Vol.925 萩野谷幸三、後藤ひろひと(映画『エキストロ』について)

萩野谷幸三、後藤ひろひと(映画『エキストロ』)

OKWAVE Stars Vol.925は映画『エキストロ』(2020年3月13日公開)主演の萩野谷幸三さんと脚本・出演の後藤ひろひとさんへのインタビューをお送りします。

Q この映画の企画の経緯についてお聞かせください。

A映画『エキストロ』後藤ひろひと吉本興業が各局のディレクターに映画を撮ってもらう企画を立てて、NHKに打診をしたところ、本作の監督の村橋さんが「後藤ひろひとに脚本を書かせるなら」という条件を出してきたそうで、それがきっかけです。もうひとつ、茨城県つくばみらい市にあるワープステーション江戸というNHKエンタープライズが管理しているロケ施設の全てを使って何かやってくれないか、ということが条件でした。ワープステーション江戸は江戸時代の町並みや農村、明治時代の銀座、昭和の町並みのセットもあって、普通に全部使おうとするとタイムスリップものになってしまいます。その考えは捨てて、エキストラさんが行き来する話にすると施設を全部使えると思いました。

萩野谷幸三僕は経緯を初めて聞きました。

後藤ひろひと萩野谷さんに何も話さなかったから(笑)。

Q では、“モキュメンタリー”という手法でいくことにしたのはいかがでしょう。

A後藤ひろひと最初にワープステーション江戸を見に来た時に、「エキストラさんの事務所があります」と何の気もなくプロデューサーが紹介してくれて、そこで話を聞くととても面白かったんです。エキストラの皆さんはワープステーション江戸という言わば四次元のような未知の場所のことを知り尽くしています。それでエキストラさんを題材としたモキュメンタリーという形式でいいかと監督とプロデューサーに話して、快諾してもらえたので、二晩くらいで脚本を書きました。

Q 萩野谷さんはどの段階で主演に選ばれたのでしょう。

A萩野谷幸三僕が所属している劇団創造市場という劇団のメンバーから「年寄りの役者を探しているオーディションがある」と言われて、参加したのがきっかけです。僕は何十人目だと言われました。
オーディションを受けた時は“ネジ工場のネモト”という役柄だったんですよ。台本も一部分しか渡されていなかったので。だから後から考えると、どこからどこまでが本当の話か自分でも分かっていないんです。

後藤ひろひと僕は多分、何十人もオーディションをしているとは思わないなあ(笑)。

萩野谷幸三脚本にはそんな設定で日常生活のように普通に話すように書かれていたので、これはちゃんと調べないといけないなと思いました。同時にこれまで劇団ではナチュラリズムの演技を心がけていたので、千載一遇のチャンスだとも思いました。

後藤ひろひと映画を観てもらうと分かりますが、萩野谷さんはなかなかの演技でしたから。延々歌わされる農夫役のシーンは名演技だと思いますよ(笑)。普段はシェイクスピアとかをやっているんですよね。僕は萩野谷さんに会った時に、この人には役ではなくそのまま演じてほしいと思いました。それで役名も萩野谷幸三で、職業の歯科技工士もそのままにしたんです。

萩野谷幸三自宅で撮影していますし、畑もうちのですからね。息子役は師岡広明さんという役者さんでしたが。

Q 撮影の様子はいかがだったのでしょう。

A映画『エキストロ』後藤ひろひとNHKの大河ドラマを撮っている本物の監督やスタッフを呼んで、山本耕史くんが主演のドラマを撮影するんですね。そこには本物のエキストラさんもいます。そこに萩野谷さんが混ざって、村橋監督がメイキングのカメラのように撮っていました。僕は監督の後ろでその様子を見ていて。困ったことに大河ドラマの方の監督さんが「カット!」と言うとみんな本当にシーンを終えてしまうんです。実際には村橋監督が「カット!」と言うまで続けてほしいんですが、終わった感じになってしまってスチールカメラマンが萩野谷さんの写真を撮りにきたり、メイク直しに来てしまうんです。エキストラの方々には、本当の撮影内容を伝えず、萩野谷さんが主役ということは伏せていました。

萩野谷幸三だからどこまでが本番か分からなくなるんですよ。僕はそのドラマの撮影に一エキストラとして参加している体なので、他のエキストラの皆さんと同じ控え室に戻るんです。そうするとみんな「今回は何か違うよな」という会話をしていて(笑)。僕は失敗して落ち込んでいる芝居のまま控え室に戻ったりしていたので、境が皆さん分からなかったと思います。

後藤ひろひと他のエキストラさんに趣旨を伝えていないから、見慣れないエキストラが今日はいて、芝居でNGを出しまくっているので、嫌な空気になりかけていましたね。

萩野谷幸三すべて台本通りなんですが、罪悪感が大きかったです。

後藤ひろひと主役だけど罪悪感(笑)。萩野谷さんは耕史くんや斉藤由貴さんよりも前に名前があるのに。

萩野谷幸三僕は今でもこの映画のポスターは偽物で、本物が別にあるんだと思っています。
後藤さんが講師役で出ていただいているのが僕の所属している劇団創造市場です。今年設立50年で、とうとう日の目を見ました。初代代表のお墓参りをして報告もしてきました。

Q 山本耕史さんらの反応はいかがだったのでしょう。

A後藤ひろひと耕史くんは初めて一緒に仕事をしましたが、他は僕のウソつき仲間のような人たちです。斉藤由貴さんも言うとおりにやってくれましたし、寺脇康文さんはノリノリでした。耕史くんには早い段階から「君越しに萩野谷さんを撮るよ」と趣旨を伝えていて、楽しんで演じてくれました。

Q 本作を振り返っていかがですか。

A映画『エキストロ』後藤ひろひと萩野谷さんを騙した時もあれば、萩野谷さんで周りの人を騙した時もあり、この映画は4月1日に公開すべきでしたね(笑)。大阪でモキュメンタリーの番組をいくつもやってきたので、今こそ映画でできてよかったです。

萩野谷幸三いろんな視点がありますけれど、この映画はインテリジェンスの高い作品なんです。映画好きが深い視点で観ても面白いだろうけど、こういう形式の作品はなかなかないし、自分がうまくやらないとダメなので、決まった時は夜眠れませんでした。それで撮影2日目くらいでようやく覚悟ができたんです。

Q OKWAVEユーザーにメッセージをお願いします。

A後藤ひろひとこの作品はどこからどこまでがウソですかと聞かれますが、言ってみれば全部ウソなんです。でも、全部ウソだと言ってTVで放送しても誰かが苦情を言ってくる時代になってしまいました。以前はTVでやっていたことが本当かウソかは翌日のみんなの会話の中に答えがありました。この映画を通じてそんな文化をもう一度取り戻せたらいいなと思います。

萩野谷幸三自分はナチュラルでリアルな芝居を20歳くらいから心がけてきて、ここでそれを思う存分できましたし、いろいろな俳優さんと知り合えて、芝居を終えて後藤さんを見ると喜んでくれていたのも良かったです。撮影中は何度も監督に今ので本当に良かったのかを確認していました。自分がダメだったらこの作品は成立しないので、欲をかかずに演じました。どこまでが本当でどこまでがウソかということは、日常でも同じです。非常に癖のある作品なので、それを好きになってもらって、ぜひリピートして観てもらえたらと思います。

Q萩野谷幸三さん、後藤ひろひとさんからOKWAVEユーザーに質問!

萩野谷幸三あなたの好きなお米の種類や産地を教えてください。

後藤ひろひと皆さんは、「木曜スペシャル」などのテレビ番組で、今思い返しても怖かったなと思う番組はありますか。

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■Information

『エキストロ』

映画『エキストロ』2020年3月13日(金)より新宿・シネマカリテ他で公開

萩野谷幸三、64歳。普段は歯科技工士として黙々と働きながら男手一人で息子を育てた実直な男だが、実は息子も認める彼のひそやかな情熱がある。それは、テレビや映画にエキストラとして出演することである。ある時は、時代劇の町民に、ある時は貧しい農村民。華やかなスターたちの影で、彼らのような”エキストラ”は、ただ一瞬でも自分の姿がスクリーンに映ることだけを夢見て、演じ続ける。スターが事件を起こして、その作品がお蔵入りになったとしても・・・。そんな中、萩野谷が所属するエキストラ派遣団体にいる一人のエキストラが、刑事事件の容疑者ではないかという疑惑が上がる。そこでおとり捜査として、自らもエキストラとして様々な撮影現場に派遣された警官たちとその男の攻防が繰り広げられるのだ。映画は生物、どう転ぶかは運次第。まるで、我々の人生のように・・・。

出演:萩野谷幸三 山本耕史 斉藤由貴 寺脇康文 藤波辰爾 黒沢かずこ(森三中) 加藤諒 三秋里歩 石井竜也 荒俣宏 / 大林宣彦
監督:村橋直樹
脚本:後藤ひろひと
主題歌:トリプルファイヤー featuring 松崎しげる「天空の覇者~宇宙原始獣ガモゲドラのテーマ~」
制作:吉本興業 NHKエンタープライズ
製作・配給:吉本興業

https://extro.official-movie.com/

© 2019 吉本興業株式会社


■Profile

萩野谷幸三

萩野谷幸三、後藤ひろひと(映画『エキストロ』)1954年8月19日生まれ、茨城県出身。
歯科技工士として働く傍ら、茨城県で活動する劇団創造市場に所属。高校卒業から現在までの48年間、劇団創造市場の座員として地元に根づいた演劇活動を行っている。偶然にも今作撮影前の2018年に後藤ひろひと作「パコと魔法の絵本〜MIDSUMMER CAROL〜」を上演し、主役である大貫役を演じている。今作が映画初出演にして初主演となる。将来が楽しみな大型ルーキーとして映画業界の注目を集めている。

後藤ひろひと

1969年2月23日生まれ、山形県出身。
通称“大王”。俳優・作家・演出家。1987年遊気舎に入団。89〜96年の退団まで二代目座長を務め、劇作・演出を手掛ける。98年に「Piper」を結成。Piperでの劇作活動以外でも、パルコプロデュースやG2プロデュースなど数多くの舞台で脚本や演出を手掛ける。2001年より自身が主宰する「王立劇場」を旗揚げ。カラフルでハートウォームなコメディは多くのファンの支持を得ている。08年公開の『パコと魔法の絵本』(脚本・監督:中島哲也、主演:役所広司)の原作者としても注目を集める。脚本を担当した19年公開の映画『Diner ダイナー』(監督:蜷川実花、主演:藤原竜也)が大ヒットを記録した。