OKWAVE Starsは、ここでしか読めない、俳優・女優、映画監督、アーティストらへのインタビューと、彼らからの「質問」に「回答」できるOKWAVEの特別企画です。

Vol.888 俳優 市原隼人(映画『喝 風太郎!!』について)

OKWAVE Stars Vol.888は映画『喝 風太郎!!』(公開中)主演の市原隼人さんへのインタビューをお送りします。

Q 破天荒な風太郎ですが、市原さんはどう受け止められましたか。

A映画『喝 風太郎!!』市原隼人風太郎は傍から見ると自分の気持ちを押し通し、それを周りに押し付けているような人間に見えるかもしれません。しかし実際にはそうではないです。風太郎には幼い頃の母親との物語があり、その時に大事なものを失ってしまっています。母親の愛情を受けられなかった風太郎は大僧正に育てられます。大僧正に育てられたことで風太郎の中では当たり前のようなものであり、唯一の逃げ道でもあり、すがったのが仏教であり僧侶になるということだったと思います。寺の中でも破天荒な風太郎は教えを風太郎なりに受け止めた結果です。言われたことをそのまま受け取るのではなく、あるべき姿を自分なりに考えての言葉や行動なので、より人間くさい僧侶なのだと思います。そんな風太郎なので、自分を押し付けているのではなく、周りの行動に向けた言葉なんです。風太郎は本来忘れていたような人間くささを思い起こさせてくれると思います。

Q 台本の印象はいかがでしたか。

A市原隼人台本を読んだ時も、完成した映画を観た時も、教科書のように、僕らが生きている世の中の重要な柱を教えてくれる作品だと感じました。学べるところが多いと感じましたし、何より風太郎のキャラクターが面白いと感じました。
僕自身、この映画のような物語が好きですので、自分が演じてどうなるかは想像できませんでしたが、こうして演じられてよかったです。
原作・本宮ひろ志先生のある種の社会派とも言える作品に主演できることを光栄に思いました。SNSやサラリーマンのことなど、現代の社会の仕組みが題材になっているので、ご年配の方にも楽しんでいただけるでしょうし、小学生のお子さんなら風変わりな風太郎を茶化す気持ちで楽しめると思います。

Q 破天荒な僧侶役をどう作り上げていきましたか。

A映画『喝 風太郎!!』市原隼人まずは住職の方にお話を伺って、一つ一つの所作やそれに向き合う意味を学びました。やはり役者は追いかけることしかできないなと深く感じましたし、僧侶とは物事の深いところにある確信をついていくものなのだと、仏教の深さにも感銘を受けました。僕自身が思い至ったのは、常に問いかけを行うことが仏教の目的だということ。“喝”とは何かを正すことだそうです。気持ちがぶれていたり邪念がある時に、自分の襟を正すような意味で使われていますが、僕もまず襟を正す気持ちで、寺がある意味や般若心経を学んだりしました。
衣装や風貌は監督と話しながら作っていきました。クマのような人間が現代社会に表れて右往左往する様を楽しんでいただいたり、核心を突くような言葉を掬っていただけたらと思いました。
また、台本を読んで風太郎のことはちょっと滑稽に見せたいなとも思いました。母親との物語の思いもどこかで出せればいいなと思いました。

Q 監督から役柄について何か言われたことはありましたか。

A市原隼人監督とは衣装合わせの時から意見が合っていました。僕は現場では何度も動きながら掴んでいくタイプですが、監督は信頼して任せてくださるので、本当に自由にやらせていただきました。

Q 現場の雰囲気をお聞かせください。

A市原隼人この映画は浜松で撮影をしていて、都内の撮影とはまた違ったすごく柔らかい雰囲気の現場でした。冬の撮影だったのですごく寒かったのと、あの衣装、風貌だったからか僕だとは誰にも気づかれませんでしたが、やはり町中を歩くのは恥ずかしかったです(笑)。浜松は本当にいいところだったので、浜松で撮影できて本当に良かったです。
スタッフも一致団結していて、この現場は帰る場所のようになっていました。だからといって、気が抜けたり馴れ合いになるようなこともなく、この映画の題材の力もあると思いますが、全員が向かっていけた作品でした。

Q 共演者についてのエピソードなどお聞かせください。

A市原隼人皆さん役者なので、話し合うというよりも、背中を見て学ぶと言うか、目の奥にある考えを見ながら動くことができたので、役者としての醍醐味を味わえました。芝居の外では和気藹々と話すことができました。
健司役の藤田富くんは常に役のことを考えていて、僕はそれを見ていて学ぶことが多かったし、葛藤している姿も勇ましく感じたので、心の中で「がんばれ」といつも応援していました。

Q 印象的な出来事などはありましたか。

A市原隼人シーンとしては短いですが、写経をする場面は寒い中で長時間の撮影だったので大変でした。写経は撮影前から何度もさせていただいているんです。それと冒頭の護摩の炎のシーンは本当に熱かったです。誰よりも熱いところにいて、カットがかかったのに気づかず、周りにいた本職の僧侶の方々に心配されてしまいました(笑)。それとこれもあまり本編に出てこないですが般若心経もずっと唱えていました。

Q 健司と詩織は風太郎と行動を共にするようになります。

A市原隼人風太郎はどこかで寂しさを感じているので、誰かと共にいたいという気持ちがどこかしらあるのだと思います。何かの役に立ちたいとも思っているから、話を持ちかけてきた健司の役に立ちたいという気持ちになったのだと思います。そして「人というものは面白い」と感じたからこそ、詩織のことも救おうとします。ふたりが風太郎の側にいるのは、風太郎がどちらに対しても強い気持ちを持っていたからだと思います。

Q ちなみに、市原さんの風太郎への共感度数はどのくらいでしょうか。

A市原隼人僕も風太郎ほどではありませんが面倒くさがられることが多いのでかなり高いです(笑)。風太郎のようなタイプは誤解されやすそうですが、僕も何でも伝えたいと思ってしまうので、時には言い過ぎて思いを勘違いされてしまうこともあります。風太郎とはそんな人間くさいところがだいぶ似ていると思います。

Q 本作の見どころはいかがでしょう。

A映画『喝 風太郎!!』市原隼人風太郎がいることで場はざわつきますが、誰もが思っていることを風太郎が掘り返してくれます。だから押し付けではなく、「やはりこうだった」と受け止めてもらえるような言葉が多いのだと思います。自分が信じる感情があって、それを実直に出せるのは素敵なことだと思います。何が正しい、間違っている、ということを判断することは簡単ではないです。それをここまでしっかりと言える、その裏には寂しさがあるので、そんな風太郎は僕にとっても憧れでした。風太郎の言葉はどれも印象的です。“ご縁”という言葉もそうです。自分のことは自分では分からなくて、教えてくれる人、評価してくれる人がいて分かることです。自分の周りにいる友人や家族、同僚らから自分を知ることができます。時には自分が変わらなければならないこともあると思いますし、だからいつになっても自分に問いかけることを続けていかなければならないのだと思います。本気で泣いて、本気で笑って、物事の根源を大切にするということが僕自身の生きがいですが、風太郎もまた、彼が本気で言っていることは誰かのためと言うより、自分の中での教えを発しているものです。この映画を観て、こういう考え方もあるのだと、余韻に浸っていただけたら嬉しいです。

Q この映画ならではの新しい発見はありましたか。

A市原隼人生きている中で、人を信じられなくなったり、全てを投げ出したくなる瞬間もあると思います。でも、その気持ちを持ち続けてもいいんだと、それをまっすぐに伝えてもいいんだということをこの映画から学びましたし、それが嬉しかったです。風太郎の言葉には仏教の難しい用語もありますので、何回か観ていただいて理解できることもあるかもしれませんし、そういった余韻も含めて映画ですので、楽しんでいただきたいです。

Q 市原さんご自身は風太郎に相談してみたいことはありますか。

A市原隼人僕にとって役者は仕事ですが夢でもあるんです。夢のためにはいろいろな壁があります。仕事と夢のどちらを選ぶかということは生活もありますので難しい選択です。映画はお客様に観てもらうことが役者の根源であり夢なので、演じたりそれで稼いだりではなく、観てもらうということを忘れずにいたいです。一方で映画の現場も変化していっています。僕が役者の活動を始めた20年くらい前の映画の世界はもっと人間くさかったです。時には怒号が飛び交うようなこともありながら最後にはみんなが笑い合っているような、何でも話せるからこそ、もっと心の奥で通じ合えるようなぶれない確信や人とのつながりがありました。それが段々とシステム化されて、その中で夢を持っていてもいいのだろうかと、そんな今自分が考えていることを風太郎に聞いてみたいです。

Q この映画から感じてほしいことなどお聞かせください。

A市原隼人僕が子どもの頃は、親から「天ぷらを揚げすぎたからご近所に配ってきて」と言われたり、調味料が足りないから借りに行ったりもしていましたが、そういう付き合いがだんだんと減っていく寂しさも目の当たりにしました。人と人とが助け合うことや、ご愛敬という昭和の言葉のような感覚はあってほしいなと思います。
寺は侍のいた時代よりも前からあって、侍がいなくなってもあり続けています。何かを語り継いでいく柱なのだと思います。昔は武士が死に向かっていく大義名分がありましたが、今は死も迎える時代です。そんな時代だからこそ自分は何をすべきなのか、肩書きを外した時に人間は何をするべきか。寺はそれを教えてくれるので、ずっと残っているのだろうし、迷ったり立ち止まった時も受け止めてもらえるのだろうなと。風太郎は歩く寺のようなものなので、来る者拒まず、去る人追わずに、自然とこぼれた言葉でいろんな人に気づかさせます。風太郎の滑稽さは、「近くで見ると悲劇だけど俯瞰で見ると喜劇」というチャップリンの言葉を象徴するような存在なのだと思います。

Q 市原隼人さんからOKWAVEユーザーにメッセージ!

A市原隼人この映画は国や世界を動かしているトップの人が観ても面白いと思える要素が詰まっています。それは世の中がなぜ回っているのかを突いているからです。核心を突く言葉があって原点に戻っていける名言がたくさんあります。だからといって堅苦しくなく、毛むくじゃらな男が現代社会で暴れながらちょっと違う風を吹かすエンタテインメントです。自信がなかったり将来に迷っている人にも必ずメッセージを残せる作品ですので、ぜひ劇場に足を運んでいただけたらと思います。

Q市原隼人さんからOKWAVEユーザーに質問!

市原隼人あなたの一番の居場所はどこですか。
僕は芝居をしているその空間です。人生の半分以上を捧げているので、その時が一番自分でいられます。

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■Information

『喝 風太郎!!』

映画『喝 風太郎!!』TOHOシネマズ日比谷他、公開中!

山奥の寺から長年の修業を終え、みすぼらしい袈裟に身を包み町へ降り立った僧・風太郎。大酒を食らい、大の女好き。破天荒で非常識、かつ自由勝手で横暴な風太郎に、出会う人はみな振り回されていく。
カモを見つけては、幸運のお守りを売りつけて詐欺まがいのことをしている健司は、風太郎に取り入って金儲けを企むことに。家庭でも会社でも虐げられ居場所をなくしてしまった社畜サラリーマンの末吉は、家族と上司に復讐するためにある計画を聞いてもらう。ネット依存症の自称インフルエンサーの詩織は、風太郎の周りで起こる揉め事を撮影し、再生回数を稼いで自分の存在価値を高めようと企んでいる。最初はそれぞれの事情で風太郎を利用しようとしていたが、思いのまま生きる彼といることで、心が解きほぐされていく。
そんな中、風太郎たちはホームレスのためにボランティアで炊き出しの活動を熱心にする美しく心優しい麻季と出会う。だが、麻季には裏の顔があり、とんでもない事態に巻き込まれていく。

市原隼人
藤田富 工藤綾乃
二ノ宮隆太郎 木村知貴 藤代太一 吉岡そんれい 板野友美
鶴田真由 近藤芳正 麿赤兒

監督:柴田啓佑(『あいが、そいで、こい』)
原作:本宮ひろ志「喝 風太郎!!」(集英社ヤングジャンプ コミックス GJ刊)
配給:SDP

http://katsu-movie.com/

(C)本宮ひろ志/集英社 (C)2019 浜友商事株式会社


■Profile

市原隼人

市原隼人(映画『喝 風太郎!!』)1987年2月6日生まれ、神奈川県出身。
2001年『リリイ・シュシュのすべて』で映画主演デビュー。ドラマ「ROOKIES」(08/TBS)、映画『ROOKIES-卒業-』(09)で人気を獲得する。主な映画出演作は、『偶然にも最悪な少年』(04)、『ボックス』(10)、『ホテルコパン』(16)、『無限の住人』(17)、『あいあい傘』(18)、『空母いぶき』(19)、『3人の信長』(19)、『桜咲く頃に君と』(19)など。主演ドラマ「おいしい給食」が放送中。また、近年はフォトグラファー・映像作家としても活躍中。

https://official.stardust.co.jp/hayato/
https://www.instagram.com/hayato_ichihara/?hl=ja

 

ヘアメイク:大森裕行(VANITES)
スタイリスト:小野和美(Post Foundation)