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Vol.891 映画監督 佐藤快磨(映画『歩けない僕らは』『ガンバレとかうるせぇ』について)

OKWAVE Stars Vol.891は映画『歩けない僕らは』『ガンバレとかうるせぇ』(2019年11月23日公開)佐藤快磨監督へのインタビューをお送りします。

Q 『歩けない僕らは』に携わるきっかけについてお聞かせください。

A佐藤快磨プロデューサーから回復期リハビリテーション病棟を題材にした映画を撮りませんか、というお誘いをいただきました。それまで僕自身、そういった施設がある事自体を知りませんでした。今まで、自主映画などで自分の経験や自分が共感した題材ばかりを撮ってきたので、そういった自分の外側にある知らない世界を撮ってみたいと思って、ぜひ撮らせていただきたいと応えました。

Q ではその題材からどのような準備をされましたか。

A映画『歩けない僕らは』佐藤快磨1年弱かけて、栃木県野木町にあるリハビリテーション花の舎(いえ)病院に通わせていただいて、理学療法士さんや以前通っていた患者さんからお話を聞かせていただきました。右脳と左脳で麻痺の出方が違うということや、リハビリの知識といった基礎の部分から勉強させていただきました。
病院に通わせていただく前は、突然歩けなくなってしまった人たちにはもっと悲壮感が漂っているのかと思っていました。けれども、病院の中は笑いが溢れていました。ひとりひとり、症状も違いますし、意見も違います。そのひとりひとりに向き合う理学療法士さんのコミュニケーションの取り方やその時の笑顔が印象に残りました。そういうものを1年弱かけて台本に落とし込んでいきました。

Q 新人療法士の物語として描きたかったことはいかがでしょう。

A佐藤快磨主人公を新人理学療法士の女性・遥にしたのは、主演の宇野愛海さんと最初に病院を訪ねた時に、1年目の理学療法士さんにお話を聞いたことがきっかけです。その方は、自分が満足できない形で患者さんが退院してしまったことへの悔しさから、初対面の僕らの前で号泣されて、その涙があまりにも真っ直ぐできれいだったので、この人が今後どんな理学療法士になっていくのだろう、と僕自身、見たくなるほどでした。それでその方をモデルにした主人公としました。

Q 遥役の宇野愛海さんにはどのようなことを期待しましたか。

A映画『歩けない僕らは』佐藤快磨宇野さんが参加しているワークショップを見に行った時に、宇野さんは怖がらずに思っていることをぶつけていました。繊細で豊かな芝居をしますが、その負けん気の強さのようなものが、真っ直ぐ不器用に周りの人たちと衝突しながら患者さんと向き合うという遥とつながりました。宇野さんを見たことで、遥のキャラクターはより真っ直ぐで不器用に変わっていきました。

Q 柘植役の落合モトキさんはいかがでしたか。

A佐藤快磨落合さんは『桐島、部活やめるってよ』の芝居が印象に残っていて、出演が決まって嬉しかったです。落合さんとも病院に行きましたが、僕たちが見ているところとは全然違うところを落合さんは見ていました。僕たちがロケハンをしている間に、自由にひとりで院内を歩かれていました。半身麻痺の患者さんの役なので、身体的にどんな歩み寄りができるのか僕も不安だったので、そこは落合さんに助けられました。病院で柘植と遥が最初に出会うシーンは何回かテイクを重ねていて、その時に落合さんと話し合いながら柘植のキャラクターの骨格のようなものを作り上げました。

Q 撮影の様子についてお聞かせください。

A佐藤快磨実際の病棟を使わせていただいて、理学療法士さんや患者さんがいる中で撮影しました。そういう空気が映像に映っていると感じましたし、役者の皆さんも演じやすかったと言っていました。
とはいえ、実際の病棟なので映り込みの制限はありましたので、この環境を活かせられたらという思いを持ちながらスタッフ同士で話し合ってチャレンジしました。

Q 演出についてはどのような方針でしたか。

A佐藤快磨理学療法士としての動きについては実際に働いている方に監修していただきました。宇野さんらは直前まで理学療法士さんに動きの確認をしていただいて、お芝居を重ねる段になってから僕が演出するというやり方でした。やはり理学療法士としての動きに嘘がなく自然であるということが大事だと思いました。

Q キャラクターの心情面で、監督の狙いなどはありましたか。

A佐藤快磨取材をしている時に理学療法士の方は「私たちは病気を治しているわけではありません。身体の障害を変えてあげることで、考え方も変わるので、私たちは目標に向かって諦めないことを応援することしかできないんです。歩けることが目標ではなく、歩けるようになってどう生きていくかを一緒に考えているんです」と仰っていました。その応援してあげる遥の思いと、柘植にとっては押し付けられる応援というディスコミュニケーションの中で、どうすればその時に出会った理学療法士さんと患者さんが本音で語り合えるのだろうかと考えていました。セリフが本音なのかどうかを自分も探りたかったし、そこは役者たちとも話し合いました。

Q 本作を通じての新しい発見などはありましたか。

A佐藤快磨患者さんは自分の内側から外側の理学療法士さんに伝えようとしていますし、理学療法士さんは持っている知識などで患者さんに応えます。それは、監督と役者のコミュニケーションとすごく似ているという発見がありました。動かない身体が役だとしたら、役者は内側から役を探して伝えようとするし、僕は役者を外側から見て伝えようとします。そうやってコミュニケーションを取って歩み寄ろうとすることは、理学療法士さんと患者さんのコミュニケーションがヒントにもなるなと感じました。

Q 併映される『ガンバレとかうるせぇ』は2014年発表とのことですが、いま観た時に当時の気持ちを振り返るといかがでしょうか。

A映画『ガンバレとかうるせぇ』佐藤快磨高校のサッカー部の女子マネージャーを主人公に据えてはいますが、自分がやってきてやめてしまったサッカーへの後悔を勢いで撮った作品です。映画としては何も考えずに撮っているなと今観ると思いますが(笑)、ずっとこの映画が支えだったし、いつか映画館で観てもらいたいという気持ちでいました。映画館で公開をしたいがために配信のお誘いもお断りをしてきたので、こうして上映できることは感慨深いです。

Q 当時と比べてご自身の映画作りで変わったところはありますか。

A佐藤快磨『ガンバレとかうるせぇ』は『歩けない僕らは』にも出てもらっている堀春菜さん、細川岳さんと、エース役の布袋涼太さんと先生役のミョンジュさん以外は、当時の僕のアルバイト先の友人などを誘って自分の地元の秋田に行って撮っているんです。スタッフも映画学校の同級生にノーギャラで手伝ってもらった作品なので、技術的な違いはあります。ただ、役者さんに寄り添いたいという思いは変わっていなくて、美術や照明など外側のアプローチを通じて役者さんに近づいていって、役というものに収斂していった時に、役者さんが魅力的かどうかが大事なんだと思いました。『ガンバレとかうるせぇ』を通じて、役者さんとの関係性を大事にしたいと思うきっかけになりました。

Q 『ガンバレとかうるせぇ』で思い出深いことは何でしょうか。

A佐藤快磨主演の堀春菜さんとはこの撮影の2年ほど前にワークショップで出会っていて、その時の印象が強く残っていて主演で出てもらいたいと真っ先に思いました。ですがその当時の堀さんは役者活動をほぼやめていて、SNSなどもやっていなかったんです。それが撮影のギリギリの時期になって役者活動とSNSを再開しているのを発見してすぐにオファーを出すという運命的な関わりになりました。結果的に、本作が堀さんの映像デビューと映画主演デビューになって、その後も活躍していて今回の『歩けない僕らは』に出てもらえているのは本当に嬉しいです。

Q 佐藤快磨監督からOKWAVEユーザーにメッセージ!

A佐藤快磨何が起こるか分からない人生を、一人きりで生きていくのは難しいということをこの映画を撮っていて感じました。観ている方にも、その当たり前のようなことを一緒に考えていければいいなと思います。回復期リハビリテーション病棟というところがあって、突然歩けなくなってしまった人の人生があって、そのひとりひとりと向き合うマニュアルや答えのない仕事をしている理学療法士の方々がいる、ということだけでもこの映画を観て知っていただければと思います。ぜひ劇場にお越しください。

Q佐藤快磨監督からOKWAVEユーザーに質問!

佐藤快磨もし皆さんが突然歩けなくなってしまったとしたら、隣りにいて欲しい人はどんな人ですか。

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■Information

『歩けない僕らは』

映画『歩けない僕らは』2019年11月23日(土)より新宿K’s cinemaにて公開他全国順次
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭
国内コンペティション部門 短編部門 観客賞受賞作品

宮下遥は、回復期リハビリテーション病院1年目の理学療法士。まだ慣れない仕事に戸惑いつつも、同期の幸子に、彼氏・翔の愚痴などを聞いてもらっては、共に励まし合い頑張っている。担当していたタエが退院し、新しい患者が入院してくる。仕事からの帰宅途中に脳卒中を発症し、左半身が不随になった柘植。遥は初めて入院から退院までを担当することになる。「元の人生には戻れますかね?」と聞く柘植に、何も答えられない遥。日野課長と田口リーダーの指導の元、現実と向き合う日々が始まる。

出演:宇野愛海 落合モトキ
板橋駿谷 堀春菜 細川岳 門田宗大
山中聡 佐々木すみ江

監督・脚本・編集:佐藤快磨
配給・宣伝:SPEAK OF THE DEVIL PICTURES

公式サイト:aruboku.net

©映画『歩けない僕らは』

■併映映画『ガンバレとかうるせぇ』

映画『ガンバレとかうるせぇ』PFFアワード2014 映画ファン賞受賞
PFFアワード2014 観客賞受賞
釜山国際映画祭 ニューカレンツ・コンペティション部門 正式出品作品

試合に勝っても褒められず、負けて責められることもない、そんな存在。
山王高校サッカー部の3年生マネージャー・菜津は、夏の大会に敗退したタイミングでマネージャーは引退するのが通例のなか、冬の選手権まで残ることを宣言する。しかし、顧問からも部員からも必要とされていないことに気づいてしまう。
一方、キャプテンの豪は、チームの要である健吾に夏での引退を切り出され、チームメートからの信頼の薄さも浮き彫りになっていく。
刻々と近づく最後の大会を前に、菜津と豪は選択を迫られる。

監督・脚本・編集:佐藤快磨
出演:堀 春菜、細川 岳、布袋涼太、柳沼 侃、江國亮介、山城ショウゴ、石上真紀子、ミョンジュ
配給:SPEAK OF THE DEVIL PICTURES

映画『歩けない僕らは』『ガンバレとかうるせぇ』の新宿K’s cinemaでの初日舞台挨拶・トークイベントが実施決定!

11月23日(土)10:00の回上映前、ゲスト:宇野愛海さん 落合モトキさん 細川岳さん 山中聡さん 佐藤快磨監督
11月24日(日)10:00の回上映前、ゲスト:宇野愛海さん 落合モトキさん 佐藤快磨監督 ※お客様からのQ&Aの時間あり
11月27日(水)10:00の回上映前、ゲスト:落合モトキさん 板橋駿谷さん 佐藤快磨監督 ※お客様からのQ&Aの時間あり
11月28日(木)10:00の回上映後、ゲスト:門田宗大さん 佐藤快磨監督 ※お客様からのQ&Aの時間あり
11月29日(金)10:00の回上映後、ゲスト:堀春菜さん ※お客様からのQ&Aの時間あり

一般:1,500円/大学・高校:1,300円/シニア:1,000円

※追加の登壇者・日程などは公式サイト、公式SNS、K’s cinemaの公式サイトにて随時発表します。
※登壇者は予定です。イベントは急遽変更や中止になる場合もございます。
※各回、フォトセッションの時間のみ、お客様も写真撮影が可能です。

*当劇場は予約は行なっていません。
*当劇場は84席の定員・入替・整理番号制となっております。
*当日朝、劇場が開いた時間より3F劇場窓口にて受付を開始いたします。当日は9:40よりオープン予定です。オープン時間よりはやくお越しの際は、エレベーター横の階段を上り3F扉の前で開場時間までお待ちください(※混雑の際は開場時間がはやまることもございます)。
*当劇場は消防法により、お立ち見席をご用意しておりません。満席の際にはご入場をお断りする場合がございます。あらかじめご了承下さい。
*チケットをご購入の際、クレジットカードはご利用になれません。


■Profile

佐藤快磨

映画監督 佐藤快磨(『歩けない僕らは』『ガンバレとかうるせぇ』)1989年秋田県生まれ。
2012年よりニューシネマワークショップ映画クリエイターコースを受講、『舞い散る夜』(12)、『ぶらざぁ』(13)を監督。その後ニューシネマワークショップ制作部に所属し、初の長編監督作品『ガンバレとかうるせぇ』(14)が、ぴあフィルムフェスティバル PFFアワード2014で映画ファン賞と観客賞を受賞、第19回釜山国際映画祭のコンペティション部門にノミネートされるなど、国内外の様々な映画祭で高く評価される。文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2015」にニューシネマワークショップより推薦され、アスミック・エース制作で、『壊れ始めてる、ヘイヘイヘイ』 (出演:太賀、岸井ゆきの)を監督。2018年、「東映 presents HKT48×48人の映画監督たち」の監督の一人に選ばれ監督した松岡菜摘主演の『きっとゲリラ豪雨』がゆうばり国際ファンタスティック映画祭に招待。また、バウムアンドクーヘンの役者を使った短編映画『ハッピーハッピーサタデー』が池袋シネマ・ロサにて公開された。2019年釜山国際映画祭の企画マーケットAsia Project Marketに新作の企画が選出。今後が期待されている監督である。