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Vol.709 映画監督 ジェイダ・トルン(映画『猫が教えてくれたこと』)

OKWAVE Stars Vol.709は映画『猫が教えてくれたこと』(2017年11月18日公開)のジェイダ・トルン監督へのインタビューをお送りします。

Q 『猫が教えてくれたこと』を撮るきっかけについてお聞かせください。

A映画『猫が教えてくれたこと』ジェイダ・トルン私は猫が好きです。とくにイスタンブールの猫が大好きです。私が子どもの頃のすごくいい友達だったということもあります。それにイスタンブールの街や人を見せることもできると思いました。猫を通していろんな人のいろんな話を見せられると思って映画にしました。

Q では、猫と一緒にいる人たちの人間模様をどう描こうと思いましたか。

A映画『猫が教えてくれたこと』ジェイダ・トルン猫と人はそんなに分けられない存在です。ある研究によると、猫と人は一緒に住み始めたという歴史が分かっています。トルコでは人間と猫の関係は1万年前から始まったと言われています。人間が農業を始めて定住するようになった時、猫も一緒に住み始めたので、猫と人の間には非常に親密な友情の関係があります。馬のように仕事に使うわけではなく、仲間として一緒にいるので、猫を描けば必然的に人間を描くことになりました。

Q 映画の中で紹介された7匹の猫たちはどのように選んでいきましたか。

A映画『猫が教えてくれたこと』ジェイダ・トルン私にとって大切だったのは、人とユニークな関わりを持っている猫を探すことでした。異なるタイプの猫を通して異なるテーマが描けるように、撮影に先立ってリサーチをし、35匹の猫を追跡しました。実際に撮影を始めた時には19匹に絞りました。さらに撮影から編集の段階で、ある種のストーリーをもたらしてくれる猫を選びました。それも同じようなストーリーではなく、それぞれが異なるストーリーを持っている猫を選んだんです。
実はこの映画では出てこない猫が2匹いて、それはDVD版には入っています。その2匹が映画本編に入らなかったのは、他の猫のエピソードと似ているのと、ストーリーとしてちょっと短かったからです。
3ヶ月という短い撮影期間で、猫の物語を集めるのは大変でした。こういった動物ドキュメンタリーでは通常、1年以上の時間をかけます。私たちには3ヶ月しかなかったので、その3ヶ月の中でいろいろな猫に出会えて幸運でした。

Q その猫たちはどのような方法で探したのでしょう。

A映画『猫が教えてくれたこと』ジェイダ・トルン撮影の1年前にリサーチをして、その時に見つけた猫たちです。道を歩いていて偶然見つけた猫もいます。地元のプロデューサーにもイスタンブールのあらゆる路地を歩いてもらって、探してもらいました。人づてに面白い猫がいると聞いて探しに行って、思いもよらない出会いもありました。
また、ビジュアルとしての共通点のない猫を探していました。船にいる猫、市場にいる猫、といった具合に、みんな異なります。インターネットの投稿動画ではなく、映画館の大きなスクリーンで鑑賞する映像だから、そういったところをすごく意識しました。

Q イスタンブールの美しい景色も収められていますが、一方で街は大きく変化しているとも紹介されています。イスタンブールの変化をどう受け止めていますか。

Aジェイダ・トルンイスタンブールは高層ビルが立つなど、ものすごく変化しています。でも、変わらないものもあります。例えば地形です。ボスポラス海峡があり、丘の上に街が作られているところは昔から変わりません。海峡を見下ろす丘の上に立てば、風や水に強さを感じられるでしょうし、5,000年以上前に作られて今に至っている街だということが感じられるでしょう。時代を超えたもののように感じられるものがたくさんありますが、そのひとつがまさに猫なんです。この街の古来からあるものを猫も伝えているのだと思います。

Q イスタンブールはやはり監督にとって特別な場所でしょうか。

A映画『猫が教えてくれたこと』ジェイダ・トルンそうです。11歳の時にイスタンブールから離れて、今では米国に住んでいますが、幸運なことにほぼ毎年イスタンブールに帰る機会はあります。だから、大都市としてのイスタンブールに住むフラストレーションもなく、大好きなイスタンブールに向き合うという、面白い視点を持ち続けることができています。
この映画ではいつもと違うイスタンブールの姿も見せたいと思いました。観光ガイドに出てくるブルーモスクやグランドバザールなどは地元の人にとっては特別なものではありません。この映画に出てくる魚市場のようなところにはとっても面白い人たちが暮らしています。私自身がよく知っているオーガニックフードの市場や、家族や友人が知っている場所がこの映画にはたくさん出てきます。もちろん猫がいるのが前提の映画ですが、私たちの大好きなイスタンブールを見せることも大事でした。

Q イスタンブールに住む人たちの変化は何か感じますか。

Aジェイダ・トルン政治は大きく変わったとは思いますが、個々人の資質はあまり変わっていないと思います。興味深いことに、猫のことについて聞くと、猫のことをどれだけ愛しているかとか学んだことなど、共通点がたくさんあるんです。でも、政治のことや信条はみんな違います。共有するものが少ないとお互いのことを嫌いになったり分断されがちになると思います。貧富の差や支持する政党が違っても、猫好きで、猫を大切にしている人がたくさんいることで、同じようにお互いのことを尊重したり大切にする気持ちが生まれるのだと思います。
イスタンブールで育って私は幸運でした。母や姉は家の中で動物を飼いたくない、という人たちだったので、イスタンブールでなければ外でも猫とは関わらなかったと思います。人間と同じ言葉を発しない猫のような存在と関係を持つことは、長い目で見ても、幸せや自分のことを省みるということにおいても、とても大切なことだと思います。

Q 映画の中に出てくる7匹の猫たちで、とくに監督がお気に入りの1匹はいますか。

Aジェイダ・トルンガムシズは面白いですね。大きくて重いし、強いので、すぐにちょっかいを出されて引っ掻かれたりはするのですが、飛んだり跳ねたりよく動くので、撮影する被写体としては好きです。でも、私個人としてはベンギュがかわいくて好きです。ガムシズやサイコパスはいまイスタンブールに行っても同じ所にいると思います。そのくらいその場のボスのような存在なんです。

Q 映画の中で出てくる「飼い猫にすると猫らしさを失ってしまう」という言葉が印象的です。

A映画『猫が教えてくれたこと』ジェイダ・トルンみんなジレンマがあると思います。イスタンブールの道路は混沌としているので、猫の死因で一番多いのは自動車事故なんです。外で自由に暮らさせているのはいいけど、事故に遭いそうだし、家の中で飼うと安全だけど、自分との関係にしかならない。私は、映画の中に出てくるイラストレーターの意見に近いです。猫にとって最高なのは好きな時に帰って来られる場所があるということ。3日くらい出歩いてふらっと帰ってくる。人間にとっても猫にとっても健全なことだと思います。自由を得る代わりに失うこともあるし、愛しているから失うものもある、辛いことですがそれを学ぶことも必要なのかもしれません。

Q 長編初監督、ドキュメンタリー初監督とのことですが、本作を監督して、新しい発見はありましたか。

Aジェイダ・トルンこれまでもドキュメンタリーを撮ることに敬意を払ってきました。今までドキュメンタリー以外を撮ってきて学んだこともたくさんあります。ドキュメンタリー以外の作品は事前にすべて準備するんです。台本があって、撮る構図があって、出演者も決まっていて、全て自分のコントロール下にあります。でも、ドキュメンタリーはライティングすら自分でコントロールできません。だから、これがどう見えるかについての本能のようなものが磨かれると思います。周りの映画製作者たちもみんな「1本はドキュメンタリーを撮った方がいい」と言います。
私がこの映画を撮って得た結論は、イスタンブールもそこに住む人も変化はもちろんありますが、将来に向けて希望を持つことができました。なぜならこれだけ愛に満ちているからです。

Q 今後はどのような映画を撮るお考えでしょうか。

Aジェイダ・トルン3本計画していますがこの映画とは全然違います。1本はフィクションで台本作りの最中です。2本はドキュメンタリーで、スーフィズム(イスラム教の神秘主義哲学)についてと、60年代のトルコのロック音楽についてです。バルシュ・マンチョ(BARIŞ MANÇO)というサイケデリック・ロックの歌手で、東京でコンサートを行ったこともあるそうです。今のロックにも影響を与えているそうで、今リサーチ中です。
内容はどうであれ、私と、今回の撮影と製作を行っているチャーリー・ウッパーマンが撮りたいと思っている作品は、今回の猫のようなみんなが観たいと思っているコマーシャルな要素もありつつも、その中に深い何かを盛り込むことを目指しています。

Q ジェイダ・トルン監督からOKWAVEユーザーにメッセージ!

Aジェイダ・トルンまずは何より、猫がたくさん出てきます。日本の方は猫の姿や触り心地のようなこと以上に、猫との関係性を大事にしているように感じます。これまで猫が好きではなかった友人はこの映画を観て猫好きになりましたので、目で観て心で観ることができる映画だと思います。ぜひご覧ください。

Qジェイダ・トルン監督からOKWAVEユーザーに質問!

ジェイダ・トルン皆さんの猫から教わった思い出深いエピソードをお聞かせください。
それと、自分が猫だったらどんな猫だと思いますか。

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■Information

『猫が教えてくれたこと』

映画『猫が教えてくれたこと』2017年11月18日(土)シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMA他、全国順次公開

生まれたばかりの子猫たちにエサをあげるために市場の食べ物を狙う虎猫の「サリ」、なでられるのが大好きなメス猫の「ベンギュ」、レストラン近くに住みネズミ退治を仕事にしている義理堅い性格の「アスラン」、喧嘩が強く、旦那を尻にしいているくせに嫉妬深い「サイコパス」、下町の市場に住み、そこで働く商売人や客たちと触れ合う看板猫の「デニス」、遊び人風で周囲の大人たちの心を虜にする「ガムシズ」、高級なデリカテッセンにいつも美味しいエサをもらっている礼儀正しい「デュマン」。
古くから猫の街として知られるトルコの古都イスタンブール。
生まれも育ちも全く違う、7匹の個性豊かな猫を軸に、イスタンブールの人々と猫の幸せな関係をとらえたドキュメンタリー。

監督・製作:ジェイダ・トルン
撮影監督・製作:チャーリー・ウッパーマン
配給:アンプラグド
公式サイト:http://neko-eiga.com/

© 2016 Nine Cats LLC


■Profile

ジェイダ・トルン

ジェイダ・トルン(映画『猫が教えてくれたこと』)イスタンブールに生まれ、苦難の多い子供時代を野良猫と共に過ごした。母親には狂犬病を心配され、姉からは蚤を家に持ち込むのではと心配されていた。11歳の時に家族と共にトルコを離れ、ヨルダンのアンマンで暮らした後、高校生の時にニューヨークへ移り、それ以降野良猫に出会うことはなくなった。
ボストン大学で人類学を学んだ後、イスタンブールへ戻ってレハ・エルデム監督のアシスタントを務めた。その後、ロンドンへ渡り、プロデューサーのクリス・オーティの下で働いた。そしてアメリカへ戻り、撮影監督のチャーリー・ウッパーマンと共にターマイト・フィルムズを設立し、初めて長編ドキュメンタリーを監督。親しい猫たちに会えないことを今でも寂しく思っており、ロサンゼルスで猫を見かけるたびに胸をときめかせている。