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Vol.686 映画監督 佐藤慶紀(映画『HER MOTHER 娘を殺した死刑囚との対話』)

OKWAVE Stars Vol.686は映画『HER MOTHER 娘を殺した死刑囚との対話』(2017年9月9日公開)の佐藤慶紀監督へのインタビューをお送りします。

Q 死刑囚と被害者の母親の対話、という題材を映画にしようとしたきっかけについてお聞かせください。

A映画『HER MOTHER 娘を殺した死刑囚との対話』佐藤慶紀僕はもともとドキュメンタリー番組を作っていて、その題材として、犯人の死刑を止めようとしている被害者遺族の方々がいるということを知ったのがきっかけです。ある事件が起きたのが自分の町だったことがそのことに興味を持つきっかけでしたが、犯人に対してどうしたらそんな気持ちになれるのか、自分だったらそんなことができるのかと思いました。また、自分もそういう人になりたいという気持ちもあって、その心情に迫りたいと思いました。

Q では、映画を作る上では、どんなところを描こうと思いましたか。

A佐藤慶紀心情の部分では宗教的な考えで行動する方と、自然に湧き上がる感情で行動されている方がいました。それを普遍的な物語として伝える時に、後者を描くのはすごく難しいし、めったにいないような優しい人にはしたくないと思いました。観た方が自分が同じ状況だったら、と考えるきっかけになるような話にしたいと思いました。

Q キャストにはどんな芝居を期待して演出しましたか。

A映画『HER MOTHER 娘を殺した死刑囚との対話』佐藤慶紀役者には自然に出てくる感情をダイレクトに表現できるように、それを引き出せるようにしたいと思いました。それで、カメラ位置を固定して役者の芝居の範囲を限定するようなことにはせず、シーンの方向性を決めたら、役者には自由に動いてもらって、それをカメラで追うようなやり方にしました。また、会話劇ですので、手の動きや目線といったところを意識してもらいました。

Q 娘を殺された母親・晴美役の西山諒さんをはじめ、芝居の感情表現は、監督はどのくらいコントロールしていたのでしょうか。

A映画『HER MOTHER 娘を殺した死刑囚との対話』佐藤慶紀実際のところ、お任せの部分が多かったです。というのは、オーディションの時点でこの人ならこのくらいできる、ということを把握していたからです。犯人・孝司役のオーディションでは、晴美が最初に面会した時に孝司が発する「本当に申し訳ありませんでした」というセリフだけを言ってもらいました。「申し訳ありません」と言いながら威圧感のある方でなければこの役は務まらないなと思っていました。それを荒川泰次郎さんが体現できていたので、実際の芝居ではそのまま演じていただきました。他の方も同様ですね。

Q この映画を撮って、死刑制度に対する見方に監督自身は変化はありましたか。

A佐藤慶紀作る前は死刑は良くないなとは思っていました。この映画を作って、その気持ちは強くなりました。ただ、それを映画の中で主張しようとは思いませんでした。

Q 日本は世界の中では死刑制度のある数少ない国です。

A佐藤慶紀そうですね。そのわりにはあまり議論にもなっていないです。むしろそれについては話さない方がいいというような空気感も感じます。ですので、自分の主張は描いてはいませんが、オープンに議論する機会にはなればいいなと思いました。大阪アジアン映画祭でこの映画を観ていただいたご夫婦からは「この映画を観た後に、初めて二人で映画の話をした」と言ってもらえたのが嬉しかったです。

Q 死刑を止めようとする主人公に対して周りは反対しますが、他人と違うことをしようとする人を包囲しがちな日本の風潮を描いているようにも見えました。

A映画『HER MOTHER 娘を殺した死刑囚との対話』佐藤慶紀「人に迷惑をかけるな」「じっと我慢して耐える」といったことを日本人は美徳として持っています。その中で自分の意見を言おうとしたり、感情的に行動する人を押さえつけようという風潮はあると思います。例えば、福島では放射能に対する不安を口に出すと変な人に見られるといった風潮があります。それをいい面、悪い面両方を描きたいと思いました。そうすることで観客の皆さんの心をできるだけ揺さぶりたいと思いました。

Q この映画を通して何か新しい発見したことや気づきはありましたか。

A佐藤慶紀作っている最中よりも完成後、映画祭でお客さんとの質疑応答をしている時に、思ってもみない視点での質問や意見をいただいて、そこからの気づきがありました。フランス、韓国、台湾の映画祭でも上映しましたが、フランスは死刑制度がなく、韓国は停止していて、台湾は最近行う傾向にあるということで、制度としてはバラバラですが、いずれの国でも観客の皆さんが死刑制度についての意見を述べられて、普段からそういったことを考えていらっしゃるのかなと思いました。
一方、日本では死刑制度についての意見は多くは出てこなかったので、大人数の中で自分の意見を言うこと自体が恥ずかしいのかもしれませんが、死刑制度について考える機会はないのかなと思いました。

Q 今後はどんな題材の映画を考えていらっしゃいますか。

A佐藤慶紀いまドキュメンタリー映画を撮っています。新宿タイガーさんという方を題材にした作品です。今回の主人公・晴美と同じように、新宿タイガーさんも人と違うことを恐れずにやっているということに興味を持ちました。

Q 佐藤慶紀監督からOKWAVEユーザーにメッセージ!

A佐藤慶紀僕は、作品を観ていただくと同時に、監督と観客が対話することも大事だと思っています。公開中にできるだけ劇場に行こうと思っているので、ぜひ話しかけていただければと思います。

Q佐藤慶紀監督からOKWAVEユーザーに質問!

佐藤慶紀世論調査では日本の8割の方が死刑制度を容認していますが、OKWAVEユーザーの皆さんは死刑制度に賛成、反対どちらでしょうか。ぜひその理由もお聞かせください。

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■Information

『HER MOTHER 娘を殺した死刑囚との対話』

映画『HER MOTHER 娘を殺した死刑囚との対話』2017年9月9日(土)新宿K’s cinema他、全国順次公開

『娘を殺害した加害者の死刑を止めようとする母。一体なぜ…』
43歳のビジネスウーマン・晴美。2年前に1人娘のみちよが嫁ぎ、現在は夫と2人で平凡に暮らしている。そんなある日、みちよが婿の孝司に殺されてしまう。孝司は死刑判決を受ける。
当初は死刑判決を当然の事と考えていた晴美だが、ある時から孝司の死刑を止めようと考え始める。
そこには、晴美しか知らないみちよのある秘密があった。

監督・脚本・編集:佐藤慶紀
出演:西山諒 西山由希宏 荒川泰次郎 岩井七世 野沢聡
箱木宏美 木引優子 西田麻耶
配給・宣伝:渋谷プロダクション

https://www.hermother-movie.com/

©『HER MOTHER』製作委員会


■Profile

佐藤慶紀

佐藤慶紀(映画『HER MOTHER 娘を殺した死刑囚との対話』)1975年愛知県半田市生まれ。
アメリカの南カリフォルニア大学・映画制作部卒業。
フリーランスTVディレクターとして働きながら、自主映画を作り続けている。長編自主映画第1作『BAD CHILD』は、第29回ロサンゼルス・アジア太平洋映画祭に正式出品され、東京、愛知、宮城、北海道など、全国15カ所で自主上映会を開催。全国47都道府県での上映を目指し、現在も自主上映活動を続けている。『HER MOTHER』は、長編第2作目。現在長編ドキュメンタリー映画『新宿タイガー』を撮影中。