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Vol.804 映画監督 アレクセイ・ウチーチェリ(映画『マチルダ 禁断の恋』)

OKWAVE Stars Vol.804は映画『マチルダ 禁断の恋』(2018年12月8日公開)アレクセイ・ウチーチェリ監督へのインタビューをお送りします。

Q ニコライ2世の“禁断の恋”を題材にした意図をお聞かせください。

A映画『マチルダ 禁断の恋』アレクセイ・ウチーチェリロシア帝国の最後の皇帝、ニコライ2世への関心が長年ありました。当初は、1917年のロシア革命の際にニコライ2世が帝位を放棄する最後の3日間を描きたいと思っていました。そのプロジェクトを立ち上げたものの、うまくいかなくて、それでもこの人物を描きたいと思っていました。ニコライ2世が皇帝に即位する時のエピソードはよく知られていますが、即位してからのエピソードはあまり知られていません。マチルダへのニコライ2世の真実の愛が即位前の数年間ありました。その数年間がロシア帝国の運命が決定した重要な時期だったのではないかと私は思っています。その数年間に、ニコライ2世は即位するか、即位を拒否しマチルダと結婚するという選択肢があったように思います。そのことによって、ロシアがたどる道筋は大きく変わっていたと思うんです。私が二人の恋愛に興味を持ったのは、恋愛そのものではなく、よりグローバルな視点で、歴史が変わる渦中の大きな出来事だと思ったからです。

Q 映画として描く上で、どんなところを大事にしましたか。

Aアレクセイ・ウチーチェリ皇帝というものは王座に偉そうに座って命令を下す人物、ではなく、私たちと同じように熱意や弱さ、人としての欠点を持った普通の人間です。映画を観ている皆さんが共感できる人物として描きたいと思いました。

Q ニコライ2世とマチルダを演じたラース・アイディンガーとミハリナ・オルシャンスカをどのように選んだのでしょう。

A映画『マチルダ 禁断の恋』アレクセイ・ウチーチェリこの主役二人を選ぶのはとても苦労しました。撮影開始のギリギリまで主役が決まらず、少し焦りもありました。私が役者を選ぶ時に重要視しているのは外見や演技力もそうですが、その人がどのように生きてきたのか、どんなことを考えているのかという人間性の部分です。その役にオーバーラップするところがなければその人を選びません。
ニコライ2世役のラースですが、彼がベルリンでハムレットを演じているのを観ていました。演技が気に入ったことと、彼と知り合いになって、彼の内面が私がイメージするニコライ2世ととても似ていると思って自信をもって選びました。ロシア国内ではどうしてロシア皇帝をドイツ人俳優が演じるのか、という批判も一部ですがありました。
マチルダ役は有名なバレリーナをはじめ300人以上の中からオーディションをしてミハリナを選びました。ミハリナはポーランドの大学を卒業したばかりの新進女優で、紹介されたものの、当初は全く期待せずにサンクトペテルブルクに呼びました。ラースと一緒にテスト撮影をしてみると、二人は恋人同士としてとても似合っていました。彼女は女優としてのほとんどキャリアがなかったのでリスクはありましたが、思い切って彼女を選びました。ミハリナは美しく、それもマチルダ役にとって大事なことでした。実際に撮影をしてみると彼女にはとても才能があり、いまや、ヨーロッパで引く手あまたの女優となっています。

Q 撮影の様子についてお聞かせください。

A映画『マチルダ 禁断の恋』アレクセイ・ウチーチェリ撮影は主にサンクトペテルブルクで行いました。豪華な内装がそのまま残っているエカテリーナ宮殿などで撮影していますので、それが映画に華を添えていると思います。戴冠式が行われたクレムリンのウスペンスキー大聖堂はセットでつくりました。そちらもよくできている舞台装置だと思います。実存するロシアの二大劇場のマリインスキー劇場とボリジョイ劇場でも撮影して、当時の劇場の雰囲気をよく再現できたと思います。バレエに関してはペルミ・オペラ・バレエ団の協力を得ましたが、アレクセイ・ミロシニチェンコという首席バレエマスター兼芸術監督に振付をつくってもらい、団員たちに踊ってもらいました。ミハリナのダンスシーンは一部ダンサーのスタントを使っていますが、バレエ関係者が観ても違和感のないように編集に心を配りました。ミハリナ自身もバレエのレッスンを熱心に受けて、バレリーナの歩き方から学んでいるので、やはりバレエ関係者が見てもバレリーナのように見えると思います。

Q ニコライ2世の皇帝としての成長も描かれていますが、ロシア国内では描き方には賛否両論あったそうですね。

A映画『マチルダ 禁断の恋』アレクセイ・ウチーチェリ私は批判はいつでも歓迎しています、それが議論の始まりですから。ニコライ2世のような身分の高い人については、みんなが意見を持っているものです。ニコライ2世には一個人としての心もありますが、映画の中では皇帝になるかならないかという重要な選択をします。皇帝になるという決断をしたことで、彼は決断力のあるリーダーになっていきます。ロシアでは多くの人がニコライ2世のことを人間的に弱くて、ロシア帝国が滅ぶきっかけをつくった人物だと思っています。私自身は様々な歴史書などの資料にあたって別の考えに至りました。彼はとても賢く知的で、大声ではなく静かに命令を下す人物でした。リーダーシップがあり、自分の理想を実現できるチームを集めることもできていました。1913年時点で、ロシア帝国はヨーロッパでは一番、世界でも二番の大国でした。それはニコライ2世の貢献によるものが大きいと思います。

Q アレクセイ・ウチーチェリ監督からOKWAVEユーザーにメッセージ!

Aアレクセイ・ウチーチェリ私はどこの国でもお客さんはスクリーンの中に自分が共感できるものを見つけるために映画館に訪れるのだと思っています。この映画も関心を持って観ていただいて、心を動かされてほしいと思います。この映画の中で描かれていることはロシア革命前にロシアで起こったことですが、最近でも、イギリスのヘンリー王子がアメリカ人の女優メーガン・マークルと結婚したように、現代の別の国でも起こり得ることだと思います。最も重要なメッセージは、自分の社会的な立場に関わらず、誰でも何らかの決断を毎日していると思います。その時に、理性だけではなく、自分の心の声も聞いて決断してほしいと思います。

Qアレクセイ・ウチーチェリ監督からOKWAVEユーザーに質問!

アレクセイ・ウチーチェリ一つはクイズです。1891年にニコライがまだ皇太子の時に来日していますが、その時に日本で起きた事件を皆さんご存知でしょうか。
もう一つ質問がありますが、もし日本とロシアの合作映画が作られるとしたら、皆さんはどんな題材の映画が観たいですか。

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■Information

『マチルダ 禁断の恋』

映画『マチルダ 禁断の恋』2018年12月8日(土)ヒューマントラスト有楽町、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショー

1890年代後半のサンクトペテルブルク。ロシア王位継承者であるニコライ2世は、世界的に有名なバレリーナのマチルダを一目見た瞬間恋に落ちる。燃え上がる彼らの恋は、ロシア国内で賛否両論を巻きおこし国を揺るがすほどの一大ロマンスとなる。父の死、王位継承、政略結婚、外国勢力の隆盛、そして滅びゆくロシア帝国と共に2人の情熱的な恋は引き裂かれようとしていた。

監督:アレクセイ・ウチーチェリ(ゴールデングローブ賞ノミネート監督)
出演:ラース・アイディンガー、ミハリナ・オルシャンスカ
配給:シンカ

http://www.synca.jp/mathilde/

(c) 2017 ROCK FILMS LLC.

☆マチルダ役のミハリナ・オルシャンスカ初来日!
12月8日(土)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAにて舞台挨拶決定!
※登壇時間及び詳細は確定次第、各劇場HPにて公開予定


■Profile

アレクセイ・ウチーチェリ

映画監督 アレクセイ・ウチーチェリ(映画『マチルダ 禁断の恋』)1951年生まれ、ロシアのサンクトペテルブルク出身。
数々の映画賞に輝くロシア国内外で有名な映画監督。サンクトペテルブルグで開催されるMessage 2 Man(メッセージ・トゥ・マン)国際映画祭の名誉会長にして、ロシア屈指の映画スタジオであるロック・フィルムズ(1991年設立)の創設者。主な監督作は、ゴールデングローブ賞外国語映画賞ノミネート、アカデミー賞外国語映画賞ロシア代表となった『爆走機関車 シベリア・デッドヒート』(10/未)、ロカルノ国際映画祭最優秀男優賞を受賞した『The Fool(英題)』(14)、カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭監督賞を受賞した『チェチェン包囲網』(08/未)、モスクワ国際映画祭最優秀作品賞を受賞した『宇宙を夢見て』(05)、クリーブランド国際映画祭、シラキュース国際映画祭、ヴィボルグ国際映画祭作品賞を受賞した『The Stroll(英題)』(03)、AFI映画祭作品賞受賞、アカデミー賞外国語映画賞ロシア代表となった『His Wife’s Diary (作家の妻の日記)』(00/未)など数多くある。