OKWAVE Starsは、ここでしか読めない、俳優・女優、映画監督、アーティストへのインタビューと、彼らからの「質問」に「回答」できるOKWAVEの特別企画です。

Vol.747 映画監督 内藤瑛亮(映画『ミスミソウ』)

OKWAVE Stars Vol.747は『ミスミソウ』(2018年4月7日公開)内藤瑛亮監督へのインタビューをお送りします。

Q 『ミスミソウ』の監督を務めることになった経緯などお聞かせください。

A映画『ミスミソウ』内藤瑛亮原作の漫画はもともと読んで知っていました。『パズル』を撮った頃に、「もし「ミスミソウ」を映画化するなら内藤がいいのではないか」という意見がツイッターにあって、確かにそう言われる意味も分かるし、暴力的でありながらその背景にある感情が繊細に描かれているのがいいなと思いました。撮れるなら撮りたいなとは思っていました。結果的に、田坂公章プロデューサーがすでに原作権を取って映画化を別の監督で進めているという話を聞きました。「僕じゃないんだなぁ」という思いでいたら、ある時その田坂さんに呼ばれて「1ヶ月後にクランクインの予定の映画があって、内藤さんに引き受けてもらえないか」と言われました。原作は好きでしたし、僕にも合っているとは思いましたが、さすがに1ヶ月後にクランクインということには悩みました。引き受けた理由は、山田杏奈さんがすでにオーディションで主役に決まっていて、オーディション映像の彼女が素晴らしかったので、彼女を撮ってみたいという思いが大きかったです。やはり好きな原作でしたし、田坂さんとは今までの仕事で信頼関係があったので、飛び込んでみようという気持ちになりました。

Q 実際のところ、1ヶ月の準備期間というのはいかがなものなのでしょうか。

A内藤瑛亮スタッフからは「引き受けちゃダメですよ!」と怒られました(笑)。スタッフの心臓部にあたる助監督が決まったのはクランクインの1週間前で、CG部は決まらないまま撮影に入りました。通常、CG部から「こういう風に撮ってください」と事前に相談があったり、現場で指示されたりするものです。今回は決まっていないので、たとえば指が切れるようなCGで表現するシーンは「『マッドマックス』のメイキングではこうやっていたな」と記憶を頼りに撮りました。
現場では衣装が違っていたり、ロケ地が間違って伝わっていたり、大混乱でしたが、よく撮れたなと思います。ただ、準備期間がなかった分、いろんな雑音がなかったのは良かったです。日本の映画はGOサインが出るまで時間がかかるので、それまでにいろんな人の意見が聞こえてきて、本来その企画が持っていた良さが段々と捻じ曲がってしまうことがあります。今回はそういった雑音を聞く余裕もなかったので、素直にこの原作をどうしたらいいか、という思いをストレートに表現できたので、精神的に健全な状態で臨めました。大混乱はありつつも楽しむ余裕もありました。

Q ロケ地についてお聞かせください。この雪深さはどこまで天然なものなのでしょうか。

A映画『ミスミソウ』内藤瑛亮積もっている雪は実際のものです。クランクインの時期が決まっていたのは雪が溶ける前に撮らなければならないからでした。春花が真宮と池川と対峙するシーンの撮影時は実際に雪が降っていました。ただ、リアルな降雪を映像で見るとあまりきれいではないので、スノーマシンで降らせて、さらにCGで描き足しています。山での撮影は天候が変わりやすく、カットがつながらなくなるのでなかなか困難でした。雪の中での撮影は現場に行くまでも体力的にも大変です。血糊が出る場面では、リテイクする時はまずその血糊の上に雪をかぶせて見えないようにしなければならないので、その作業も大変でした。それと、ロケ地の地元の生活圏は除雪車が雪を取り除いているので、撮影の時に雪がほしい時には雪を残しておいてもらうのですが、撮影する場所と違うところに雪が集められていて、僕を含めスタッフ全員で雪を運ぶようなこともありました。

Q キャスティングについてお聞かせください。

A内藤瑛亮僕が入った時点で決まっていたのは山田さんと清水尋也くんだけでした。今回は中学生らしい生々しさが役者に必要だったので、リアル中学生に近い年齢の役者を僕がオーディションをしました。原作のキャラクターに似ているかとか演技の技術も大事でしたが、それ以上に被写体として撮ってみたいかということを大事にしました。この人は面白いなという人を選んだのですごく満足しています。例えば、真宮役の大友一生くんは普段からサバゲー好きで、真宮が使っているボウガンも気に入っていました。彼はいつも靴べらを持ち歩いていて、学校にもマイ靴べらがあるそうで、「何で持ってるの?」と聞くと逆にこちらが鼻で笑われるくらいで、だいぶ変わった子でした(笑)。そういうところが真宮の役にも必要だったのでかえって良かったです。

Q キャストみんな素晴らしい芝居をされていましたが、どのように演出していきましたか。

A映画『ミスミソウ』内藤瑛亮あまり心情を説明しすぎないようにしました。たとえば橘、加藤、三島の3人だったら、春花の人格を認めていないようなところがあるので、ぞんざいに接するように動きから、中田青渚さん、紺野彩夏さん、櫻愛里紗さんには指示をしました。それで演じた彼女たちは役の距離感などを掴んでいってくれたかなと思います。妙子は裏ボスのような役回りなので立ち位置などを指示する中で大谷凜香さんは役を掴んでいったと思います。流美は笑い方ですね。不本意にヘラヘラ笑ってしまって、ムカつかれてしまう感じを与えられるようにと、大塚れなさんには伝えました。
春花の復讐シーンはアクションなのでかなりリハーサルをしました。撮影はロケで合宿でしたので、日中に撮影をして、晩ごはんを食べた後に20時前までと決めて、屋内でアクション練習をしました。怪我をしないような動きでかつ表現として面白かったり暴力的に見える動きを本人たちに確認してもらいました。普通の中学生の役ですので、スピーディーにきれいに動くというよりも、必死さが見えるように動いてもらいました。春花は引き算の演出で、無感情でシンプルに、と指示しました。
清水くんが演じた相場はイジメグループとは決定的に違いますし、ある意味、正義のヒーローの負の側面を描いてもいます。「ぼぎわんが、来る」という小説があって、相場はその主人公の男性を連想させるようなキャラクターなので、清水くんにもその小説のことを話しました。相場に関しては最初からちょっと引っかかるところがあるようにしたかったので、的確に演じてくれたと思います。

Q 撮影当初と終盤で、キャストの方々に変化はありましたか。

A映画『ミスミソウ』内藤瑛亮山田さんは指示すると素直に聞いてくれましたが、すごく寒い中での撮影だったので、段々と表情がなくなってしまって、機嫌が悪いのかなと心配しました。ただ、無感情に見えるのは春花役としては良かったので、余計な指示は出さずに彼女の表情が凍りついたまま撮影を進めました。雪まみれになりながらでしたので本当に過酷だったと思います。撮影の途中にみんなでうなぎを食べに行く機会があって、その時は満面の笑顔を浮かべていたのでホッとしました。やはり食べ物は大事ですね(笑)。
大谷凜香さんは演技経験がなく、モデルとしてCMに出たことがある程度でした。妙子役は演技がうまいだけでは成り立たなくて、ただそこにいるだけでヤバそうな存在感がないとならないし、春花との関係性が成り立たないといけなかったので、オーディションをした中では大谷さんに輝きを感じました。ただ、芝居はオーディションの時も上手ではなかったので、プロデューサーとも相談して、いいなと思ったその時の感覚を大事にして選びました。それでリハーサルに来てもらったら、その時の輝きがあまり感じられず(笑)、スタッフらも「この子で大丈夫か」という空気になってしまいました。ですので、リハーサルを丹念に行いました。とくにバス停の場面が重要でしたので何度もリハーサルを重ねました。段々と役を演じる意識や妙子役を掴んでいけたかなと思います。大谷さん本人はモデルよりも役者になりたいという気持ちで臨んでくれたので、それも良かったですし、子どもが成長していくような感動もありました。

Q とくにキーとなるシーンなどはいかがでしょうか。

A内藤瑛亮春花と妙子のバス停の場面です。この映画は単なる暴力劇ではなく、実は贖罪のドラマです。罪の意識を自覚して、何をもって償いとなるのか苦悩する姿を描きたいと思いました。バス停の場面にそれが集約していると思います。他のイジメグループと妙子に与えられるその後が決定的に違うのはあのバス停の場面にあるからです。実は原作と変えた部分にもつながっていますが、そこは唯野未歩子さんの脚本にはじめから入っていて、秀逸な脚色だと思いました。

Q 白い服が血に染まったり、絵的にもなかなか衝撃的でした。

A映画『ミスミソウ』内藤瑛亮衣装は白と赤がキーの色として意識しました。最初、春花の服は紺で、赤系のマフラーが差し色的に入っているだけですが、物語が後半に進むにつれて赤いコートのように、衣装の赤の範囲が増えていきます。彼女と対峙する人物は重要な場面で白い衣装をまとっていて、それが赤く染まっていくようなところを意識しました。

Q 内藤瑛亮監督からOKWAVEユーザーにメッセージ!

A内藤瑛亮R15作品ですが10代の子たちには観てほしいです。キラキラした青春映画が日本映画には多いですが、自分はこんな青春を送っていないと思う方もいると思います。そういう人たちに響く何かがあると思います。

Q内藤瑛亮監督からOKWAVEユーザーに質問!

内藤瑛亮この映画にはいろいろと痛い描写があるのですが、皆さんがこれまでに一番痛かった経験は何ですか。

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■Information

『ミスミソウ』

映画『ミスミソウ』2018年4月7日(土)新宿バルト9ほか全国公開

東京から田舎に転校してきた野咲春花は“部外者”として扱われ、壮絶なイジメを受けていた。春花の唯一の味方は、同じように転校してきたクラスメイトの相場晄。彼を心の支えに必死に耐えてきた春花だが、クラスの女王的存在、小黒妙子の取り巻きのイジメグループによる嫌がらせは日に日にエスカレートしていった。そして、ある日、激しく燃え上がる炎が春花の家を覆い尽く。春花の妹・祥子は大火傷を負いながらも助かったが、両親は命を落としてしまった。思いもよらない悲劇に遭遇した春花の心は、崩壊する。
やがて事件の真相が露見することを恐れたイジメっ子達は春花に自殺するよう強要するが、それがきっかけとなって春花は事件の真相を知り、家族を奪ったイジメっ子達に己の命を賭けた凄惨な復讐を開始するのだが…。厳しい冬を耐え抜いた後に雪を割るようにして咲く花、三角草(ミスミソウ)。春花はミスミソウのように厳しい冬を耐えて、きれいな花を咲かせることができるのか…。春花が選んだ道とは・・・。

山田杏奈 清水尋也
大谷凜香 / 大塚れな 中田青渚 紺野彩夏 櫻愛里紗 遠藤健慎 大友一生 遠藤真人 森田亜紀 / 戸田昌宏 片岡礼子 / 寺田 農

監督:内藤瑛亮
原作:押切蓮介「ミスミソウ 完全版」(双葉社刊)
脚本:唯野未歩子
配給:ティ・ジョイ

http://misumisou-movie.com/

(C)押切蓮介/双葉社 (C)2017「ミスミソウ」製作委員会


■Profile

内藤瑛亮

映画監督 内藤瑛亮(映画『ミスミソウ』)1982年12月27日生まれ、愛知県出身。
映画美学校第11期フィクション・コース高等科修了。2008年、初等科の卒業制作で短編『牛乳王子』を制作。学生残酷映画祭2009でグランプリを受賞するほか、フランクフルト・ニッポンコネクション、スラムダンス映画祭で上映されるなど国内外の映画祭に招待される。卒業後は特別支援学校(旧養護学校)に教員として勤務をしながら自主映画を制作し、2012年に愛知県の中学校で実際に起きた事件を元にした初の長編作品『先生を流産させる会』を発表。全国劇場公開され、インターネットを中心に数々の論争を巻き起こした。2014年には仙台短編映画祭にて、仙台短編映画祭制作プロジェクト「311 明日」に参加し、『廃棄少女』を制作。その後、『お兄ちゃんに近づくな、ブスども!』(2012年)『救済』(2013)『Beautiful Chaser』(2015年)の短編作品や『高速ばぁば』(2013年)『パズル』(2014年)の長編作品を手掛ける。2015年には古屋兎丸の人気漫画を原作とした『ライチ☆光クラブ』の監督を務め、映画監督としてさらに注目を集める。
TBS『怪談新耳袋 百物語』(2010年)、TBS『悪霊病棟』(2013年)、『リアル鬼ごっこ』の公開を記念し、配信されたオリジナルドラマ『リアル鬼ごっこ ライジング/佐藤さんの逃走!』(2015年)、dTV『不能犯』(2017年)など、ドラマの監督も手掛ける。
現在長編自主映画『許された子どもたち』を制作中。