OKWAVE Starsは、ここでしか読めない、俳優・女優、映画監督、アーティストへのインタビューと、彼らからの「質問」に「回答」できるOKWAVEの特別企画です。

Vol.719 映画監督 清原惟(映画『わたしたちの家』)

OKWAVE Stars Vol.719は映画『わたしたちの家』(2018年1月13日公開)清原惟監督へのインタビューをお送りします。

Q 『わたしたちの家』は東京藝術大学大学院の修了制作作品とのことですが、どのくらいの期間をかけて作られたのでしょうか。

A清原惟最初の企画プレゼンから完成まで半年くらいです。一学年に監督は4人いるのですが、4人がそれぞれ、先生方と、一緒に作っていくスタッフに向けて企画プレゼンを行います。企画そのものにダメ出しはされませんが、実現可能性や内容についての指摘を受けながら企画を精査して、企画がまとまった後は自分たちで作っていきます。映画作りが始まると、先生方から指導されるのではなく自主的に進めていくことになります。先生方は相談には乗っていただけますが、作りたいものをみんなが頑張って作る、というスタイルです。

Q 大学院にはどのくらいの学生が在籍されているのでしょう。

A清原惟30人くらいです。監督、脚本、撮影・照明、サウンドデザインの領域に分かれて入学試験を受けるので、入学した時点でその役職の道を進むことになります。入学ができれば、中での競争があるのではなく、監督領域に入った全員が撮ることができるという仕組みです。

Q 『わたしたちの家』の話に戻りますが、この作品の着想についてお聞かせください。

A映画『わたしたちの家』清原惟もともと、複数の話が同時に進む映画を撮りたいという構想がありました。オムニバスや群像劇とは違うやり方でそれぞれの話が独立している映画にしたいと思っていました。私はバッハの音楽が好きでよく聴いているのですが、フーガという形式があって、複数のメロディラインのひとつひとつが主旋律を奏でます。全部が主役として進んでいってそれぞれ独立したまま影響を及ぼし合っています。そういう構造で映画を作れないかなと思いました。ですので、物語としては全く接点のない話をどうやったら1つの映画として成立するかを考えていきました。

Q その結果が「家」に至ったということですね。非常に特徴的な「家」が舞台になっていますが、実在のものなのでしょうか。

A清原惟はい、セットではなく、実際に横須賀にある家で撮影しています。90年くらい前に建てられた古い家で、もともとは商店として使っていたそうです。それ以前はもう少し普通の家を想定していたので、あの家からインスピレーションを受けて脚本も変えました。外のシーンもあの家の近くで撮影をしました。
家のことはもともと知人の知人が住んでいて存在自体は知っていたので、実際に行ってみて、独特の空気が流れていて直感的にいいなと思って選びました。
あの家がそれぞれの舞台になることで、全く違う話が進んでいても、観ている人の中に接点が生まれてくるだろうと思いました。

Q 撮影や演出の面でこだわったことはいかがでしょう。

A映画『わたしたちの家』清原惟映画の中には2つの話があるので、その2つがどう違っているのか、または似ているところは何なのか、というところを意識しました。工夫もしましたし、苦労も多かったです。2つの話のそれぞれの役者とは別々に撮影しているので、完成した映画と同じ状況で役者たちは演じています。それぞれの話を見ているのは私やスタッフだけなので、2つの話をどう演出していくのかを丁寧に進めました。それぞれの役者は撮影中には顔を合わせていないので、もしかするとスクリーンで初めてもう一方の役者の姿を観たという方もいるかもしれません。

Q 中学生のセリの話は親子の関係を中心に描いていますが、もう一方は記憶喪失のさながどうなるのか不思議な話になっています。

A清原惟一方はわかりやすい物語にしようと考え、セリや母親の気持ちを誰でも汲み取りやすいような物語にしました。もう一方はそれと対比するということもありますし、記憶を失った女性が主人公なので、その女性の見ている世界そのものを表現しようと思いました。それはきっと混沌としていて、隠されているものがたくさんあるような感じだろうから、そんな物語を描きました。
この2つの話は全く違う世界でありつつも何か接点がある、ということへの希望や美しさのようなものを目指しました。

Q 本作への取り組みを通じて新しい発見はありましたか。

A清原惟撮影にあたって、撮る方法や照明など、事前に決めてもいましたが、現場で決めていくことも多かったです。前半で撮ったことを踏まえて後半の撮影の方法を変更していったので、現場で変わっていくことが多かったのが今回の挑戦でした。撮っている中で現場での必然性のようなものが出てくることに気づきました。あるシーンでカメラの位置を決めると、次のシーンで同じ位置にするのか変えるのか、そういった変化が生まれましたし、現場での台詞を受けて脚本も変化させたりもしました。

Q 修了制作にとどまらず、2017年PFFアワードグランプリを受賞されて劇場公開に至りました。

A清原惟撮っている時は、もちろん多くの人に観てもらいたいと思っていましたが大学院の外で公開できることはあまりないことなので、劇場公開できることに驚いています。劇場公開は夢でしたのでとても嬉しいです。

Q今後はどんな作品を撮りたいですか。

A清原惟『わたしたちの家』は自分たちの世界が確実なものではない、ということも描いています。私はそういうものに興味があるので、不安定で不確実なものをテーマに世界の構造そのものを撮っていきたいと思います。
現在は、PFFアワード受賞者向けのスカラシップの挑戦権があるので、そこに向けて新しい脚本を執筆しています。

Q ちなみ映画監督業に興味を持ったきっかけは何だったのでしょう。

A清原惟高校生くらいの頃から映画を観るのが好きになりました。それで高校の友だちと映画を作ったのも楽しい経験で、自分でも映画が作ることができるとことに気づいて、大学でも映画の勉強を続けました。映画を撮っていくうちに、自分にとってしっくり来る表現だと思いました。それまでは他のことにも興味を持っていて、そちらを取り組んだこともあるのですが、映画を作る中で映画が自分に合っていると思いました。

Q 清原惟監督からOKWAVEユーザーにメッセージ!

A清原惟2つの話が一軒の家で起きている、という不思議な映画です。観ている人に多くの謎を与える映画ですが、その謎を楽しんでいただけたらと思います。観ている人によって見え方が全く違ってくる幅の広さも持っていますので、皆さんがこの映画をどのように感じてくれるか、私自身、公開するにあたってすごく楽しみにしています。

Q清原惟監督からOKWAVEユーザーに質問!

清原惟記憶喪失の女性・さなはラッピングされた箱をずっと持っていますが、中を見ようとしません。
皆さんは箱の中身は何だと思いますか。

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■Information

『わたしたちの家』

映画『わたしたちの家』映画『わたしたちの家』2018年1月13日(土)より、渋谷ユーロスペースほか全国順次公開!

セリはもうすぐ14歳。父親が失踪して以来、母親の桐子と二人暮らし。最近、お母さんに新しい恋人ができて複雑な気持ちになっている。
さなは目覚めるとフェリーに乗っており、自分に関する記憶がなくなっていた。彼女は船内で出会った女性、透子の家に住まわせてもらうことになる。
二つのストーリーは独特な構造を持つ一軒の同じ「家」の中で進行する。これはいったいどういうことなのか?
映画史上、誰一人として思いつかなかった、特異で甘美な室内劇。
謎に満ちた形而上的スリラーであり、切実でピュアな青春映画であり、女同士の友愛の映画であり、ユニーク極まる建築映画でもある、類いまれなる魅力を放つ作品。
監督の清原惟は東京藝術大学大学院で黒沢清、諏訪敦彦両監督に師事、本作は同修了作品である。本作でPFFアワード2017グランプリを受賞した。

藤原芽生 菊沢将憲 古屋利雄 吉田明花音
北村海歩 平川玲奈 大石貴也 小田篤 律子 伏見陵 タカラマハヤ

監督:清原惟
脚本:清原惟 加藤法子
配給:HEADZ
出演:河西和香 安野由記子 大沢まりを 藤原芽生 菊沢将憲 古屋利雄 吉田明花音
北村海歩 平川玲奈 大石貴也 小田篤 律子 伏見陵 タカラマハヤ

http://www.faderbyheadz.com/ourhouse.html

©東京藝術大学大学院映像研究科


■Profile

清原惟

映画監督 清原惟(映画『わたしたちの家』)1992年生まれ。
武蔵野美術大学映像学科卒業、東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻監督領域修了。
武蔵野美術大学在学中に監督した『暁の石』がPFFアワード2014に入選。
同卒業制作の『ひとつのバガデル』がPFFアワード2015に2年連続で入選、第16回TAMA NEW WAVEにノミネートされる。その後、東京藝術大学大学院映画専攻に進学し、黒沢清監督、諏訪敦彦監督に師事する。
最新長編である藝大の修了作品『わたしたちの家』がPFFアワード2017で3度目の入選にしてグランプリを受賞する。
他の作品に『火星の日』『しじゅうご円』『音日記』『波』等がある。