OKWAVE Starsは、ここでしか読めない、俳優・女優、映画監督、アーティストへのインタビューと、彼らからの「質問」に「回答」できるOKWAVEの特別企画です。

Vol.733 映画監督/製作 ユンミア(映画『一陽来復(いちようらいふく)Life Goes On』)

OKWAVE Stars Vol.733は3.11から6年後の被災地の人々の姿を描いたドキュメンタリー映画『一陽来復 Life Goes On』(2018年3月3日公開)ユンミア監督へのインタビューをお送りします。

Q 『一陽来復 Life Goes On』を撮るきっかけをお聞かせください。

A『一陽来復 Life Goes On』ユンミア2011年3月11日に震災が起きた際には、個人的にも何かしなければと思って、同年の秋に石巻へ泥掻きのボランティアに行きました。11月でしたが、すでに瓦礫は撤去されていて、礎石があるだけの土地が広がっていました。そのだだっ広い平原のような場所を津波が覆い尽くしたのかと思うとやはり特別な気持ちになりました。泥掻きで伺ったのは浜辺の近くに残った家で、海水で食器が砂まみれになっていました。その食器を洗いながら、食器の数などからそのご家族の生活がリアルに伝わってきました。実際にはどんな方が住まわれていたのかはボランティアには伝えられてはいませんでしたが、それでも、こういう広い場所の小さな一角にそれぞれの生活があったのだと思いを馳せました。
その後、この会社(平成プロジェクト)で『サンマとカタール 女川つながる人々』(以下『サンマとカタール』)という映画を作ることになりました。2013年頃から女川に2年半通うことができて、制作プロデューサーという立場で、ほとんどのロケに同行しました。女川の人たちの熱さと復興するんだという強い意志を目の当たりにしました。私たちにはないすごいものがあるとその時には感じました。
その作品が完成して、1本の作品だけでは伝えきれないな、という思いもありました。これからも東北に来たいと思っていた時に、復興庁の「心の復興」事業を聞いて、映画はこれまで例がなかったのですが採択していただいて、映画とワークショップのプロジェクトで助成金が得られたのでこの映画の製作が始まりました。
東北の状況は毎年変化しています。何年経ったからもういい、ということはなく、5年目なら5年目の、6年目なら6年目のその時にしか見えない光景があるので、それを映像に残すのは後々必ず意味があることだと思いました。『サンマとカタール』の時も同様で、震災から3年経ってから撮り始めたので「もう遅いのでは」と最初は思いました。ですが、今思うと、当時のみんなの思いは今は既に変わっていて、あの時だけの思いと景色を記録できたのは有意義だったと後から気づきました。だから今回も、今しか撮れない6年目の姿を被災しなかった者である私が映像として残していかなければと思いました。

Q 遠藤夫妻ら、撮影された被災地の方々とはどのように出会ったのでしょうか。

A『一陽来復 Life Goes On』ユンミア期間が限られていたのと、復興庁からは岩手・宮城・福島の3県で撮ってほしいという要望もありました。女川で1本作ったので、他の地域で探し始めて、いろいろなルートで紹介していただいた方々に会いに行き「被災地で生まれている希望を撮りたいです」とこちらの意思を伝えました。3県で撮るので、似た境遇よりは違った立場の方がいいだろうという意図で100人ほどお会いして撮影を進めて行きました。
遠藤さん夫妻はテイラー・アンダーソン記念基金の方からご紹介されました。アメリカの大学生たちが「『サンマとカタール』を観たい」ということで、上映会を開催したのですが、その時に来て下さりお話しました。映画の出演を聞いてみたら「僕らにも伝えたいことがある」と言われて出ていただけることになりました。

Q 撮影はいかがだったでしょうか。

Aユンミア現地にずっと滞在して密着できるわけではなかったので、移動など物理的には大変でした。最初は何かイベントがある時に通っていたので、普段の姿がなかなか撮れなかったり、私とカメラマンと音声担当の3人のスケジュールが合わなくて、私だけだったり、カメラマンだけで撮ってきてもらったり、通って撮るのは大変でした。
それと、出演者の方には負担をかけたくなかったので、こちらが密着したくても、それができない時は控えるようにしていたので、内心「あまり切り込めていないのでは」と焦りを感じることもありました。ただ、作り終えてみると、優しいタッチの作品になったので、これはこれで良かったなと思います。

Q 撮る前と実際にカメラを向けたことで新しい発見のようなものはありましたか。

A『一陽来復 Life Goes On』ユンミア特に津波の被害に遭われた方はカメラを向けても動じないんです。例えば東京で撮影する時は、カメラを向けるとみんな髪を直したり身なりを気にしたりしますが、そういうことがまったくなかったです。どこからどう撮られても平気、とても強くて堂々としているように感じました。同じ被災された方でも、内陸である福島の川内村の方だと、カメラを向けるとみんな照れてしまって、至って普通の反応でしたので、津波を経験された方の動じないところがすごいと思いました。それと皆さん明るかったです。笑顔のシーンだけを編集して使っているわけではないんです。仲間同士集まっている時は冗談を言って笑いあったりして、そうすることで支え合っているんだと感じました。
遠藤さんと接していて、辛いことを経験された方は他人に何て優しいのだろうとも感じました。遠藤さんはお子さんを亡くされていますが、「その話をすると皆さんが辛いだろうから申し訳ない」と仰るんです。こちらが辛い経験を話してもらっているのにこちらのことを気を遣ってくださるのも印象的でした。
6年経ったことで語っていただけたことも多かったと思います。今年は遠藤さんの一番上のお子さんが成人式を迎える年で、お子さんのお友達の晴れ着姿を見るのは辛かっただろうと思います。何年経ってもそういう場面はあるし、どれだけ時間が経っても癒されない痛みがある、ということを感じました。

Q 監督から見て、東北の今の状況はどう映りましたか。

Aユンミア仮設住宅を出られて復興住宅や自立再建された方も多くいましたし、まだ仮設住宅に住んでいる方もいました。差し迫っての衣食住の不自由はなくなってきて、町も道路ができて、基本的なインフラはできていますので第一ステージのハード面の復興は着実に進んでいるのかなと感じます。復興庁でも最初の5年がハード面の復旧で6年目からは心の復興だと位置づけていて、この「心の復興」事業が始まっています。もちろん、まだ工事車両が出入りして土地の嵩上げは続いていますが、皆さんの暮らしは一見は落ち着いているように見えます。これまではどう復興するのかという議論だったのが、プランが出揃って、復興計画の大枠が目に見えるところまでは来たのかなと現地に行くと感じます。ただ、町によって差は感じます。格差のようなものが今後どんどん広がってしまうのかもしれません。

Q 個人的には川内村のワイン畑の動向が気になっています。

Aユンミア最初の3年間は実を取らずに樹を大きくするそうです。2018年が3年目で今年の秋は実験的に実を収穫するそうです。シャルドネやメルロー、ソーヴィニヨンブランなどいろんな種類のブドウを植えていて、2020年東京オリンピックの年に商品として出荷したい、というのが目標です。まだワイナリーがないので、これから建設するそうで課題もたくさんあるそうです。映画で撮影した時はブドウの木は2千本でしたが、今は1万本に増えています。1本の木から2本のワインが取れるそうですし、ブドウの葉っぱも天ぷらにすると美味しいんです。景色も素敵なところです。福島県では「ふくしまワインベルト」というそうですが、会津などにもワイナリーが作られていて、川内村も新たに参入しますし、福島は国産ワインの新たな土地になろうとしていますね。

Q 本作を経て今後はどんな作品を手がけたいですか。

Aユンミア東北とは、今回仕事で携わらせていただきましたが、出演者の方々とは仕事だけの関係ではないので、これからも会いに行きたいと思っています。私にとっても素晴らしい友人ができたという思いです。
私は元々プロデューサーで映画監督になろうという気持ちで務めたわけではないですが、
作りたい企画はいくつかあります。初監督がこういうテーマだったのはありがたいことで、仕事であって、仕事のようではなかったです。『サンマとカタール』と『一陽来復』を作って、第3弾もぜひ、とは言われています。震災から7年ですが、10年目になると世間の注目も高まりますが、8年目、9年目はどうしても注目度が下がってしまいますが、何か継続できるといいなと思います。

Q ユンミア監督からOKWAVEユーザーにメッセージ!

Aユンミアテーマは東日本大震災ですが、痛みを乗り越えて生きていくという普遍的なテーマが込められています。震災を扱っていますが遠いところの出来事ではなく、辛いことがあっても人間はこんなに強く生きていけるんだということを東北の人たちが伝えてくれています。この映画を観ると、自分が辛い時には思い出してちょっとがんばれると思います。震災映画ということではなく、たくましく生きている人たちを観に来てほしいなと思います。

Qユンミア監督からOKWAVEユーザーに質問!

ユンミア日本全国どこで災害が起こるかわかりません。防災グッズや保存食の備えが必須と言われている昨今ですが、一般的なもの以外で、これだけは必ず入れておきたい、というあなたのこだわりの一品があれば教えてください!

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■Information

『一陽来復 Life Goes On』

『一陽来復 Life Goes On』2018年3月3日(土)ヒューマントラストシネマ有楽町他全国順次公開

本作品は、岩手・宮城・福島の被災3県で生きる市井の人々の姿を通じて東北、引いては日本の現在を包括的に捉えた初のドキュメンタリー。多岐にわたる登場人物やストーリーの根底には、生命への賛歌が流れている。
監督は、NHKドキュメンタリー番組制作や『サンマとカタール 女川つながる人々』『シネマの天使』などのプロデューサーを経て、本作が初監督となるユンミア。「東日本大震災の衝撃と悲しみは世界中の人々に伝播したが、その後生まれたたくさんの小さな希望や幸せを伝えたい」という一心で東北の各地に通い、取材を続けた。また、東北に縁が深く、継続的な復興支援活動で知られる藤原紀香と山寺宏一がナレーションを務める。
一陽来復の春、すべての人に知ってもらいたい鎮魂と再生の物語が今、スクリーンに開花する。

ナレーション:藤原紀香 山寺宏一
監督:ユンミア
撮影監督・共同監督:辻健司
制作・配給:平成プロジェクト
製作:心の復興映画製作委員会

本作品は復興庁「心の復興」事業の補助を受けています

http://lifegoeson-movie.com/

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■Profile

ユンミア(尹 美亜)

映画監督 ユンミア(『一陽来復 Life Goes On』)1975年生まれ、長野県佐久市出身。
津田塾大学国際関係学科卒。大学時代にカナダ留学。卒業後はインドのタゴール国際大学でデザインを勉強。帰国後、広報代理店やIT企業の広報担当後、映画の世界へ入り、日米合作映画で日本とアメリカを往復してプリプロダクションを担う。NHKのドキュメンタリー番組の制作に参加後、2010年から平成プロジェクトに参加して、制作プロデューサーに。監督作品は今回が初となる。主な作品、 映画『李藝-最初の朝鮮通信使』(13/乾弘明)『サンマとカタール 女川つながる人々』(16/乾弘明)の制作プロデューサー、『シネマの天使』(15/時川英之)、『こいのわ 婚活クルージング』(17/金子修介)のプロデューサーを務める。