゾラに対してセザンヌは尊敬の気持ちをずっと抱いていたと思います。一方のゾラはセザンヌのことを助けようとはしていましたが、彼の才能に心底惚れこんでいたかというと、そうではなかったです。だからこそ、彼らの仲違いが生まれてくるんだと思います。
男女の友情の違いについては、やはり女性同士の友情よりも男性同士の友情の方が競争意識が強いのだと思います。友情という共犯関係を築きながらも「俺の方が」という力強さが出てくるので、そこは女性同士の関係とは違いますね。

Q セザンヌとゾラを取り巻く女性たちについてはどのように描こうとしましたか。

A映画『セザンヌと過ごした時間』ダニエル・トンプソン女性のキャラクターでは、ゾラの妻のアレクサンドリーヌの比重が大きいです。それは彼らふたりが愛した女性であるからです。ガブリエルと呼ばれていた女性がセザンヌのモデルをしていて、彼女のことをセザンヌがゾラに紹介した、ということが史実です。でも私はそれだけだと作品として物足りないなと思って、より複雑な関係を描きました。これはふたりの男たちのライバル関係をきちんと描く上で付け加えたフィクションではあるのですが、作家としてインスピレーションをそそられる楽しい作業でした。
セザンヌの妻のオルタンスについては資料があまり残っていません。彼女も元々セザンヌのモデルであったことは史実ですが、セザンヌは自分のモデルに対してまるで拷問のような仕打ちをしていたそうです。そういったことで女性をめぐって彼らの友情がより難しいものになっていったのも事実なんです。

Q セザンヌ、ゾラのそれぞれの母親への接し方も特徴的ですが、これは史実通りなのでしょうか。

Aダニエル・トンプソンふたりとも母親思いだったのは事実です。私がこの作品の中で強調した部分でもあるのですが、セザンヌとゾラの母親の間に優しい感情が流れていたのも事実です。というのも、子どもの頃から知っている自分の息子の友だちというものは、大人になっても自分の子どもが大きくなったような母性的な感情を感じるものですよね。それでセザンヌとゾラの母親の間に何か懐かしいような感情が流れているようにしました。また、このふたりの共通項として、ふたりともアレクサンドリーヌとはうまくいっていないというところも描きました。

Q セザンヌは拠点を故郷のエクス(エクス=アン=プロヴァンス)に移しましたが、自然が非常に美しいです。

Aダニエル・トンプソンこれはもちろんそのままです(笑)。風景というものは目の前にある以上に美しく撮るのは難しいですから、エクスは目の前にあるものをそのまま撮った結果です(笑)。私も最初にこの土地の自然を見た時には感動しましたし、撮影監督にもプロヴァンスの光がすごくインスピレーションを与えてくれたようです。あの自然は生み出そうとしても生み出せない、まさにそこにあるものです。

Q パリとエクスの映像的な対比も興味深いです。

Aダニエル・トンプソンそうです。光の違いは現実にも歴然ですが、そのコントラクトをもっと強めようと撮影監督と話し合って作り上げました。

Q 本作を作り終えて、新しい発見などはありましたか。

A映画『セザンヌと過ごした時間』ダニエル・トンプソンたくさんありました。私自身の気持ちとしてもこの映画を作っている時は19世紀を生きているような感覚になりました。リサーチの時から当時のリズムで生きているような感じがしていたんです。例えば、パリから南仏に移動するときも、今よりももっと時間がかかっただろうし、アレクサンドリーヌがパーティーで招待客らをどうやってもてなしていたのかということや、画家たちはどのような日常を過ごしていたのかとか。あるいは当時はチューブ入りの絵の具が発明されたばかりの頃です。それまでの絵の具は粉でしたので、チューブ入り絵の具ができたから戸外でも絵が描けるようになったこともこの映画を撮る上で知ったことです。頭の中が印象派やセザンヌの絵画でいっぱいになるくらいリサーチをしましたので、当時の衣装やヘアスタイル、美術の小道具のことなども注意して見るようになりました。印象派の絵はもちろんこれまでも見てはいましたが、この映画を通して、私のものの見方も大きく変わりました。

Q ダニエル・トンプソン監督からOKWAVEユーザーにメッセージ!

Aダニエル・トンプソン皆さんはセザンヌのこともゾラのことも年を取ってからの姿しかご存知ではないかと思います。彼らにもこんな時代があったのかとうっとりしていただけるのを期待しています。ふたりの男性の友情の中には厳しいものや激しいものもあって、きれい事だけではなかったんだということも感じ取っていただきたいです。そして、芸術家が作品を生み出す苦しみというものがあることを、もう少し深いところで関心を持っていただけたらと思います。

Qダニエル・トンプソン監督からOKWAVEユーザーに質問!

ダニエル・トンプソン日本の皆さんは19世紀のフランス文化に興味はありますか。
フランスの文化にとって19世紀はとても重要な時代なんです。スタンダール、バルザック、モーパッサン、フロベール、ヴィクトル・ユーゴーも。素晴らしい巨匠が輩出された時代です。印象派もこの時代ですし、フランスの芸術の頂点を極めた時代なんです。

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■Information

『セザンヌと過ごした時間』

映画『セザンヌと過ごした時間』2017年9月2日(土)Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開

少年時代に出会ったセザンヌとゾラの絆は、境遇は違うが芸術家になる夢で結ばれていた。ひと足先にパリに出たゾラは、小説家としてのデビューを果たす。一方、セザンヌもパリで絵を描き始め、アカデミーのサロンに応募するが、落選ばかり。やがてゾラは、ベストセラー作家となって栄光を掴むが、セザンヌは父親からの仕送りも断たれ転落していく。そして、ある画家を主人公にしたゾラの新作小説が友情にひびを入れるが…。

監督・脚本:ダニエル・トンプソン(『モンテーニュ通りのカフェ』)
出演:ギヨーム・カネ(『戦場のアリア』)、ギヨーム・ガリエンヌ(『不機嫌なままにメルシィ!』)、アリス・ポル(『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲』)、デボラ・フランソワ(『タイピスト!』)、サビーヌ・アゼマ(『風にそよぐ草』) ほか
配給:セテラ・インターナショナル
http://www.cetera.co.jp/cezanne/

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■Profile

ダニエル・トンプソン

1942年1月3日、モナコ生まれ。
父は映画監督のジェラール・ウーリー。66年、父親の監督作品『大進撃』で共同脚本を担当したのをきっかけに映画界へ。76年には、脚本を手掛けたジャン=シャルル・タケラ監督の『さよならの微笑』が大ヒットとなり、アカデミー賞の脚本賞にノミネート。コメディを得意とし、ソフィー・マルソー主演の『ラ・ブーム』(80)、『スチューデント』(88)や、セザール賞5部門に輝いたパトリス・シェロー監督の『王妃マルゴ』など多数の脚本を手掛ける。そして99年、『ブッシュ・ド・ノエル』で監督デビューを果たし、セザール賞の第1回監督作品賞と脚本賞にノミネート。02年にはジュリエット・ビノシュとジャン・レノを迎えて『シェフと素顔と、おいしい時間』を撮り、06年の『モンテーニュ通りのカフェ』では、セザール賞の脚本賞をはじめ4部門にノミネートされた。最近作に、「コード」(09/未公開)、「Des gens qui s’embrassent」(13)。