Vol.78 アーティスト

木根尚登

TM NETWORKで日本の音楽シーンの一時代を築くとともに、常に最先端の音楽を届けてきた木根尚登さんの14作目となるソロアルバム『中央線』は一転、原点回帰となる全曲弾き語りのフォークアルバム!
『OKStars』Vol.78では木根尚登さんに最新アルバム『中央線』のことから、TM NETWORKのこと、サッカーW杯のことまで、盛り沢山のインタビューをお届けします!

『中央線』、実に木根さんらしい作品だと思いますが、中央線沿線を題材にしたねらいやきっかけは?

『中央線』は、TM NETWORKをよく知っている方からすると真逆なアルバム(笑)。
僕は、宇都宮隆君もそうだけど、中央線沿線の立川の出身で、学校に通うのもどこに行くにも中央線に乗っていたので、僕の10代、20代という青春時代の路線なんです。それと企画ものとして捉えた時に、僕の原点がフォークミュージックで、それがあってその後TMでのデビューにつながっていったんですが、20代の頃は50代になってもまだ歌っているとは想像できなかったんですよ。ある程度好きな音楽をやったらプロダクションの社長になったり、レコードメーカーの社員になったりね、自分たちの先輩がみんなそうだったから、自分もそうなっていくんだろうなと思っていました。いま、50歳を過ぎても歌っている自分を客観的に見たときに、何でこんなに音楽をやってられるのかなと考えたら、やっぱり音楽が好きだからなんですね。中学生の時に夢中になったフォークソングが好きな気持ちがまだ自分の中にあったので、この気持ちが支えてくれたんだなと思って、じゃあ原点に帰ってみようかなって。それとTMやこれまでのソロアルバムでは、いろんな方に演奏していただいているので、今回は中央線の駅をテーマに、ギター1本の弾き語りで歌おう、と決めました。

B'zの松本孝弘さん参加の「三鷹ブルース」では、木根さんはブルージーなしゃがれ声も披露されていますが、音楽的なところでのこだわりと、ご自身が考える聴きどころは?

スタジオレコーディングが中心ですが、レコーディングもなるべく沿線にこだわりました。例えば、宇都宮君とはじめてステージに立った立川市民会館の小ホールで一発録りでレコーディングしてみたり。まぁ聴いている人には言わなければ分からないことなんですけど、自分の中では中央線沿線の思い出の場所で、しかもなるべく音を重ねずに一発録りでやっていくことにこだわりました。
「三鷹ブルース」は、小室哲哉君と出会った後に、同じ楽器屋に通っていたんだね、という話になった楽器屋さんがあって、その楽器屋をテーマにした曲だったんですけど、ブルースをするつもりじゃなかったのがたまたまブルースになっちゃいました。その時、僕の頭の中に思い浮かんだのがB'zの松本孝弘君。彼がブルース大好きなのを知っていたから、「ギター弾いてくれる?」ってメールしたらすぐに返事が来てね。彼の気が変わらないうちに(笑)、ギター1本で僕が歌っている曲を聴かせたら「いいじゃない~」って気に入ってもらえてギターを弾いてもらいました。これが唯一、僕以外の演奏ですね。

『中央線』は木根さんの原点回帰のようなところがあると思いますが、今の音楽シーンに感じていることなどお聞かせください。

今のレコーディングで皆さんがお金を使うのはエンジニアなんです。トラックダウンとマスタリングというレコーディングの最後にやる作業があるんですが、今の時代、アマチュアの人でもいい音は録れますが、最後にそれをどう聴かせるかという、仕上げの部分が一番重要なんですね。TMもマスタリングを海外で行ったり、エンジニアも外国の方にお願いしたり、いろいろやってきましたが、優秀なエンジニアの方も早々いないわけです。それで、こんな一発録りのアルバムでも、マスタリングはちゃんとしようということで、結構ご年配な元ソニーの方なんですが、マイケル・ジャクソンも絶賛した保坂弘幸さんという方にお願いしたんです。それで仕上がったものを聴きに行った時に、「私なりに久しぶりにこの仕事を気持ちよくさせていただきました」って言われまして。「本当に癒されました」って。まぁ年齢も高い方だし、こういうフォーク音楽が合っていたのかなって軽く思いながら一通り聴き終えて「いいです、いいです。ありがとうございます」って言ったら、「本当にこれでいいんですか?」って。「どういうことですか?」と聞いたら、今の仕事はどれもこれもレッドゾーンでやってくれっていうのばかりだという話なんです。90年代以降、音量がとにかくフルサイズになるようにマスタリングしろ、ということなんですね。レコーディングの時にはレッドゾーンとブラックゾーンというのがあって、レッドゾーンを超えると音が歪むからダメとかあるんですけど、このアルバムはブラックゾーンで録ったんですね。で、なんでレッドゾーンでやるのかというと、みんなオーディオじゃなく元々の音が小さな携帯で聴くからなんですね。余談になりますが最初にやったのは90年代のビーイング系、WANDSとかB'zとからしいです。ラジオでかかると他の曲よりも音圧があるから目立って、それもあって成功したんですね。
それで何を感じたかと言うと、レッドゾーンにみんなひしめき合ってそこで勝負しているということですね。だからある意味、どの曲も歌もみんな同じようになっちゃったということ。いまは高齢化じゃないですか。30代から40代以上がブラックゾーンにいて10代、20代がレッドゾーンなんですよ。なのにまだ10代、20代相手に音楽業界は商売をしようとしているから、これを30代以上の方に持ってこないと音楽業界は破綻するんじゃないかって思ったんです。何となく作ったアルバムだったのが(笑)、いろんなところでとくに50代、60代の方にいいねって言ってもらえるんですね。いい歌が流れてきたからってサイン会に並んでくれたりとか(笑)。おじいちゃん、おばあちゃん受けがすごくいいんで、これからこのブラックゾーンを開拓していきたいなって思いました。

『中央線』のCDの帯には「推奨年齢50歳以上」ということですが、この世代の方々に対して思っていることは?

自分が50歳を過ぎた時にまだ歌っていられると思っていなかったんですけど、上を見ると加山雄三さんとか、いまだに歌っていらっしゃるし、なんだか元気だなって思うんです。もちろん職探しをしている方もいらっしゃるとは思いますが、大変な時代だからこそ元気を取り戻すチャンスなのかなって思います。昔の世界恐慌があった時に当時のルーズベルト大統領がこういう時だから文化芸術を大事にしようって言い出して、それで財政もないなか支援してできたのがハリウッドだって聞いた時に、こういう大変な時代だからこそ、若い人が夢を追いかけているのは当たり前だけど、10代の頃に音楽やっていたサラリーマンの方が60代になってギターを持ち出して歌い始めたなんてのもOKだと思うんです。親父バンドなんてのがTVで取り上げられたりしてますけど、僕はいい傾向だと思っています。

現在ツアー中ですが、木根さんのコンサートの楽しみ方は?

TM時代は何十人という大所帯で全国を廻って、楽しかったし、勉強もさせてもらったんだけど、振り返ると、どこか乗っかっていたんですよね。レールの上に乗っかってここまで来たという感じがあって、今は真逆の発想で一人で廻ろうって。大変なんだけど、大変なことを楽しんでいますね。いや、本当に大変なんですよ(笑)、会場によっては楽屋もないところもあって。トイレとかで着替えながら何でこんなことやっているんだろう…て思うこともあるんですよ、やっぱり。TMの俺が…ってどこかで思っているわけで。でもまた一からやっているんだって思ってそういうのも楽しみに変えたりしてます。辛さを楽しむってTMにはあんまり無かったのでね。TMは辛くても仲間がいたから笑い飛ばせたので。なので今は一人で廻っていること自体が楽しみで、トーク&ライブという形式なので、いろんな人と話したり、お客さんとの会話もひとつの楽しみ方ですね。

木根さんといえばTM NETWORKの一員であり、TMはどちらかといえば若い層向けの最先端サウンドや歌詞(…『SPEEDWAY』は大人な感じでしたが)が特色ですが、ソロと3人組の違いなどはどのように意識されるのでしょうか。

当時のTM NETWORKが目指していたのはまさに「洋楽」ですね。いまは日本的なものとかオリエンタリティとかも大事にされていますけど、あの頃の音楽は洋楽への憧れがすべてでしたから。ロックはもちろん、フォークもボブ・ディランだったから。TMが目指していたのはデュラン・デュランとかカルチャークラブのようなUKロックだよね。僕はそんな柄ではなかったけど、そういう音楽に乗せられて、いかに洋楽のような曲を作るかを意識してました。どうやったら格好よく見えるだろうとか、格好よく聞こえるかというところにこだわってすごく作りこんでました。だからTMはすごく大変なグループなんですよ。これは僕だけじゃなくてね、宇都宮君も踊らなきゃいけないし、プリンスが流行れば、彼を見て学んだりとか…。そういう風に頑張らなければいけないグループだったので、見た目も肩パットの入ったジャケットとか、僕のサングラスもそうだけど、人前に出る時に染みを見せてはいけないイメージでしたね。そういうグループの反動で(笑)ソロは真逆でジーパンはいて好きな音楽をだらだらと(笑)。でも、そうなるまで時間はかかりましたよ。ソロになったばかりの頃はやっぱりジャケットを着て、立ってエレキギターを持って歌ってましたからね。でも何か違ったんですよね。それとTMと戦おうとしていた時期もありました。ソロの取材でTMの話ばかりになっちゃったこともあったし。でももう戦うのはやめよう、俺は俺、TMはTM、という風に考えたら楽になりました。ラジオ番組でオフコースのメンバーだった鈴木康博さんに羨ましがられたんですよ。木根さんはTMとソロと両方あっていいですねって。彼の場合オフコースはもうないので。その時にもそういうことかって気付かされたんですよね。

ちなみにTM NETWORKの方は今後どうなっていきますか。小室さんもい音楽シーンに復帰されて、次のTMも楽しみです。

>小室さんは最近はTwitterでずいぶん発言もされていて、TMに関することもつぶやいているんですが…。

Twitterね…やれって言われるんだけどさ…ブログは毎日書いているんだけどねぇ(笑)。
2008年に起きたあの事から一段落した後に3人で会っていろいろ話もしたんだけど、宇都宮君はやるならちゃんとやりたいねって言ってて。それでいい形でやりたいねっていう話をしたのが昨年の話。今もそれぞれにやり取りはしていて、再スタートに向けて年末くらいなのか来年くらいなのか、時期は分からないけど少しずつ動き始めてはいます。

さて、6月11日からサッカーW杯南アフリカ大会ですが、W杯応援歌(「元気ニッポン! -Acoustic-」木根尚登+間慎太郎/『ULTRAS2010』収録)も発表された木根さんから日本代表へのメッセージと見どころをお願いします。

応援歌の話はDJ DRAGONからお話をもらってね。日本代表か…サッカーにはいろんな言葉があるけど、その中から「サッカーは本当に何があるかわからない」。この言葉に賭けたいですね(笑)。もうそれしかない(一同笑)まぐれとか奇跡って意味も含めて、最後まであきらめないで頑張ってほしいと思いますね。あと、僕は森本に期待したいです。新しい選手ってことで。
でもこうやって改めて聞かれるとドキドキしてきた(笑)多分怖い思いで見るんだろうね。
海外チームは優勝候補ということで同じ予選グループだけどオランダに注目してます。
それと、川口選手が選ばれたのはすごく嬉しいんだけど、第3キーパーってほぼ試合には出られないでしょう?だったら三浦カズ選手選んでほしかった!(笑)

>カズさんがキーパー登録!それは新しい(笑)

試合出ないでチームをまとめればいいんだから(笑)。キング・カズがチームにいるだけでまとまるでしょう。今の代表って小さい時にカズの活躍を見てた選手ばかりじゃない。実はフランス大会の時はね、逆に岡田監督よくやった!と思ったんだよね、悲しかったけど。あの時は中田ヒデ選手のチームになっていったからカズとぶつかるんじゃないかって思っていたのでこういう選択もあるんだって納得したんだけど、今回は連れて行ってあげてほしかった(笑)。ま、キーパーふたりが怪我したらアウトなんだけど(爆笑)。

木根尚登さんの“モットー”をお聞かせください。

あきらめない、というのが僕の中のキーワードですね。とくに若い人には言い続けたいと思います。TMの時もいま僕がこうしていられるのも、一言で言うとあきらめなかった、ということでしかないんです。今の自分があるのは、あの時のあれがよかったとか才能があったとか、才能のあるやつと組めたとか(笑)、いろんなことが言えるかもしれませんが、そもそもあきらめていたら、人との出会いもないし、そこは今も変わらないですね。中学の時にオーディション受けたように、今も楽曲のコンペに出たりしてますし。実はこの前、嵐の新曲のコンペにも参加したんだよね(笑)。ものすごくたくさんの曲の中から1曲だけ選ぶらしいから、参加はしたけど宝くじ買ったような気分だった(笑)。それでも、この年になってもまだまだやろうとしている自分でいたいです。

最後にOKWaveユーザーにメッセージをお願いいたします。

木根尚登さんが今気になっていることを「質問」してください。

おまけ

その後、木根さんとインタビューに同席していたOK LABEL代表取締役の松浦新平さんの雑談。木根さんから名言をいただきましたので特別?公開!

松浦:
前に、木根さんといっしょにお会いした岸谷五朗さんとか、見た目とか以上に、すごく格好良かったんですけど、ああいうのはどうやってなるんでしょうね。

木根:
やっぱりね、岸谷五朗君とか松本孝弘君もそうだけど、自分に自信をもっているんだよ。松本君なんて、家にいる時は今でも1日8時間とか練習しているらしいよ。それだけやっているから自信があるし、それが格好良さにも表れるんだから。やっぱり人の格好良さは自信だよ。

名言ありがとうございます。

Information

リリース情報

『中央線』
YRCN-95141
価格¥3,060(税込)

収録曲:
01. 高尾駅のベル
02. 八王子メモリー
03. 立川の空
04. 国立マギー・メイ
05. 武蔵小金井からの手紙
06. 三鷹ブルース(B'z 松本孝弘参加)
07. 吉祥寺へ帰る
08. 阿佐ヶ谷小春日和
09. 高円寺を紡ぐ
10. 中野グラフィティ
11. 新宿物語
12. 四ツ谷ロマン
13. 御茶ノ水慕情
14. 東京バラッド

ライブ情報

NAOTO KINE CONCERT 2010 Talk & Live 番外編 Vol.10~回帰~
7月16日(金)東京・Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE 他で実施

詳細はオフィシャルサイトをチェック!

Profile

1957年9月26日生まれ、東京都出身。
1983年に小室哲哉、宇都宮隆とTM NETWORKを結成。1984年4月21日アルバム『RAINBOW RAINBOW』でEPICソニーよりデビュー。1987年にシングル「Self Control」「Get Wild」などのヒットで一躍人気バンドとなる。1989年にファンタジー小説「CAROL」で小説家デビュー。40万部を越すヒット作となる。1992年12月2日ソロ1stシングル「泣かないで」リリース。最新作『中央線』まで14枚のオリジナル・アルバムをリリース。

木根尚登 オフィシャルサイト ROOTS OF THE TREE

木根尚登オフィシャルブログbyダイヤモンドブログ

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